渋谷ズンチャカ!
音楽の街づくり事業 おとまち
プロジェクト
課題解決に向けた取り組み
- テーマ:街全体を使った新たな参加型音楽祭
渋谷区・地元商店会×シブヤ大学×おとまち
- 課 題
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- 未来に向けて再開発が進む渋谷の街を、さらに活性化したい
- 渋谷に暮らす人と訪れる人がゆるやかにつながる地域コミュニティの創成を
- ”シビックプライド”を持つ街づくりの担い手を育てたい
- 提 案
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- 渋谷の街を創る“人を育てる”参加型音楽祭の実施
- 渋谷区・商店会・NPO・ボランティアをつなぐプロジェクトチームの立上げ
- 年間プロジェクトを策定し、地域コミュニティを継続的に育成
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成長の記録 01「渋谷ズンチャカ!」
~会場に集まる人皆がいっしょに音楽を楽しむ、1日だけの音楽解放区。~ - 「渋谷ズンチャカ!」~会場に集まる人皆がいっしょに音楽を楽しむ、1日だけの音楽解放区。~
成長の記録 01
音楽をみんなで楽しむ!
渋谷が音楽解放区になった「渋谷ズンチャカ!」
渋谷が1日だけ音楽解放区になる『渋谷ズンチャカ!』。そのプレイベントとなる第0回が、2014年7月13日(日)に東京都渋谷区のみやしたこうえんと神宮通公園で開催されました。
「渋谷ズンチャカ!」は、2020年の東京五輪、そしてその先に向けて変わりゆく渋谷に集う人々がつながり、街への誇り・愛着を感じて、渋谷をさらに活性化させることを目的にスタートし、おとまち 音楽の街づくり事業はNPO法人シブヤ大学とともに音楽祭全体の企画を担当。また、「バンド体験/管楽器体験コーナー」「ドラムサークル」「手作り楽器ワークショップ」「音楽マルシェ」をはじめ、持参した楽器で誰でも飛び入り歓迎の大セッション「スウィングカーニバル」といった参加型コンテンツを運営しました。
「参加する」「聴く・演奏する」「作る・体験する」。以上3つのアプローチで音楽を楽しめるとあって、午前11時から午後6時の開催中、来場者は途切れることなく大盛況。直前の台風で雨が心配されましたが、かえってすごしやすく、最初から最後まで参加されていた方も多く見られました。
子どもから大人まで盛り上がりを見せた
「はじめてのバンド体験コーナー」
クライミングウォール場を使った「バンド体験コーナー」では、ミュージックファシリテーターでドラマーの河原井みつる氏を中心としたバンド講師陣が、実際の演奏をまじえ、キーボード、ギター、ベース、ドラムといった楽器を紹介。「弾いてみたい人は手を上げてください」との呼びかけには、小さな子どもだけでなく大人からも手が上がり、即席バンドが誕生していました。講師チームのリードの元、初心者でも本格的なバンドセッションができるようになっていて、ノリノリでギターを弾く子や、しっかりとしたリズムをキープしバンドを支える男の子ドラマーに、みんな笑顔で大盛り上がりでした。
歌の輪が広がる「SING OUT」ワークショップ
スケート場を使った合唱セッション「SING OUT」ワークショップでは、ゴスペルプロデューサーの吉田英樹氏、ヴォイストレーナーの荒尾のりこ氏らが、歌のレッスンを実施。歌う曲は『Oh Happy Day』『翼をください』『上を向いて歩こう』『All You Need Is Love』『民衆の歌』という世代を超えて愛される名曲たちです。まずは集まった参加者がソプラノ、アルト、テナーとパートに分かれ、それぞれ輪になり練習開始。ピアニカでメロディーを確認しながら歌っていき、徐々に振り付けや手拍子も加え、最後にはみんなで大合唱。はじめて会ったひとたちが息の合ったコーラスグループのようになっていく様子はとても感動的でした。
リズムで一つになる「ドラムサークル」
