【導入事例】TACHIKAWA STAGE GARDEN 様 / ホール / 東京

Japan/Tokyo Sep.2020

2020年4月、JR立川駅の北口より側徒歩8分の場所に完成したホテル、商業施設、オフィスなどで構成された大規模な複合施設GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)。そのGREEN SPRINGS内に多摩地区最大規模の民間運営次世代型エンタテインメントホール「TACHIKAWA STAGE GARDEN(立川ステージガーデン)」がオープンしました。

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」ではスピーカーにNEXOの「STMシリーズ」「PSシリーズ」「GEOシリーズ」「LSシリーズ」など、デジタルミキシングコンソールにヤマハの「CLシリーズ」「QLシリーズ」、そしてシーリングスピーカーに「VXCシリーズ」などが導入されました。その導入の経緯について、「TACHIKAWA STAGE GARDEN」を運営する一般社団法人 立飛教育文化振興会 理事長 藤田敏明氏、そしてホールのコンセプトや音響面での設計、機種選定に携わった株式会社東京音響通信研究所 代表取締役 菊地徹氏にお話をうかがいました。

一般社団法人 立飛教育文化振興会 理事長 藤田敏明氏
株式会社 東京音響通信研究所 代表取締役 菊地徹氏

空に、森に、そして人につながる新しい劇場を立川に

まず「TACHIKAWA STAGE GARDEN」のコンセプトについて教えてください。

藤田氏:
開発主「立飛ホールディングス」は、戦前からこの地、立川で飛行機を作っていた会社ですが、現在は不動産賃貸業を中心とした事業を展開しており、立川市のほぼ中央に98万㎡の土地を所有しています。2020年には立川駅の北側の「みどり地区」に新街区GREEN SPRINGSを開発しました。この地区はかつては国有地で、3.9ヘクタールのうち1ヘクタールに関しては文化施設を作りなさいという地区計画がありました。さらに立川市からはもう一つ注文があって、単に文化施設を作るだけではなく、多摩地区でオンリーワンのものを作るようにと言われたんです。

この地域を開発するためには、多摩地域でオンリーワンの文化施設を作らなければならなかった、ということですか。

藤田氏:
そうなんです。それで私たちも非常に悩みまして、最初は劇場施設を作る案を出しました。子どものためのミュージカルステージのような劇場だったのですが、それは市から却下されてしまいました。

一般社団法人 立飛教育文化振興会 理事長 藤田敏明氏

藤田氏:
その次に考えたコンセプトが「青空」です。JR立川駅はいわゆるペデストリアンデッキ*ですし、駅前には高いビルも多く、あまり空が見えません。でも駅から徒歩約8分のこの地区まで来ると東京とは思えないぐらい空が広いんです。それで、私たちは「ホールの上で空とつながる、公園とつながる、そして音楽で人と人がつながる。そういう音楽ホールを作りたいです」と立川市に提案しました。そうしたら「それはオンリーワンだね」と言われて許可がおり、「TACHIKAWA STAGE GARDEN」が生まれました。

* 広場と横断歩道橋の両機能を併せ持ち、建物と接続して建設された、歩行者の通行専用の高架建築物。

「空とつながる」「公園とつながる」というのは、具体的にはどういうことでしょうか。

藤田氏:
「空」について言うと、たとえばノルウェイのオスロという街に、非常に美しいオペラハウスがありますが、ここは建物の横に坂が作られていて屋上まで上がれるようになっています。それによってオペラハウスがコンサートに来た人だけでのものではなく、市民にとっての憩いの場になっているのです。同じように「TACHIKAWA STAGE GARDEN」も、ホールの横に青空に向かっていく滑走路のような階段状のカスケードを作りました。それによってどなたでもホールの上にまで登ることができ、周囲の風景が楽しめます。屋上からは昭和記念公園の木々の緑が楽しめますし、天気が良ければ富士山も見えます。

ホール脇には屋上まで登ることができるカスケードがあり、屋上からは昭和記念公園の森が望める

藤田氏:
それから「ガーデンとつながる」については、アメリカのバージニア州にウルフ・トラップ国立公園の中にフィリーンセンターというホールがあるんですが、そのホールは客席の背面が全部開くんですよ。そして屋外からでもステージを見ることができます。そこで、私たちもホールの背面の壁をスライディングウォールにして開放できるようにし、ガーデン側からもステージが見られるようにしました。それが「ガーデンとつながる」ということです。

