由緒あるホテルで歌う無形文化財のような「昭和歌謡」歌謡サロン 二代目松原操 第5回「懐かしき昭和を歌う」

大理石の大階段、彫刻を施した重厚なロビーの柱、螺鈿を埋め込んだホールの壁面、そして天井は漆喰彫刻の最高傑作といわれている。明治6年創業"ヨコハマのシンボル"と謳われたグランドホテルは関東大震災により瓦礫の山と化したが、横浜市をはじめ政財界を上げてホテル再建が検討され、昭和2年に関東大震災からの復興のシンボルとして「ホテルニューグランド」が生まれた。その象徴としてホールの舞台上には"不死鳥・フェニックス"の装飾が施されている。

この由緒ある築90年のホテルのホール(横浜市歴史的建造物指定)で、これまた無形文化財のような「昭和歌謡」を歌う。なかなか体験できないことだ。

「歌は世につれ、世は歌につれ」昭和歌謡は永き昭和の歴史を吸い込んでいる。建物もまたしかり。歌っているとホールも古き良き歌に呼応してくれているような感覚を覚える。一昨年ホールは大修復されたが、やはり建物も歌も手をかけ愛情をかけ、そして新しい息吹を注ぎ込まないと朽ち果ててしまう。

毎回、古い昭和歌謡を見事にリニューアルしてくれるのは長谷川幹人氏。もう15年近くお付き合いいただいている。彼はどんなときも誠実な性格そのままに歌を支え、引き立ててくれる。全幅の信頼を寄せているが、彼の卓越した技術を持ってしても、今のエレクトーンの性能がなければお客様の満足は得られないだろう。この50年余、めざましい進化を遂げたエレクトーンに感謝!

最近「喉を鍛えて誤嚥性肺炎を防ぐ」などさかんに歌が健康に良いとマスコミで取り上げられている。公演の後半ではいつもお客様にお歌いいただくが、ひととき青春時代にタイムスリップされたお客様が幸せそうにお帰りになる姿を拝見するにつけ、健康面だけでなく精神的な効能をも痛感する。

常に「驚き」と「ときめき」を感じていただき、身体と心が満たされるような楽しい公演を目指して、これからも精進を重ねてまいりたいと思っている。

著・二代目松原操  霧島昇・松原操(ミス・コロムビア)三女

エレクトーン演奏/長谷川幹人

トランペット/岩尾浩史

2018年11月20日 横浜・ホテルニューグランド