プッチーニの生涯を歌う16曲のアリア 1×1=∞ 神田 将・平野雅世 〜プッチーニ、愛に生きるヒロインの肖像〜

エレクトーンとの一対一のアンサンブルから生まれる無限の可能性をテーマに、毎年秋に開催している豊洲シビックセンターの1×1=∞シリーズ。第3回目は主に関西で活躍するソプラノ歌手・平野雅世さんを迎えました。

声楽とエレクトーンの組み合わせは、エレクトーンシティによる長年のバックアップが功を奏し、今では珍しいものではなくなりましたので、何か意欲的な挑戦を盛り込もうと計画。プッチーニの全12作品を網羅して、ひとりで16曲のアリアを歌うという内容を提案したところ、平野さんは一瞬躊躇したものの、快諾してくれました。

ステージはあえてさっぱりとシンプルに。一脚の椅子を巧みに使い、作品個々の世界観を創り出しながら、役になりきって熱唱する姿は、聴き応えのみならず見応えもじゅうぶん。それでいてきちんとエレクトーンの音楽に呼応しながら歌ってくれるので、真っ向からのアンサンブルという主テーマを不足なく表現できました。クライマックスばかりが続く長丁場でしたが、エネルギーのコントロールも見事なもので、消耗を感じさせることなく終曲まで進み、エレクトーン独奏の予定だったアンコール「誰も寝てはならぬ」まで飛び入りで歌うというサービス精神に心底感服。客席もおおいに盛り上がりました。

私の役割はエレクトーン演奏と曲目解説。弾いて話しての繰り返しで、気を引き締め直す間がありませんが、話しているうちに作品の中に自然と入り込めるのが利点です。また、演奏順をオペラの完成順にしたことで、プッチーニの生涯を辿る大河ドラマのようなサブストーリーが生まれ、鑑賞と文化講座を一度に満喫した気分と大好評でした。

今年は気鋭の尺八奏者・辻本好美さんを迎え、11月5日に開催します。

著・エレクトーン奏者/神田 将

エレクトーン演奏/神田 将

2021年11月20日 豊洲シビックセンターホール