フットサル場では、通りかかった参加者が空いている椅子に座って、目の前のジャンベやコンガなどのアフリカンドラムを叩いて演奏に加わる即興パーカッションアンサンブル「ドラムサークル」が繰り広げられていました。ドラムサークルファシリテーターの野田憲一氏による、リズムの速さ、音の大きさなどを導く指揮に合わせ、みんなでパーカッションを叩いたり、ステップを踏んで踊ったり。リズムという最も根源的な音楽要素にフォーカスしたワークショップだけあって、老若男女国籍も超えて幅広く直感的に楽しんでいる開放的な空間でした。
自分の楽器を自分でつくる「手作り楽器ワークショップ」
ドラムサークルに続いてフットサル場ではじまったのが「手作り楽器ワークショップ」。ホースや練習用のプラスチックマウスピースを使った「トランペット」、自分でペイントして世界にひとつだけのギターを作る「一弦ギター」のどちらかを選んで、自分だけの楽器をみんなで作ります。作ったあとはみんなで演奏! 本物のトランペットやサックスをまじえ、フットサル場をパレードしながら『聖者の行進』や『森のくまさん』を演奏し、大盛り上がりでした。
また、世界中の民族楽器のマルチプレーヤーであるロビン・ロイドさんによる、アフリカの親指ピアノと呼ばれる楽器"カリンバ"のワークショップも同時に開かれ、普段触れることのないアフリカの楽器の演奏や、アフリカの音楽の歴史を体験することもできました。
スウィングカーニバルから
会場が一体となったファイナルセッションへ
「渋谷ズンチャカ!」のすべてが集約されていると言っても過言ではないのが、メインステージで最後に行われた「スウィングカーニバル(参加型セッション)」~「ファイナルセッション」の2ステージ。ステージとは言っても、会場にいる全員が主役! バンド体験、SING OUT、ドラムサークル、手作り楽器ワークショップなどの体験を活かし、みんな思い思いに全身で音楽を楽しみました。「スウィングカーニバル」では東京ブラススタイルと早稲田大学ニューオルリンズジャズクラブが先導し、『上を向いて歩こう』『Sing, Sing, Sing』といった名曲をセッション。持参した楽器での参加だけでなく、用意されたパーカッションでの飛び入りもOK! 会場には管楽器だけでなく、トライアングルや民族楽器などが集まり他では見ることの出来ないユニークな合奏が生まれました。「ファイナルセッション」では応援団長の井上順氏、東京ブラススタイル、総合司会のデイビット矢野氏をはじめとした出演者がステージに勢揃いし、お客さんといっしょに歌い、踊り、演奏と音楽をとにかく楽しみ尽くす1時間が繰り広げられました。
「来年もみなさん、ここでまた音楽を楽しみましょう!」という井上順氏の締めの挨拶のあとに、会場全員が「渋谷!ズンチャカ!」とコール&レスポンス。プレイベントながら約5000人もの動員を記録し、大盛況だった渋谷ズンチャカ!。来年はもっと盛り上がること間違いないでしょう。
やれることを全部詰込んだプレイベント。本番の熱狂から日が過ぎて、日常の冷静を取り戻してくると、反省ばかりが見えてきますが、あの日のあの場所には確かに「音楽解放区」と呼べる熱量と解放があったように思います。
どうやってもっと多くの人々とあの場の空気を共有し広げていくことが出来るだろう?次回に向けて頑張ります。
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成長の記録 03第2回「渋谷ズンチャカ!」の開催に至るまで
- 第2回「渋谷ズンチャカ!」の開催に至るまで
成長の記録 03
Report by おとまち/細田
2016年9月4日(日)。朝方まで降り続いていた雨も開催を待っていたかのように止み、第2回「渋谷ズンチャカ!」は晴天の夏空のもと盛大に盛り上がりました。今回はその開催までの経緯と進化をずっと一緒に準備を進めてきたヤマハおとまちの細田がレポートしたいと思います。
本番までの364日こそ、
渋谷ズンチャカ!。
第2回「渋谷ズンチャカ!」の準備は約1年前の2015年夏、1回目のズンチャカ!直後からスタートしました。
これまでは実行委員会との打合せをはじめ、運営のほとんどを私たちヤマハおとまちとNPO法人シブヤ大学で担ってきましたが、今回からより市民ボランティア「チーム・ズンチャカ!」が主体となって運営する体制を少しずつ目指すことに。というのも、渋谷ズンチャカ!の本来の目的はただ年1回のイベントを開催することではなく、その準備などを通して「渋谷の街を作る“人”を育てる」ことだからです。
