一途な愛の行方は…… 第8回雅叙園オペラ プッチーニ《蝶々夫人》ハイライト

前日の雨がすっかり上がり、清々しい秋晴れとなった10月吉日、ホテル雅叙園東京チャペルにて、第8回目となる雅叙園オペラ プッチーニ『蝶々夫人』を上演しました。昨年は延期となり、2年ぶりの開催となったことから、お客様は少し高揚気味に心弾ませ、この日をお待ちくださいました。主なシーンをすべて盛り込み字幕付きでお届けするこのハイライトは、初めてのお客さまにも、毎年楽しみにされているファンの皆さまにも大好評です。

一度も日本を訪れることなく書き上げたプッチーニの、日本への強い憧れの気持ちが、どこか懐かしい旋律となって随所に現れるこのオペラは、長崎を舞台にしていることもあり、日本人にとっては、やはり特別な作品といえるでしょう。

蝶々夫人にソプラノ嘉目真木子、ピンカートンにテノール金山京介、シャープレス領事にバリトン押川浩士、スズキにメゾソプラノの遠藤千寿子という豪華キャストのすばらしいパフォーマンスに、私が絶対的信頼を寄せる清水のりこの、繊細で重厚、ドラマティックなエレクトーン演奏が一層臨場感を高め、豊かな演奏力が見事にシーンを際立たせました。

語りの女優音無美紀子は、時を超えて心情を綴り、感性豊かなナレーションがオペラの進行と一体となり、感動の涙を誘いました。

場面により絶妙に変化する照明の美しい、天井の高いチャペルに、蝶々さんのピンカートンへの愛に満ちた一途な思いが広がり、切なく観客の心を捉え離しませんでした。

ある晴れた日に、水平線の遠くに一筋の煙がたち、そして、そのあとに船が現れる……、とピンカートンを待ち焦がれる蝶々さんに悲しい結末が待っていました。

このハイライトシリーズの初回から構成・台本を一手に引き受け、自らバリトンとして歌唱しつつ、毎回すばらしい仕上がりに導いてくれる押川浩士の情熱とセンスが光ります。

最後は、深く心に響く迫力の演奏が最高潮に達し、嘉目真木子渾身のラストシーンとともに幕を下ろしました。 鳴り止まぬ拍手がいつまでもチャペルに響き渡りました。

著・オーケストラプレゼンター 音楽イベントプロデューサー/栗原知里

エレクトーン演奏/清水のりこ

2021年10月14日 ホテル雅叙園東京 チャペル