池田 達也

スペシャルインタビュー

様々なジャンルで精力的な活動を行っている"マルチ"べーシスト・池田達也さん。ご自身がリーダーをつとめる"たつや せっしょん"と、ブラジル音楽のバンド"BOSSA DO MAGO(ボサ・ド・マーゴ)への取り組みや、ベースの魅力について熱く語っていただきました。

「たつや せっしょん ~其ノ壱~」TATE-001 STEREO
「たつや せっしょん 
~其ノ壱~」
TATE-001 STEREO

― 本日はお忙しい中、ありがとうございます。まずは、CDアルバムに関してお話を伺います。「たつや せっしょん其ノ壱」と「BOSSA DO MAGO」では、かなりテイストが違うようですが?

池田氏(以下I氏)/ 「たつや せっしょん其ノ壱」のほうは、僕が軸になって、ありとあらゆる仲間に声をかけて作り上げたもので、その中でベース弾きとしての自分のポジションを表現できればと思いました。「BOSSA DO MAGO」のほうは、べーシストというよりプロデューサーというか・・。一歩引いた感じで、「なごむ、やすらぐ、センチな部分」を表現できればなと思っていました。やっぱり、チェロが居て、ハーモニカが居てという「グループならではの可能性」を色々表現したくて。


「Nascenca」BOSSA DO MAGO - USS005
「Nascenca」
BOSSA DO MAGO
USS005

―「BOSSA DO MAGO」を作られたきっかけは?

I氏 / リーダーの越田(越田太郎丸さん)がセッションをやろうって集めた中から5人でやってこうと。だから発起人は僕ではなく、越田なんです。僕が根っからのおせっかい焼きというところがあって、プロデュースという形で雑用とか小姑役とか、時には、わがままオヤジに、がんこオヤジになって(笑)


―なるほど(笑)。それでは、「たつや せっしょん其ノ壱」をつくろうと思われたのは?

I氏 / 「たつや せっしょん」というタイトルでライブを10年続けてきたんですね。9年目のときに出したCDです。10年を迎えるにあたり、形として残そうと。地方をまわるときにCDがないと不便だし。池田ってのは、こんなことを考えて、こんなことをやってるんだって示せるから。


―「其ノ壱」ということは?

I氏 / 願いをこめて、「其ノ弐」、「其ノ参」とやっていきたいですね。それと平行して「BOSSA DO MAGO」もやっていきたいですし。

―次に、池田さんご自身のことについて教えてください。最初から楽器はベースを演奏されていたのですか?

I氏 / いや、小学校の頃はピアノを弾いていたんです。テレビで偶然見た黒人の男の人がサングラスをかけてピアノを弾いているのをみて、すっごくカッコイイとおもって、親父にねだってピアノを買ってもらったのを覚えてますね。そのあと、中学校に入ってからブラスバンドにちょっと入って、トロンボーンを吹いたりもしたけど、それも片手間で。だから、楽器をひとつひとつ掘り下げるというよりは、小学校、中学生くらいまでは楽器をさわって音をだすのが楽しいレベルでしたね。
ベースを始めたきっかけは高校生になってから。バンドをやってみたくてね。弾くならギターか、ドラムかキーボードかって思ってたんですけど、バンドを組もうと思ったときに空いてたのがベースだけだったというだけです(笑)。


―では、きっかけはエレキベースだったんですね?

I氏 / そうです。仲間や友達と、マーカス・ミラーとか、ジャコ・パストリアスとかを観てました。

―ウッドベースを始めたられたきっかけは?

I氏 / 中学校時代から、家に居てもつまらないし、若者がたむろしてるような喫茶店に出入りしてたんです。そんな中で、友達の兄貴を通じてジャズ喫茶に行って・・・。ジャズ喫茶の世界って、みんな何もしゃべらないで、砂糖の入ってないコーヒーを飲んでいるわけですよ。それがカッコよくて!!今まで僕が聞いたことのない全然違うかっこいいものに思えたんです。そのときに、「ずんずんずん」って響くベースの音がすごく気持ちよくて。当時のジャズ喫茶は設備も凝っていて、大きなスピーカーやアンプが置いてあったし。


―どんな曲が流れていたか覚えてらっしゃいますか?

I氏 / 何が流れてたか、しっかり覚えてないんですけど、多分 マイルス・デイヴスでしょうね。クリフォード・ブラウンとか。レコードジャケットを見せてもらったら、バイオリンのおばけみたいなのを黒人の男性が抱いているのを見て、これはカッコいいなと。当時はビデオなんて、まだ無かったですから。ベースの音っていいなぁって思ってたんですけど、ベースを教えてくれる人もいないし。楽器屋さんに置いてもいないんですよね。で、結局、東京に来てから、質屋で2万円で買ったのを覚えています。


―相当な練習やご苦労はおありでしたか?

