舞台空間にあふれる宝箱のような印象の舞台作りに貢献 第1回テアトロ フェリーチェ公演 Don Carlo

3月24日にパルテノン多摩小ホールに於いて、運営している声楽教室の開設20周年の記念イベントとしてヴェルディのオペラ『ドン・カルロ』(イタリア語5幕版)を、門下生を中心とした合唱団とソリストで上演しました。

一般的にこのような大作を上演するには大掛かりで豪華絢爛な舞台美術、大人数の合唱団、大編成のオーケストラが必要になり、それなりの潤沢な予算が不可欠ですが、今回の公演では予算や合唱団の人数に限りがあるため、多くの制約が存在します。この条件下でいかにしてこの『ドン・カルロ』というオペラの世界観、魅力を聴衆に感じてもらうか、ない知恵を絞りに絞り、“舞台セットの少ない大ホールで閑散とした印象にするのではなく、小ホールの舞台空間一杯にあふれんばかりの人と熱気が詰まった宝箱のような印象の舞台”をコンセプトに準備を進めることにしました。

通常、小規模のオペラ公演においてはオーケストラ、舞台セット、本格的な合唱団の衣装は削られることが多いのですが、今回の公演ではソリストだけでなく、合唱団全員分の衣装を『ドン・カルロ』専用に製作された物で統一し、舞台一杯に広がる煌びやかな統一感のある世界を実現することができました。そして音楽面でオーケストラの代役を担い、『ドン・カルロ』の世界観の実現に大きな成果を添えたのが、山木亜美さんと柿﨑俊也さんによるエレクトーン2台で奏でられるオーケストラサウンドの伴奏でした。ヴェルディの管弦楽の重厚さと迫力をここまで表現できるとは正直予想していなかっただけに、初めての合わせでは感動で身が震え、公演の成功を確信しました。

本番終演後、お客様からは「演奏も舞台美術もすべてが予想以上にすばらしかった。エレクトーンだけでここまでの臨場感を表現できることにとても感動した」という声が大変多く寄せられ、ピアノ伴奏では不可能だった表現の幅を何倍にも広げてくれるエレクトーン伴奏が今後、中小のオペラ団体にとってスタンダードなものになっていくことを強く期待しています。

著・宗像声楽教室代表/宗像成弥

エレクトーン演奏/山木亜美、柿﨑俊也

2024年3月24日 パルテノン多摩 小ホール