カンボジア人若手演奏家の発掘育成プロジェクトに参加 日本カンボジア音楽交流コンサートシリーズ(全9公演)

カンボジアの首都プノンペンで日本カンボジア文化振興会(JCPAA)主催による『Opera & Music Concert with Satomi Ogawa & Noriko Shimizu』が開催されました。

JCPAAは、国際親善ならびに文化・音楽交流事業を通じてその振興に努め、平和で安定した社会づくりに寄与することを目指して2012年から有志で活動を始め、今年4月にNPOとして正式に登記申請した非営利団体です。

JCPAAの活動は多岐にわたりますが、現在、特に力を入れているのがカンボジア人若手演奏家の発掘育成プロジェクトCatch A Cambodian Starです。1970年代の内戦の影響から、あらゆる分野で専門家が不足してきたこの国は、音楽、とりわけクラシック音楽を専門としようとする若者の希望となるべき「スター」もまだまだ不足しています。そこで公募オーディションでカンボジア人若手演奏家を発掘し、演奏の機会を提供したり、国際コンクールへの参加を経済的・技術的に支援するなど、演奏家の卵を世界水準へ導くことを狙いとしています。第3回目となる今回はバイオリン専攻の学生サオム・ピスットさんが選出されました。

良い演奏家を育成するには良い舞台経験が必要不可欠。プロの演奏家と共演する機会を設定するためソプラノ歌手小川里美さん、エレクトーン奏者清水のりこさんにご協力いただき冒頭に述べたコンサートが実現しました。もともと、アンコールワットに代表される荘厳で雄大な文化を持つカンボジア。国民は歌が大好きで、テレビにカラオケ専用チャンネルがあるほどです。そこで、カンボジアのみなさんに受け入れやすい「声」による演奏と、クラシック向けのコンサートホールやオーケストラが存在しない現状もあり、機動力が高く、1台でオーケストラに匹敵する迫力の演奏を実現できるエレクトーンは最適の楽器と考えました。

お二人が滞在したわずか7日間に、在カンボジア日本大使館、王立芸術大学などプノンペン各所で9公演し、普段オペラ歌手など見たことも聴いたともない人々が、小川里美さんが歌い始めると吸い込まれるように夢中で聴いていました。清水のりこさんの「I do! I do!」が始まると、子どもが保護者の手を引いてステージまで近づく様子も。エレクトーンソロでは、神がかったオーラが会場を包み込み、多くの人が涙していました。

さて、果たしてこのプロの熱量にくじけずついていけるだろうかと、筆者がこっそり心配していた支援対象者サオム・ピスットさんも、1週間に及ぶコンサートシリーズでめきめきと上達し、最終日に小川さん・清水さんと一緒に舞台に立つ姿は、自信と喜びに満ちて、生き生きとしていました。

今後、サオム・ピスットさんは大阪国際音楽コンクールに挑戦後、11月1日~3日にはエレクトーンオペラ『蝶々夫人』で再びお二人と共演する予定です。こちらはカンボジア初のクメール語の解説付きオペラダイジェスト公演です。みなさんどうぞ彼を、そして私たちの活動を応援してください。お問い合わせはinfo@jcpaa.comまでお願いいたします。

著・日本カンボジア文化振興会 理事長/池田尚子

プノンペンのイオンホールで、オペラ歌手小川里美、エレクトーン演奏は清水のりこ。

在カンボジア日本大使館大使公邸で。バイオリンのサオム・ピスットさんも加え3人で演奏。

カンボジア王立芸術大学にて。ミニコンサート、ワークショップの後に教員、学生さんと。

エレクトーン演奏家/清水のりこ

2019年6月12日~19日 カンボジア・プノンペン、在カンボジア日本大使館、王立芸術大学ほか