マダム・バタフライ&レディ・マクベス LETTERA~届けられた手紙~

文科省が推進する「本物の舞台芸術体験事業」の一つに「学校訪問オペラコンサート」がある。藤原歌劇団のメンバーにエレクトーン伴奏が付いて年に数回、全国を回っている。主に小学校・中学校を対象とし演目は『カルメン』。オペラ普及の一環である。すでに10年近くこの公演が続けられているが、ミカエラ役の家田紀子(ソプラノ)とカルメン役の森山京子(メゾソプラノ)によるコンサートが長年のコンビ・伊藤佳苗と塚瀬万起子(EL)、そして、イタリア語朗読に福田恵次を迎えて開かれた。

タイトルは『LETTERA~届けられた手紙』。二人の意図はオペラの中の「手紙」を採りあげようというものだ。また、LETTERAには「文字」の意もある。第一部では「歌詞」にこだわった選曲がなされた。「サティ曲/エンパイア劇場の歌姫」に始まり、三文オペラから「バルバラソング」、「フォーレ曲/月のあかり」など8曲が個性豊かに歌われ、また、日頃あまり耳にすることのない歌曲がスペイン語で歌われるなど貴重な演目を楽しむことができた。全曲に作詩者の名前もあり、訳詞もある。歌曲は作曲者だけが主人公ではないことに改めて気づかされた。

さらによく見ると、訳詞の下に「音色名」が記されている。〈ギター・ストリングス・木管・ハープ〉……といったように。歌と共に楽器の音色もお楽しみください、とのこと。エレクトーン50周年記念で、気を遣っていただいたのだろうか……。

メインの第二部はまず森山による『マクベス』より。スクリーンには「マクベスよりの手紙」が候文(日本語)で映し出され、福田がイタリア語で物語を進行する。緊張感あふれるレディ・マクベスであった。続いて家田による『蝶々夫人』。「おまえを抱いて母さんが」、「ある晴れた日に」等、切ない女心が歌われる。

女声二人に男声の朗読という演出。練りに練られたプログラム……。家田、森山のこうしたリサイタル形式のコンサートをもっと聴きたいものである。

(上から)写真1: 朗読の福田恵次|写真2:第1部の森山京子、エレクトーン演奏/伊藤佳苗、塚瀬万起子|写真4:第2部の家田紀子

2009年7月5日 エレクトーンシティ渋谷