アコースティックピアノ用語集

アクション

打弦機構のこと。鍵盤の上下運動をハンマーの打弦運動に転換する、いいかえれば演奏者の指の動きを弦に伝えるための複雑で精巧な装置。いわばピアノの頭脳といえます。

響板

弦の振動を共鳴作用によって、大きく美しい音にするための板。ピアノの心臓ともいわれる重要な部分で、表側には弦の振動を響板に伝える「駒」が、裏側には「響棒」が貼られています。

ハンマーが弦を打つと、弦が一定の周波数で振動します。これがピアノの音のもと。弦は高音部が細く短く、低音部にいくにしたがって太く長くなります。低音部は弦を太くするため、芯線のミュージックワイヤーに銅線を巻いたもの(巻線)を用います。弦は音色・音量・音律のすべての点で、ピアノの音の良さに密接に関わっています。

ダイナミックレンジ

ピアノの出せる最も大きな音と、最も小さな音の間の幅のこと。この幅が大きいほど表現力が豊かといえます。

ダンパー

アクション機構の一部で、弦の振動を押さえて、音を止める働きをします。鍵盤を指が押し下げている間はダンパーは弦から離れていて、弦は自由に振動できますが、鍵盤から指が離れるとダンパーが弦と接触し、音を止めます。

チューニングピン

このピンをチューニングハンマーという道具を使って、締めたり緩めたりして弦の張力を変えることで、調律を行います。なお、弦のもう一端を保持するためのピンはヒッチピンといいます。

長駒

弦の振動を響板に伝えるために、響板の表側に貼り込まれているのが駒。低音弦のための短駒と、中音から高音を担当する長駒とがあります。

倍音

ピアノの音はそのもととなる基音のほかに、多くの異なる振動数を持つ音を同時に出すことで、豊かな響きを生み出しています。それらの音の中で、基音の整数倍の振動数を持つ音が倍音。この倍音がどのように含まれるかは、ピアノの音質に大きく影響します。

ハンマー

弦を打って音を出すための槌のような形をした部品。鍵盤を叩いた指の動きはアクションによってハンマーに伝えられ、ハンマーが弦を叩くことで弦振動を起こさせて、ピアノの音を生み出します。

ハンマーヘッド

実際に弦を打つ部分、ハンマーの頭部のこと。上質のフェルトを硬く巻き付けてつくられています。整音の作業では、この部分にピッカーと呼ばれる針を刺したり、ペーパーをかけて、フェルトを整えることで、音色を調整します。

フレーム

全体で20トン以上にも及ぶ弦の張力を、支柱と一体となって支える鋳鉄製の構造物。その堅牢さと精度はピアノの耐久性と音質に大きく影響します。いわばピアノの大黒柱。

フローティングサポート方式

ヤマハアップライトピアノの上級機種には、響板を支持する打 ち廻しと呼ばれる4個所の内の1個所に、グランドピアノに採用されているものと同様の弾性支持構造(フローティングサポート方式)を採用。寄せ木支柱とのベストの組み合わせとあいまって、低中音部の豊かな響きを実現しています。

スケールデザイン

ピアノはそのあらゆる部分が互いに関連し合って、ピアノ全体としての音をつくり上げています。そこで、ピアノづくりでは、弦や響板など個々の部分を設計する場合にも、常にピアノ全体を一つのものとして総合的にとらえながら設計していく必要があります。ヤマハではこうした考え方を「スケールデザイン」と呼び、ヤマハのピアノづくりの基礎としています。

中框構造

響板を支持する打ち廻しの部分に、框(かまち)と呼ばれる部材をはさみこむことで弾性を与える、ヤマハグランドピアノで採用されている優れた響板支持構造のこと。支柱にしっかりと支えられながらも、響板の最適な振動が確保されるため、豊かな響きが得られます。

練駒

薄い板を貼り合わせて、一つの長駒にしたものが練駒。ムク材 を切り出して長駒をつくる方法では、長駒がカーブしているため、どうしても木目が途中で切れてしまい、音の響きの伝わり方に問題が生じます。その点、練駒では駒のカーブに合わせて、端から端まで木の流れがきれいに揃います。これにより弦の振動がスムーズに駒から響板へ伝わるようになり、ピアノ全体の音質に大変良い影響を与えます。

