【導入事例】eXeField Akiba 様 / eスポーツ施設 / 東京
Japan/Tokyo Dec.2020
2020年8月11日、東京都・秋葉原でオープンした「eXeField Akiba(エグゼフィールド アキバ)」は「ICT×eスポーツ」をテーマに最先端のICTと最新の機材を備えたeスポーツ施設です。
このたびeXeField Akibaに、ヤマハデジタルミキシングコンソール「QL1」、マトリクスプロセッサー「MTX5-D」、パワーアンプリファイアー「PX10」「PX3」、スピーカーシステム「CZR12」、シーリングスピーカー「VXC4」などが導入されました。選定理由や使い勝手などについて、eXeField Akibaを運営する株式会社 NTTe-Sports 代表取締役副社長 影澤 潤一 氏にお話をうかがいました。
eXeField Akibaはeスポーツを楽しむ場であるだけでなく、eスポーツ施設を作る側のショーケースでもある
eXeField Akibaはどんな目的で作られた施設なのでしょうか。
影澤氏:
eXeField Akibaは、eスポーツを楽しむ人だけでなく、eスポーツに仕事として携わりたい人、eスポーツの施設を作りたい人にも見ていただきたい、eスポーツのトータルショーケースという位置づけの施設です。特に最近は「eスポーツ施設を作りたい」という企業や自治体が増えていて、NTTとして、そのためのインフラをはじめとする最先端のテクノロジーをプレゼンテーションする施設でもあります。
eスポーツの伸びは急速で、特にここ数年はめざましいものがあります。ゲーム自体は日本の文化として昔から脈々と根付いていますが、海外では先行してeスポーツ競技のためのプロチームが発足し、大会によっては高額賞金がかけられるなどの大規模イベントが開催されています。その影響か、日本でも急速に認知度が高まってきました。
施設としてのeXeField Akibaはどんな使われ方をしているのでしょうか。
影澤氏:
第一にイベント用途です。イベントは企業が主催するものからコミュニティが主催するものまで、ほぼ毎日のように開催されています。プレイヤーだけでなく観客も入って観戦しますし、同時にインターネットでの配信も行います。YouTubeやTwitchなどのプラットフォームで配信しており、どなたでもご覧いただけます。
また、イベント以外の日は時間利用で利用料をお支払いいただき自由にお使いいただけます。カフェを併設していてドリンクやフードも提供しています。飲食しながら自分のアカウントでゲームをしたり、ネットサーフィンをしたり、その他にもテレワーク目的で利用される方もいます。パソコンがハイスペックなだけでなくネット環境も優れており、最新のデバイスがあるので、リモート会議などのゲーム用途以外で使用してもストレスはほとんど感じないと思います。
ゲームに必要なサウンドについて提案してくれたヤマハにシステムの構築を依頼
それではeXeField Akibaの音響システムについて教えてください。ヤマハの音響機器を選定いただいたのはどうしてでしょうか。
影澤氏:
やはり「音」です。僕はゲームが好きで、自分でもプレイしていますし、以前からゲームイベントなども開催していましたが、ゲームにとって環境は大切だと痛感しています。中でも、特に音が大切だと感じています。そのためeXeField Akibaでもきちんとした音響システムが必要だと思いました。
ヤマハを選んだ理由の1つが、自分で初めて買ったミキサーがヤマハの「MG12XU」だったというのがあります。主催イベントのために購入したコンパクトなミキサーでしたが、直感的で使いやすく、しかもゲームセンターの大音量の中でのイベントでも、きちんとした音を出せたので気に入ってよく使いました。ですからヤマハなら間違いないと思いました。
もう1つの理由として、ヤマハの営業の方との出会いもあります。以前eスポーツ関連のいろいろな企業の方が集まる機会があり、そこで出会って意気投合しました。そのときは「何か一緒にできるといいですね」程度の話でしたが、後にeXeField Akibaのプロジェクトが立ち上がった際に、ヤマハの方と面識があったことを思い出し、声をかけました。それが具体的なきっかけです。
お互いゲーム好き、というつながりもあったのですね。実際にヤマハと仕事をしてみていかがでしたか。
影澤氏:
多くのメーカーさんはある意味当たり前なのですが「NTTさんのご要望通りにきちんとやります」という完全な受発注のスタンスの中、ヤマハさんとはさまざまな提案をもとにディスカッションをする機会が非常に多かったのが嬉しかったです。やはり自分がゲーム好きだからこういうものにしたい、という思いが込められていると感じました。僕がeXeField Akibaを作るにあたって大切にしたのは、正にそこです。今回は設計、施工、PCメーカーやデバイスメーカー、そしてカフェに至るまで、ゲームに対する熱い想いを持って、NTTe-Sportsと一緒になって新しいシーンを作り上げたいと思ってくれる人たちとご一緒できました。ゲームを軸に共鳴が生まれ、結果非常によくできた音響システムが作れたと思っています。
実際に運用を開始して、音響の印象はいかがですか。
影澤氏:
