ブラボーの代わりに、カーテンコールに惜しみない拍手を! オペレッタ『こうもり』 オペラ『カルメン』

当財団は全国へのオペラ普及に務め、特に青少年にオペラ鑑賞と参加の機会を積極的に提供してきた30年でした。エレクトーンとの出会いは1997年。財団の理事をお務めいただいていた故畑中良輔先生(初代新国立劇場芸術総監督)曰く「これからの時代、オーケストラでなければと言っていてはオペラは広められません。エレクトーンは良いですよ」というひと言から始まり、以来これまでに約1400ステージ(内エレクトーン公演約300ステージ)のオペラ上演の機会をいただき、全国各地でオペラの裾野を広めてまいりましたが、このような時勢になるとは思いもよりませんでした。

8月。緊急事態宣言下、エレクトーンによるオペレッタ『こうもり』を上演。心が休まらない緊張した日々がつづく中、客席数を半分以下に抑え、それでも舞台を心待ちにしている皆様に会場まで足を運んでいただけたことは、多くの演奏の機会を失っていた我々にとって大きな喜びでした。

10月。ようやく緊急事態宣言が明け、とある中学校の体育館にてエレクトーンによる文化庁主催オペラ『カルメン』を上演。学校長が、実は前任校にて我々のカルメンに出会い、その後機会が訪れる今回までずっと我々を追い求めてくださっていたとワークショップ時にお話しいただき、この素敵なご縁に感動で胸が震える思いでした。先生の長きにわたる熱い想いによって、今回の上演に繋げていただけたご縁に感謝しています。

かけがえのないすべての出会いこそ、私たちの一番の心の財産です。マイクを使わないエネルギーあふれる人の声の共演、光や輝きを放つエレクトーンの多彩な音色が、人々の渇いた心に潤いをもたらす、それこそが明日の活力となるでしょう。ブラボーすら聞こえない中でも、カーテンコールの力強く惜しみない拍手は、まさに人々の心のエールの交換。深く深く心に沁みてきます。

著・一般財団法人オペラアーツ振興財団 理事長/山田大輔

エレクトーン演奏/西岡奈津子、小倉里恵

2021年8月28日 東大和ハミングホール/10月さいたま市内中学校訪問