I氏 / 東京に来てキャバレーのバンドに入ったんですよ。まだ当時は日替わりでショーがあって・・・。ショーっていっても大したことなくて新人の演歌歌手とかヌードショーとかマジックとかね。毎日繰り広げられるショーが違うので、毎日違う譜面を読むことになりました。毎日違う譜面をさらって、休憩中もその譜面を読んでという感じで勉強しましたね。だから、19歳くらいからキャバレーの世界に入って、21歳くらいにはジャズクラブで演奏していましたね。だから、現場で覚えていたんですよ。先輩たちに怒鳴られながら、落ち込んだり、しょぼくれたりもしたんですけど。楽しくやりたいなってのがあったんで、苦労ってのは、なかったですね。その頃に知り合ったミュージシャンとは今でも仲良くできてます。

エレキベース以上にコントラバスって表現の幅が広いですから、さらにのめりこんで。やればやるほど面白い!

―ベースならではの魅力を教えてください。

I氏 / べーシストには多大な権限が与えられてるんですよ。ベースラインを弾いたり、許される範疇でコードチェンジもできたりね。それによって音楽の色合いが変わっていく面白さに惹かれました。だから、ベースにのめり込んでいったのは、むしろプロになってからです。「ベースってこんなに面白いんだ」って。


―池田さんは、ヤマハ サイレントベースSLB200の開発にも、随分ご協力いただいたのですが、開発設計者にリクエストしたことは何ですか?

I氏 / ベースはドラムやパーカッション、サックスと一緒だったり、ビッグバンドの一員だったりと、ありとあらゆる条件下での演奏を要求されます。そこでベースは「ベース」って言葉のごとくバンドの土台をのせなくちゃいけません。リズムが明確で、音程がちゃんと聞こえる必要があります。単独で弾いたときの音も大切ですけど、ドラムなどと一緒に弾いたときに、音が埋もれないように、硬めに聞こえるかもしれないけど、音抜けのよさと、音の明瞭感、存在感を追求してもらいたいと。
SLB100はワントーンだったので、SLB200は2つないし3つは必要だとリクエストしました。もちろん室内での練習を考えるとヘッドホンは必要なんですけども、僕らのように毎日のライブを考えると、電池の寿命が大切だから、ヘッドホンはいらないんじゃないのかって提案しました。ヘッドホンがないと電池の寿命が飛躍的に延びますから。以前SLB100を使ってたときに、ライブのときにうっかり電池がきれてしまったことがあるんですよ。音がでなくなってしまって舞い上がってしまいましたねぇ(笑)


―アメリカで開催されたナムショー(国際楽器見本市)で、ヤマハ サイレントベースSLB200のデモンストレーションをなさったときの、反応はいかがでしたか?

I氏 / すごかったですね。僕が演奏しているにも関わらず、近づいてきて早口のネイティブイングリッシュで話しかけてきて。こっちは演奏してるのに!!(笑)どう対応していいかわからなかったですけど、すごく反響はよかったです。皆さん手にとって演奏してみたいと。機動力がバツグンだって。こんなにコンパクトに収納できるのかと。

たつや せっしょん~其ノ壱~発売記念ツアー in STB139
たつや せっしょん~其ノ壱~
発売記念ツアー in STB139

―池田さんは今まで色々なエレクトリックアップライトベースを使われていると思いますが、その中でこのヤマハ サイレントベースSLB200はいかがですか?

I氏 / 正直いいますと、まずプライス面でおいしいと思います。そのすごく高価な外国製品があるんですね。それも、 SLB200が何本も買えてしまうような。楽器はもっと手軽に手を出せるものじゃないといけないと僕は思います。あとはトーンコントロールが2つあって、弦高がアジャスタで簡単に調整できるし、自分好みのスタイルで演奏できるところが良い。


―ご自身はご満足なさってますか?

I氏 / ええ。事実、そうでなければ僕自身はライブでは使わないです。つい先日の「たつやせっしょん」のライブでも使いました。この前、あるライブハウスでSLB200を演奏したんです。その時、裏方にいたマスターがライブ終了後に「え?これ(SLB200)で演奏してたの!?絶対ウッドベースの音だと思ってた。」って、すごく驚いていたんです。ライブハウスのマスターって毎晩ライブを聞いてるわけだから、耳が肥えてるはずなのに!そのくらいSLB200の音はウッドベースに近いってことですよね。
また、コントラバスよりも音がつくりやすいのも良いですね。弦だけは自分好みのものに張り替えて演奏しています。ライブではエレキベースと持ち替えたりするんですが、すぐに持ち替えたりすることもできますし。いろいろと重宝してますよ。

エレキベース以上にコントラバスって表現の幅が広いですから、さらにのめりこんで。やればやるほど面白い!

―それでは最後に、これからベースをやってみたいと思っている方や、始めたばかりの方々になにか一言メッセージをお願いします。

I氏 / ベースをやるからには、ぜひバンドをやってほしい。バンドをやることでベース本来のおもしろさや、グルーヴの大切さが分かります。正確なだけのリズムだったら、これからの時代、コンピューターやサンプリングがあります。だから、アンサンブルが面白いと思うんです。ベースを持ったら、バンドの仲間を見つけよう。楽器店をうろついてみたり、張り紙をだしたりしてほしいかな。サイレントベースの登場によってベースがライトで気軽なものになったと思うんです。だから、とりあえず、手を出してみよう。やってみようと。まずは独学でいいんです。そこで壁にぶちあたったときに、資料や色んな本をみたりすればいいと思いますね。

―本日はどうもありがとうございました。今後のますますのご活躍をお祈りしています。