非常にいいです。音響システムをプランニングした人がゲーム好きということもあり、プレイヤーがどういう音を欲しているかよくわかっていますから当然かもしれませんが、さすが音のプロだなと思いました。先日もプロゲーマーの方から「シューティング系の銃声や爆撃音の重低音がすごくて、おもわず『おお!』と声が出てしまった」といったコメントをもらいました。爆発音などであれば、単純に音の大きさで誤魔化すこともできますが、eXeField Akibaの音響システムはリアルな音が再現されています。これは本当にすごいことだと思っています。加えてeXeField Akibaのイベントではライブイベントなども行っていますが、その際の音響システムとしても運用しています。音楽用途でも非常にいいサウンドだと思っています。
ミキシングコンソール「QL1」を採用し、映像・音声すべてIPで完結
調整卓としてデジタルコンソール「QL1」を採用した理由を教えてください。
影澤氏:
eXeField AkibaはNTTe-Sportsの施設であり、今後のeスポーツ施設のショーケースとしての役割も持ち合わせています。今回、映像はNDIという規格を採用し、音はDanteを採用することで映像も音も全てIP化しました。SDIもキャノンも無いスタジオ、というのはだいぶチャレンジングな試みだと思います。
すべてIP化するメリットは何でしょうか。
影澤氏:
まずケーブルの省配線化ができるという点です。LANケーブル1本で機器同士の接続ができるので引き回しが容易になります。従来であれば機器同士の配線を行うには複数のケーブルが必要でした。それがLANケーブル1本で実現できます。
またIP化することにより、将来的にeXeField Akibaを中心とし、別の拠点とをネットワークでつなげ制御するといった仕組みを構築し、さらにそれを提案していくことを目指しています。
QL1の横には、スイッチとノブだけ操作できるコントロール用のボックスも用意されていますね。
影澤氏:
eXeField Akibaには技術スタッフもいれば、カフェスタッフもいて個々のスキルは多様です。専門的知識のないスタッフが日常的に使用することを考えると、直感的な使いやすさが必要だということで、音響システムにプロセッサーを入れて用途別の設定をプリセットし、シーンの切り換え、マイクのボリューム、スピーカーのボリュームなどの基本操作はノブやスイッチで直感的に操作できるようにしてもらいました。
音響のパートナーとして国内メーカーのヤマハを選んだのは「安心感」という部分もあるのでしょうか。
影澤氏:
それは大きいです。音も映像もIPという新しい試みに挑戦していますので、どれだけレスポンス良く相談に乗ってもらえるかという点も重視しました。さらに言えば、国内メーカーと一緒に「eスポーツをベースとした新しい試み」を世界に向けて発信していきたいという思いもあります。eスポーツは海外がメインで、日本は遅れているイメージがありますが、自分は全くそう思っていないのでぜひ払拭したいと思っています(笑)。
eスポーツを通じて、エリア、ボーダー、ジェンダーなどあらゆる壁を取っ払ったバリアフリーな世界を実現したい
eXeField Akibaのサウンドシステムについて、お客さまから反響はありましたか。
影澤氏:
一般のお客さまは、今までeXeField Akibaのようないい音環境でゲームをプレイ・観戦した経験がないので、大変喜ばれます。一方、技術的な知識のある方、あるいはゲーミング施設の運営を考えている技術系の方々は、フルデジタル・フルIPという点で「こんな新しいシステムは見たことがない」と大変驚かれます。NDIやDanteを分かっている人は、なおのこと驚かれますし、面白がってくれています。
今後、eXeFieldではどんなことをやっていきたいですか。
影澤氏:
今までNTTとしては「こんな速くて便利なネットワークを作ったので使ってください」という、土管屋のイメージが強く、サービサーに対して若干受け身の姿勢に見えがちでした。それを僕は以前からもどかしく思っていて、使うシーンや求めるニーズから一緒に作っていきたいと思っていました。ゲームやeスポーツは、そうしたアプローチの中核になるものだと思っています。
壮大な話になりますが、eスポーツの素晴らしい点は、エリアレス、ボーダレス、ジェンダーレス。国境、地域、性別を含めてあらゆる壁を取っ払うことができるバリアフリーな世界であることです。今はまだ「遠くの人とゲームができる」というレベルでの話題となっていますが、そんな概念すら無くしたいと思っています。将来的にはあらゆる壁を意識せずコミュニケーションをとれることが当たり前の世界になるべきだと考えています。その為のツールやプラットフォームとしてゲームのもつポテンシャルは絶大だと思います。
ハイスペックが要求されるeスポーツをエンジンにしてインフラを整備すれば、コミュニケーションにおけるバリアフリーは自ずと実現できるということですね。
影澤氏:
そうです。eスポーツの普及によって真のバリアフリーを可能にするインフラが実現できると信じています。同時にゲームやeスポーツが日本に文化として定着することが必要でもあると考えています。近年はだいぶ認知されてきましたが、それでもまだ「趣味は何ですか?」ときかれたとき、まだ「ゲームです」と胸を張っては言えない状態だと思います。僕は、みんなが堂々と「ゲームが好きです!」と言えるような世界を作り上げたいですし、そのためにもまずは環境づくりを頑張っていきたいと思っています。
本日はご多忙の中、ありがとうございました。
eXeField Akiba(エグゼフィールド アキバ)<公式>
https://www.ntte-sports.co.jp/exefield/