フランス歌曲の雅なる世界を描き出す 東京・春・音楽祭 –東京のオペラの森2017– 「シャセリオー展」記念コンサートvol.2 駒井ゆり子(ソプラノ)&富岡明子(メゾ・ソプラノ)

3月28日、上野の国立西洋美術館で「シャセリオー展」記念コンサートが行われました。

私はフランス音楽を専門としているので、画家シャセリオーと親交の深かった詩人による歌曲や、彼の特徴であるエキゾティシズム、またオリエンタリズムに関連した歌曲を選びました。世界的にみて、フランス歌曲を専門に活動している声楽家は少なく、当然愛好家もまた多くないように感じます。その理由の大部分は、フランス詩の響きそのものが余りにも音楽的であること、そのため音楽がかなり難解になっている点だと推察されます。ピアノパートでは、情景(と言っても、印象派の絵画で言う光の加減のような微細な表現)や、またごく僅かな心の動きなどが表現されます。歌の旋律線はもはや失われ、フランス語の音楽性を損なうことなく語られます。一度聴いて耳に残る旋律というのはないかもしれません。でもそこに素晴らしい世界が広がっていることは確かなのです。

今回、エレクトーンは赤塚博美さんが演奏してくださいました。私はピアノ譜をお渡しするしかありませんでしたが、彼女はそこに、言葉では表し難いフランス歌曲の雅なる世界をエレクトーンによって見事に描き出してくださったのです!

私は初合わせの時から大変驚き、感激し、赤塚さんを質問責めにしてしまいました。何故なら、赤塚さんが作り上げてくださったそのオーケストレーション、そして散りばめられた効果的な電子音が、本当にそれぞれの歌曲のイメージとぴったり合致していたから。彼女は詩と音楽に描き出されているイメージを一つ一つ拾い上げ、音を創造してくださったとのこと。

この経験は、私に大きな希望をもたらしました。理解し難いフランス歌曲に、親しみと明解さを感じて頂き、より多くの方に聴いて頂ける、新しい一つの方法ではないかと想像します。素晴らしい演奏者と楽器の進歩は、無限の可能性を秘めているのだと痛烈に感じたコンサートとなりました。

ソプラノ歌手/駒井ゆり子

エレクトーン演奏/赤塚博美(©Spring Festival in Tokyo / Koji Iida)

2017年3月28日 国立西洋美術館