心揺さぶる真のロマン派の音楽 R.シュトラウスの世界

日本では、シュトラウスというと、例のワルツ王ヨハン・シュトラウスを思い浮かべてしまいますが、たくさんのオーケストラ曲、10を超えるオペラ、そして200を優に超える歌曲等々、19世紀後半から、20世紀前半に活躍した偉大な作曲家にして、指揮者としても大きな功績を残した、このリヒャルト・シュトラウスのほうが、音楽史的には、はるかに大きな存在なのです。

そのR.シュトラウスの歌曲に光を当てた「特集コンサート」を、10月22日にエレクトーンシティで行いました。特に選ばれた8人の声楽家たちによって演奏された歌曲の数々は、エレクトーンならではの効果を生み出し、まさに雄大にして「真のロマン」とも言える、幻想の世界をかもし出していました。

R.シュトラウスは、オーケストラ指揮者として、オーケストラを自在に使うことのできる立場にいたので、その作品のほとんどはオーケストラトーンで書かれています。そのため、ピアノ1台では到底表現できない音楽なのですが、オーケストラを自由に使うことは日本の現状で不可能に近く、めったに聴くことのできない歌の世界である、とも言えるでしょう。

特筆すべきは、伊東剛氏が歌った“バスとピアノのための歌曲”と書かれた「来るべき老いについて」で、正確な記録こそないものの、恐らく本邦初演であると推測されます。シュトラウスの最晩年に書かれたこの歌曲を、伊東氏は氏のこれまでの豊富な音楽経験の裏づけの基に、見事にシュトラウスの世界を歌い上げ、聴くものに大きな感動を与えてくれました。

また、出演者全員がその持てる力を遺憾なく発揮し、少々長いコンサートであったにもかかわらず、聴衆を飽きさせることなく、幻想の世界を堪能させてくれました。エレクトーンの特徴を充分に活かした企画であったと言えるでしょう。出演は、伊藤友里枝、内海響子、大石悦代、金岡淳子、金盛佑香、久利生悦子、三上佳子。エレクトーンは赤塚博美、ピアノ中島彩。司会進行役は私、川村が務めました。

東京シティオペラ協会理事長/川村敬一

(上から)写真2:エレクトーン演奏/赤塚博美

2011年10月22日 エレクトーンシティ渋谷