ちちぶオペラに欠かせないエレクトーン 2019年ちちぶオペラ公演 F.レハール作曲 喜歌劇『メリー・ウィドウ』

2016年に「秩父祭の屋台行事と神楽」としてユネスコ無形文化遺産にも登録された“秩父夜祭”。秩父市民はこの壮大な祭りを中心に1年を過ごしていると言っても過言ではなく、祭りにかける情熱は半端ではない。そんな気質を持った人々が一丸となってオペラ公演に臨むのだから、盛り上がらないはずがない。

2011年に始まり今年上演したレハール作曲『メリー・ウィドウ』で9回目を迎えた“ちちぶオペラ”は、とうとう来年は第10回記念を迎え、プッチーニ作曲『トゥーランドット』の上演を予定している。立ち上げ当初こそ西洋の作品にとまどいも見られたが、その後のイベント適応力にはいつも驚かされている。人口7万人ほどの決して大きいとは言えない町でオペラを上演するのは、予算面などいろいろと厳しいものがある。そこは持ち前の“のり”と工夫で乗り越えてきた。

我々のオペラ制作で工夫を凝らしている代表的なものがオーケストラ編成だ。通常50名以上必要とするオケだが、その大半をエレクトーンに担ってもらうことにより予算も大幅に削減できる。ただ、それだけの理由でエレクトーンを使っているわけではない。エレクトーンはまだまだ進化の途中であると思うが、以前の音色に比べたら雲泥の差だ。オペラのみならず音楽を演奏するときは、なるべく作曲家が意図したサウンドに近づけるよう努力するが、今のエレクトーンであれば、作曲当時に電子楽器がなかった時代の作品にも全く違和感なく挑戦できる。

現在ちちぶオペラでは、作品により多少変えてはいるが、よりサウンドに幅を持たせるため、エレクトーン2台を中心に、弦楽器、管楽器、打楽器、電子楽器をそれぞれ数名加え、15名ほどの編成で演奏している。事前にエレクトーン奏者と念入りに音作りの打ち合わせをして、さらに音響との試行錯誤に時間をかけ仕上げていく。この作業がオペラ作りに幸せを感じる一つであることは間違いない。これからも可能な限りエレクトーンとともにオペラを作っていきたいと思う。

著・ちちぶオペラ公演監督/細岡雅哉

エレクトーン演奏/山木亜美、柿﨑俊也

2019年8月18日 秩父宮記念市民会館大ホール「フォレスタ」