ファン待望の「銀座オペラ」が復活公演 銀座オペラ2021 トゥーランドット

銀座で手軽に本格的なオペラを観劇できる「銀座オペラ」シリーズが2021年11月、『トゥーランドット』で待望の復活を果たしました。2012年の『トスカ』を皮切りに、『カルメン』『イル・トロヴァトーレ』『椿姫』『蝶々夫人』と、数々の名作を披露してきた「銀座オペラ」。会場は銀座通り沿いのヤマハホール。名シーンを厳選したハイライト公演なので、19時開演で21時には終演という手軽さ。観劇後は感想を語りに出歩くにもよい場所と時間ということで多くのファンに支持されていました。

国内外で活躍するオペラ歌手に、清水のりこのエレクトーンが掛け合わされると、333席のホールはたった5人で演奏されているとは思えない贅沢な空間と時間に支配されます。そんな「銀座オペラ」シリーズのオペラは、2015年の『蝶々夫人』を最後にお休みしていましたが、2021年11月、“アドリブ"の主催公演として復活しました。公演の案内を始めるとすぐに「待っていました」というお声を多くいただき、また結果的には多くの、そして幅広いお客さまにご来場いただき、シリーズの人気と需要を再認識しました。

また、このコロナ禍という状況においても座組のすばらしさが発揮されました。通常のオペラ公演では数十人のオーケストラ、数十人の合唱団など、数多くの出演者が必要ですが、今回の公演では、歌手4名、エレクトーン1名、ナビゲーター1名の合計6名という最少人数で、『トゥーランドット』の世界を表現できました。

そこで鍵になるのがひとりオーケストラこと清水のりこです。たった一人で音空間を作り上げ、演奏は彼女オリジナル、唯一無二で、そこには彼女の過去の音楽経験、そこで積み上げられた演奏法、さらには今回の公演のための研究や専門家による指導に加え、想像を絶する音作りの時間、そして何より魂が込められています。その特別な音空間の中で役を演じたのは、これまで何度も同役を演じてきた小川里美、藤田卓也、ジョンハオに、今回ロールデビューの全詠玉を加えた4名の歌手。指揮者不在でも音楽を構築できるのは、この歌手たちの経験と能力、稽古とチームワークの賜物です。

稽古を牽引したのは気鋭の演出家、太田麻衣子。長くオペラの世界で活躍してきた彼女の、繊細かつ大胆な解釈の演出で舞台を彩りました。さらに、シンプルな舞台・ホールの広い壁面を活用した荒井雄貴によるプロジェクションマッピングがより深く『トゥーランドット』の世界へと没入させました。また注目の俳優キンタカオもオペラ初出演で客席を沸かせました。

銀座ヤマハホールにエレクトーン+歌手+プロジェクションマッピングという組み合わせは贅沢・優雅かつエキサイティングで、オペラのハイライト公演は数あれど、その最高峰といっても過言ではないでしょう。この座組は今後のオペラ公演における、小さな劇場での大きな可能性に満ちていると思います。

著・アドリブ公演責任者/森 勇

エレクトーン演奏/清水のりこ

2021年11月8日 銀座ヤマハホール