我が家には、家の中を旅する「音楽」がある。
家族みんながお気に入りのその楽器。
アンティークの丸椅子の上に置くときもあれば、
無造作に壁に立てかけられていたり。
気がつけばベッドサイドに移動していることもある。
そうやってまるで楽器が家中を旅しているように見えるのは、
暮らしの中の音に合わせて奏でたいから。
だって暮らしの中にはたくさんの音がある。
料理をするとき、食器をテーブルにセッティングするとき、
それに洗濯物を畳むときも、疲れてベッドに倒れ込む時も。
機嫌がいいときは自分でも気がつかないうちに鼻歌が出ているし、
子どもやペットたちのおしゃべりだって心地の良い音だ。
だから私たちは時々その音を「音楽」にする。
怪獣のように家中を走り回っていた子ども。
そのドタバタの足音に、
怒るよりも思わず
ジャジャーンと効果音をつければ娘が笑い出す。
ある日は夫がトートバッグに水筒や椅子や楽器を
いそいそと詰め込んでいた。
どうやら洗濯物を干す時に鼻歌が出る癖がある私に合わせて
ベランダミュージカル風に奏でたいらしい。
そうやって
その日、そのときの家族の「音楽」が出来上がる。
今日も家族の誰かが音を生み出せば、
そこへ音楽が運ばれて来る。
我が家の「音楽」はまた家の中を旅してる。
我が家の「音楽」はまた家の中を旅してる。