そこで、今回はチーム・ズンチャカ!の中から新たにリーダーを募り、“縁の下ズ”として彼らにより主体的に動いてもらうことにしました。手を挙げてくれたのは、20~30代の様々なバックグラウンドを持つ男女4名。渋谷で生まれ育ったり、働いているといった街とのつながりが濃い人もいればそうでない人も、音楽との付き合い方の濃さもそれぞれ、そんな「渋谷ズンチャカ!」の縮図のような多様なメンバーが集まりました。全員本業もあるなかで実行委員会との会議に参加し、ボランティアチームの想いを伝えたり、協賛企業まわりに挑戦したり。初めてのことに戸惑いながらも一つひとつ進めていきました。
より渋谷の街と融合した
ズンチャカ!へ。
毎月2〜3回、時には深夜にまで及ぶチーム・ズンチャカ!ミーティングを経て、「世界のどこにもない、渋谷らしい手づくり音楽祭」のカタチを議論してきました。しかし、当然、チーム・ズンチャカ!の想いだけでは音楽祭は実現できません。チーム・ズンチャカ!の想いを受けた、渋谷区と地元商店会の方々、渋谷区観光協会や協賛企業の皆さま、警察署など様々なステークホルダーのサポートがあって初めて、渋谷ズンチャカ!は実現します。こうした「渋谷の街の魅力を引き出し、発信したい」という想いでたくさんの人がつながるこのプロジェクトは、より街と融合した音楽祭へと進化を遂げるために、徐々にその下地を創り上げて来ていると感じます。会場も第1回の5カ所から16カ所へと約3倍増。過去2年の実績とともにチーム・ズンチャカ!の若い力が、中には親子以上の年の差のある街の大人たちの心を動かしているのだと思います。また、渋谷区からも「ズンチャカ!は単なる街なかでの音楽イベントではなく、市民の街に対する誇り“シティ・プライド”の醸成につながるもの」という嬉しい評価を改めていただきました。
いくつもの苦難を乗り越え、開催当日。
しかし、今回もすべてが順調に進んだわけではありません。イベントの企画運営を初めて行うメンバーが多いなか、さらに会場数も増え、より安全で円滑に、そして楽しく渋谷ズンチャカ!を実現するためにはどうしたらいいか。チーム・ズンチャカ!のメンバーは頭を悩ませていました。ただ、こういう壁にぶつかった時こそ、チームとして大きく成長するチャンス。私たちおとまちやシブヤ大学のメンバーが時にサポートしながら、彼らの奮起をサポートしてきました。そして、2016年9月4日の日曜日。渋谷センター街・宇田川交番前に置かれたグランドピアノでは、通行人も参加者になってカエルの歌を輪奏したり、街角でラップバトルが始まったり、街の至るところから演奏が沸き起こり、ハチ公前広場の青がえる観光案内所からはラジオ生放送も特別にやらせていただきました。どれもチーム・ズンチャカ!のアイデアと行動力の賜物です。そして、この日のトリは恒例となった、みやした こうえんステージでの大合奏&大合唱。最後はこれまた恒例となったズンチャカ!をつくった人、当日参加した人、全員での集合写真。毎年変わりゆく渋谷の街並みを背景に、この写真自体が街のアーカイブになっていけばと思っています。
“渋谷の未来”も熱く語り合った懇親会。
第2回「渋谷ズンチャカ!」の開催から1ヶ月後の10月。関係者による懇親会が開催されました。世代も仕事も趣味も異なる様々な人たちが同じテーブルを囲み、みんなでズンチャカ!のことだけでなく、渋谷の街のこれからについても熱く語っている様子を目にした時は私の胸にもこみ上げてくるものがありました。実際、チーム・ズンチャカ!のメンバーからも、「この活動を通して渋谷という街が好きになった」「通勤時に街を見る目が変わった」「もっと渋谷のために何かしたい」といった声も聞くことができましたし、実行委員を務める商店会長さんからも「これからの渋谷の街の“おもてなし”を、若い皆さんと一緒につくっていけることが嬉しい」という印象的な言葉をいただくことができました。さあ、そして早くも2017年の第3回「渋谷ズンチャカ!」の開催に向けた準備もすでに始まっています。チーム・ズンチャカ!にも新しい仲間が増え、2017年の「縁の下ズ」も決定し、より自律した組織運営の芽も育ち始めています。今後も「渋谷ズンチャカ!」の成長と、渋谷の街の発展を見守っていくことができればと思います。
東京都渋谷区
渋谷ズンチャカ!
http://shibuya-zunchaka.com/