マーチングとは - その教育的意義

What'sマーチング?マーチングってなに?

マーチングとは行進をすることです。マーチング・バンドとは、吹奏楽活動のひとつの演奏形態として、演奏をしながら、その演奏曲の曲想に合った動きを加えたもので、音楽と動きの調和がとれていることが望まれます。

先進国アメリカ

アメリカのバンド(吹奏楽)活動の中で、特に重要視されているのは、なんといってもバンド指導者です。指導力、指導方法、そして指導者が持つ人間性等、あらゆる面で優れた専門家の人達が、それぞれのバンドで活躍しています。
演奏技術面を教え高めることは言うまでもなく、それ以外に、楽器を通じて自分で自分を鍛え、自己を知り、音を知ることもまた、バンド活動の大切な要素として、指導の対象となっています。音を通して、音を大事にし、愛することを教え、合奏を通じて、協調性と集団の大切さと喜びを教えます。音楽を通じて豊かな情操を高め、演奏を通じては、音楽を人に伝える喜びを教えるのです。そして、バンドの活動を社会に幅広く求め、多くのことを経験させて、その中で吹奏楽の楽しさを教えるとともに、豊かな人間形成の一環としてのバンド活動を推進しているのです。
こうした中でマーチングは、バンド活動の重要な一部分として定着してきました。その背景には、なんといっても、フットボールのハーフタイム・ショーがあり、指導者にも恵まれていたことがあげられるでしょう。

我が国における理想と現実

我が国では、どうでしょう・・・。いまだに、残念なことにマーチングはバンド活動に負担になると感じているバンドが、多いように思われます。
なぜでしょう、その障害となっている問題はいろいろあると思いますが、それ以前に次の努力が必要でしょう。

マーチング活動普及のための課題

縦へのつながり(系統だった指導)

バンド活動は、小学校を含め、中学校、高校、そして大学、一般と、それぞれの年代に応じた指導のもとに行われ、その指導方法も系統だった一貫するものでなければなりません。しかし、現在の活動状況を考えてみると、理想とはほど遠い現状であり、そうした縦へのつながりのある系統的指導を、各層の多くの指導者が集まり考えてみなくてはならないしそれなくしては、指導者の毎日の努力も大きく実ることは望めません。

横へのつながり(社会生活の中へ)

バンド活動をなお一層、地域社会の中で活かせないものでしょうか。そうした努力を積み重ねることによって、バンド活動をより多くの人々に知ってもらい、地域社会の理解を得て、その中で幅広い活動にしてゆく努力が、我が国ではまだまだ必要です。

教育的意義から見たマーチング

マーチングは、単にパレードをしたり、ドリル・フォーメーションを展開したりすることに尽きるものではありません。そうした華やかな形に現れる要素ばかりではなく、その表面的なものの裏にある、大事な要素を見落とす事は出来ません。 マーチングでは、一つの規律のもとに、自分に与えられたことを確実に果たさなければなりません。誰一人としてギブ・アップ(ごまかし)が出来ず、一つの集団としての決まりを守る中で、責任感が養われ、そして、大切なのは結果として形に現れたものではなくそこに至る練習の過程、指導の方法なのです。その過程方法の中に生きた指導がなければ、マーチングはけっして長続きはしないでしょう。
指導者がしっかりとしたマーチングに対する考えを持たない限り、マーチングは、ただ表面の派手さだけを売り物にする、中身のない観客側だけの一方的な専有物となってしまい、それでは、メンバーがマーチングの楽しさを知る機会もなく、教育的意義は薄いものとなってしまいます。ましてスクール・バンドの多い現在の我が国では、パレードやドリル・フォーメーションの構成などをバンドのメンバー任せでやらせていたり、当面する行事予定を消化するために間に合わせで作成してすましている様なバンドがもしあったなら、教育的効果の上がるはずが無く、バンドの指導者としては考えなければいけない一番大きな問題でしょう。
もちろん、マーチングは、何が何でもバンド活動に組み入れなければいけないというものではありません。吹奏楽の持つ幅広いバンド活動の一環としてのマーチングにまず、指導者自身が目を向け、正しく理解することが必要であり、その上で研究をし、準備をし、無理を無くしてから、しっかりとした目的を持って、直接指導にあたってこそ、マーチングの成果が生まれ、教育的意義も見いだされるのです。

2007 JAPAN BAND CLINIC(日本吹奏楽指導者クリニック)テキスト
マーチング講座I・II 山崎昌平:著より