響板アセンブリー

響板を中心に、その上に接着されている響棒、駒も含めた設計のこと。

アグラフ

グランドピアノや、アップライトピアノの上級機種に採用されている弦押さえの一種。弦の位置や発音する部分(有効弦)の長さを正確に定めるとともに、一つの音程ごとに独立した弦押さえができるので、音色が明快になり、和音が美しくなります。

オーバーハング

アップライトピアノはその形の制約から、限られた響板面積の中で、十分な弦長を確保しなければなりません。中低音部の弦長を長くとるためには、低音部の巻線に変わるあたりの長駒をできるだけ響板の端に位置させる方がよいのですが、弦の振動を効率的に伝えるためには、逆に駒はできるだけ響板の中央寄りにあった方がよいのです。この相反する条件を調和させるために、駒の脚の部分を響板の中央寄りに位置させ、弦の接触する駒の上部は響板の端の方へ張り出した形にしたものがオーバーハング方式長駒です。

UV塗装

紫外線(Ultra Violet Rays)を照射することにより、短時間に硬化する塗料を用いた塗装のこと。塗料を吹き付けたまま研磨しないで仕上げる「吹き上げ塗装」なので、細かい研磨スジもなく、より深みがあり、高品質の鏡面仕上げが得られます。

トーンエスケープ

グランドピアノでは、響板から出た音が直接弾き手の耳に飛び込んでくるため、自分の弾いた音を直接耳で確かめながら演奏できます。しかし、アップライトピアノでは構造上、前板があるためにどうしても音はこもりがち になります。こうした点への配慮から、アップライトピアノの一部の機種では前板のところに一定の空間をつくり、ここから流れ出る音を直接耳で確かめながら弾くことができます。この仕組みがトーンエスケープです。

ヘルツ

ヘルツ(=Hz)とは音波の1秒間の振動数を表す単位。この数値が大きいほど高い音になります。

アンダーフェルト

ハンマーの理想は、フェルトの表面は柔らかく、内部にいくほど硬く巻くこと。ヤマハではこの理想に沿って、フェルトの下にもう一枚フェルトを巻いたアンダーフェルト入りのハンマーを採用しています。これによりハンマーの内部をより硬くすることができ、特に低音部では重量を持たせられるので、いっそう豊かな音量と響きが得られます。

寄せ木支柱

芯になる部材に、両側から通しの板を接着してつくられる支柱の構造のこと。支柱がしっかりと結合されることで、接合部での音の減衰を極小に抑え、バランスがよく、よく伸びる音を実現しています。

シフトペダル(ソフトペダル)

グランドペダルの左側のペダル。このペダルを踏み込むと、ア クション全体が右にスライドし、3本の弦を打っていたハンマーは2本の弦を、2本の弦を打っていたハンマーは1本の弦を打ちます。このときハンマーに打たれない弦は、打たれた弦の振動を受けて共鳴しますが、振動の位相が逆になるため、互いに打ち消し合う形になります。このため、音量だけでなく、音色も微妙に変化させることができます。また、打弦位置をずらすため、ハンマーヘッドも普段打たない部分で打弦することになり、その微妙な硬度の違いからも、音色が微妙に変化します。シフトペダルは中間のどの位置にも止めることができるので、多彩な音色の変化を自由自在に操ることができ、グランドピアノならではの豊かな演奏表現が生み出されます。

ソステヌートペダル

グランドピアノの中央のペダル。ある鍵を押した後でこのペダルを踏むと、指を離してもその弦のダンパーだけが弦から離れたままになり、その音だけを長く伸ばすことができます。

ソフトペダル

アップライトピアノの左側のペダル。このペダルを踏むとハンマー全体が弦に近づき、打弦距離が短くなって、音がソフトになります。

ダンパーペダル

右側のペダル。このペダルを踏むとダンパーが一斉に弦から離れ、鍵盤から指を離してもダンパーは戻らず、弦は長く振動を続けます。これにより、音を持続させて次の音を弾くことができます。

マフラーペダル

アップライトピアノの中央のペダル。このペダルを踏んで固定 すると、ハンマーと弦との間に薄いフェルトの幕が下り、フェルトの上からハンマーが打弦するようになるため、音量を下げる効果があります。またサイレント ピアノ™/ディスクラビア™では、中央のペダルは「消音ペダル」で、消音演奏に切り替わります。