涙する観客の姿も… 日本の歌~春の夜に~

都会の雑踏を抜けて細い坂道を上がると、ひっそり佇んでいる上品な建物。代々木上原にあるMUSICASA(ムジカーザ)。演奏者と観客の位置が近いサロンのようなこのホールで、「日本の歌~春の夜に~」が開催されました。このコンサートは、以前行った「0歳から来れるコンサートシリーズvol.1」で「同じメンバーで大人向けのコンサートが観たい」というアンケートの感想から企画されたもので、今回は「日本語の響き」をテーマにしました。

第1部は、備後千春の歌と岩崎孝昭のエレクトーン演奏で、「早春賦」「さくらさくら」など誰もが耳にしたことがある曲から始まり、絵画的なサウンドが会場を包み込みました。歌詞に寄り添ったアレンジは1コーラスごとに違うものになっていて、岩崎のオーケストレーションも繰り返しではない異なる世界を描いており、「夕焼け小焼け」や「故郷」が流れ出すと、涙する観客の姿も…。

ゲストの貴音康寿、貴音康花乃、そして貴音康春(備後千春)による長唄「越後獅子」(抜粋)では日本の伝統芸能に触れることができ、同じくゲストの二胡奏者、里地帰による二胡コーナーでは、二胡の楽器説明に耳を傾け、曲調の全く違う2曲の演奏に二胡という楽器を満喫することができました。

島崎藤村作詞の「椰子の実」の後には、ご来場くださっていた島崎藤村のお孫さんを紹介させていただき、岩崎のエレクトーンソロでは初披露の楽曲もあり、温かい雰囲気で時間は過ぎ、「この道」「浜辺の歌」では備後が歌う日本語の美しい響きを会場一体となって感じることができたコンサートになりました。終演後はエレクトーンをのぞき込む方が大勢いらっしゃり、岩崎のエレクトーン演奏も大好評で次回を望む声が数多く聞かれました。

そして、最初から最後まで中央奥にそっと置かれていた扇子が、「和」の心を表しているような…素敵な空間でした。

企画/水谷弥生

エレクトーン演奏/岩崎孝昭

2012年4月18日 MUSICASA