時を超えて出会った二人の音楽 COMPACT JAZZ meets CLASSIC SATI & 神⽥ 将

神田将さんとの出会いは、高校生活の1年目。神田さんの奏でるピアノの音に引き寄せられてたどり着いた音楽室でした。その後はそれぞれの道へ進み、いつしか疎遠に。一方、社会に出たころ、まだ駆け出しのSATIさんと出会い、ライブに呼んでもらうなどの交流が始まったものの、こちらもいつしか関係が途絶えていました。

時は流れ、別の友人から誘われたのが神田さんのコンサート。そこは音楽室とは比べものにならないほど大きく立派なホールでしたが、エレクトーンから流れる音楽は本質的に高校時代と変わりなく、まるで会場が一人ひとりにとっての音楽室のよう。そんな想像に浸っていると、この音の優しさや愛の気配はどこかで感じたことがあると気付きました。それはSATIさんの歌声でした。

神田さんの演奏を聴くまでは、エレクトーンはシンセサイザーやPCと違いはないと思っていましたが、指先や身体全体を繊細に、または大胆に使い切った演奏を目の当たりにし、瞬時にイメージが変わりました。

エレクトーンは感情に敏感で、直感的な音の表現ができる楽器。私の本業であるデザインに例えるなら、デジタル描画ソフトで何度も修正しながら描く線と、一筆書きで描かれる線とは全く違うのですが、エレクトーンはまさに一筆書きだと言えます。

この音楽体験に触発され、神田さんとSATIさんに互いの音楽に触れる機会を設けたところ、二人の目に見えない重力の引き寄せ合いが始まり、必然のようにライブ開催が決定。当日は、音楽への探究心を持った観客が集いました。

慣れ親しんだリビングルームのくつろぎと、見知らぬ別世界の新鮮さが同居する空間で、ことばと声に命を吹き込んで歌うSATIさんと、シンプルにして無限の広がりを奏でる神田さん。そこには、時を超えて出会った音楽の、ありのままの姿がありました。このライブの観客は、私と同じように、音楽の本質のようなものを感じ取ったのではないでしょうか。

著・プロダクトデザイナー兼プランナー/安西洋介

エレクトーン演奏/神田 将

2023年12月16日 東中野ALT_SPEAKER