篠崎史紀さんの工房訪問

<アルティーダ>その美しさの秘密を知る

高いクオリティと美しい響きに、限りない可能性が秘められている。

新作バイオリンが、これほどのクオリティを持っているのは本当に驚きです。そう語るのは、〈マロ〉こと、NHK交響楽団で第一コンサートマスターを務める篠崎史紀さん。ソリストや指揮者としても八面六臂の活躍をする人気バイオリニストが、〈アルティーダ〉の持つ魅力を熱く語ります。

Message from Fuminori Shinozaki

篠崎 史紀

バイオリンほど神秘的な楽器はありません。楽器の真価が花開くのは生まれてから数百年後。完成した時点で最良の状態に近いピアノや管楽器とはまったく異なります。それは、木やニスが生きていてゆっくりと変化していくから。もちろん、時間さえ経過すればいいというわけではありません。奏者が弾き込み、次の奏者へと手渡していくことで、初めて楽器として熟成されていく。"バイオリンは文化遺産だ"と僕が考える理由はそこにあります。

僕がアルティーダを弾いて感じたのは、ものすごく大きな潜在能力を秘めたバイオリンだということです。生まれたばかりのバイオリンがここまで高いクオリティを備えていることは、本当に驚きです。木目の揃い方や、パフリング、ネックの渦巻きなど、どこをとってもとてもきちんと丁寧に作られています。しかも、驚くべきは、どの楽器も均一なクオリティを持っていることです。僕はよく、バイオリンをワインに例えて話すことがありますが、最初から品質のいいワインだけが、長い年月を経て芳醇なワインへと熟成することができるのです。生まれてまもない楽器を、時価数億円の名器と比較することはあまり意味がありません。しかし、このバイオリンが数百年後の名器をめざしてきちんと作られていることに大きな価値がある。

数百年経たないと真価が発揮できない楽器づくりに、世界一の楽器メーカーであるヤマハが挑んだ。その勇気に大きな敬意を表したいと思います。皆さんにも、ぜひ楽器店でアルティーダに触ってほしい。楽器を探すのは、自分の彼氏や彼女を見つけるのと同じように、出会いこそが大切です。ぜひ手にとってこの素晴らしさを感じてほしい。アルティーダは、弾き込むほどに豊かな響きで応えてくれることでしょう。

篠崎 史紀

 

世界から取り寄せた最高級の素材を熟練の技術者の厳しい目でチェック。3年以上天然乾燥された部材は、温度と湿度を24時間厳密にコントロールされたこの部屋に3ヶ月間保管し、加工時まで含水率を最適な状態に保ちます。

ガルネリ・デル・ジェスとストラディバリウス。2つのバイオリンの形状・厚みをコンピュータ解析によって理想的な形状に3次元モデリング。こうして得られた独自のデータに基づいてNC(Numerical Control)加工という最新の技術によって50ミクロンという精度で切削されます。

さらに、楽器としての完成度を極限まで高めるのが、木工技術者の"手"に秘められた感性です。データを超えた熟練の技が、部材ひとつひとつを丹念に仕上げていきます。出来上がった部材はひとつひとつ専用の計測機器で周波数特性をチェック。目に見えない木の個性を確かめながら、さらに手を入れて微調整を繰り返していきます。

駒

組み立てが終わったホワイトバイオリンは、四季の環境変化を科学的に体験させることで、木の持つ歪みやストレスを軽減させ、楽器を馴染ませていきます。(YVN200に施しています)

バイオリンを守り、美しい音を響かせるために最適なオリジナルニスを開発。塵芥などの付着や混入を防ぐためクリーンルームと同様な清浄な空間の中で、入念に塗りを重ねて気品ある外観に仕上げられていきます。

ヤマハバイオリン工房のスタッフと

僕は、ヨーロッパのバイオリン工房をたくさん見てきましたが、これだけ設備が整っている工房は他にはありません。しかし、それ以上に僕が強く感じたのは、作り手のこだわりや情熱といったお金では買えないもの。それこそがヤマハバイオリン工房の財産ではないでしょうか」。(談・篠崎史紀)

篠崎 史紀(Fuminori Shinozaki) Profile

NHK交響楽団第一コンサートマスター

3歳から父・篠崎永育によってバイオリンの手ほどきを受ける。高校卒業後ウィーンに渡りトーマス・クリスティアンに師事。帰国後、群馬交響楽団、読売日本交響楽団のコンサートマスターを経て、97年にNHK交響楽団のコンサートマスターに就任。以来、"N響の顔"として、ソリスト、室内楽奏者、指導者として、国内外で活躍中。96年から東京ジュニアオーケストラソサエティの音楽監督を続けている他、WHO評議会委員を務める。その風貌から「まろ」の愛称で親しまれている。

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