ホールと隣接したガーデン部分は屋外の客席ということですか。

藤田氏:
そうなんです。ガーデンステージと呼んでいるのですが、屋外にも客席スペースがあります。客席数としてはホールが2448席、屋外のガーデンステージには628人。ホールの1階をスタンディングにすると2940人収容できますので、屋外とあわせて最大で3600人ぐらいのキャパになり、多摩地区で最大規模のエンタテインメント空間となります。
ガーデンステージは、ホールとつなげて使うだけでなく、日比谷野外音楽堂のようにガーデンステージだけを単独で使えますし、ホール、ガーデンステージ、そして芝広場や街区までも巻き込んだイベントもできると思っています。

スライディングウォールを開放した状態(ステージ上から撮影)。スライディングウォールをあけるとガーデンステージがある

ホールのステージを起点にして、ガーデンや街区まで拡張できるということですか。

藤田氏:
そうです。そんなことができるようにGREEN SPRINGSのガーデン部分では、植栽の中に仕込んであるスピーカーを使ってホールの音を出せるように設計しています。このような無茶な試みを実現するために、音響に関してはスペシャリストである東京音響通信研究所の菊地さんにお願いしました。

菊地さんにおうかがいしますが、公園のスピーカーは、どうやって鳴らしているのですか。

株式会社 東京音響通信研究所 代表取締役 菊地徹氏

菊地氏:
公園の植栽と公園エントランスに全部で25台のスピーカーが埋まっています。ホール公園側正面には2台のテラススピーカー、芝生のグリーンヒル両側には6台のポールスピーカーがあります。普段はBGMが流れていますが、設定を変えればホールの音を公園内の全スピーカーから再生できるように、ホールの音を光ケーブルで公園内の音響システムに伝送しています。音声信号はすべてホールのステージからの距離補正を行っているのでGREEN SPRINGS全体で、ホールから聞こえてくる音楽を高いクオリティで聞くことができます。

藤田氏:
先日も海外の音楽関係者から「ホールで演奏している音楽を街や公園でも聴けるというのは、いままで聞いたことがない。これは世界的に見てもオンリーワンだ」と褒められました。

持ち込みのPA機器をいかに効率的に設置できるかということ

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」のホールの音響面における特長はどんな点でしょうか。

菊地氏:
4年ほど前に声をかけていただいて「TACHIKAWA STAGE GARDEN」の音響面での計画に携わりましたが、私自身は45年ほど音響の世界で仕事をしていて、ホールを使う側の人間なんですね。ですから「TACHIKAWA STAGE GARDEN」ではホールを作る段階から参加できたことがとても有意義なことだと思います。
一般的にホールでの音楽の催しの多くは持ち込みのPAシステムを使います。アーティストにとってPAシステムというのは自分のサウンドを創り出すための楽器と同じなんです。特にコンサートツアーを回っていると会場ごとに違う機器でライブをするのは難しいですから、機材は持ち込みが多いです。そこで「TACHIKAWA STAGE GARDEN」のホールのコンセプトで私が一番重要視したのは、限られた時間でいかにスムーズに持ち込み機材をセットアップと撤収ができるか、でした。

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」ホール

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は、機材の持ち込みに関してどんな点が工夫されているのでしょうか。

菊地氏:
最初に考えたのは搬入搬出の効率です。「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は搬入口の外にも中にもプラットホームがありますし、ステージ高にそのままクルマをつけることができます。さらに下手側にも大きな搬入口があってトラックがそのまま客席部分に入れます。ですから外に2台、中にも2台、合計で11トン車が4台同時に搬入搬出可能です。

持ち込み機材は毎日組んで、バラして次へ、という感じですから搬入搬出は重要ですよね。

菊地氏:
そうなんです。しかも最近はミキサーやスピーカーなどの音響機器だけでなく、映像・照明用ケーブルの持ち込み量が急激に増えました。というのも、近年は映像・照明も含めてデジタル化されましたが、半年でケーブルの種類が変わってくるぐらい頻繁にフォーマットが変わるのです。「TACHIKAWA STAGE GARDEN」の客席部分にはあらかじめ床下や壁の下面に溝が作られているので、ケーブルを簡単に敷設・収納でき、ゴムシートのカバーなどをしなくても安全に引き回すことができます。またドアの周りにもケーブル用の凹みがあって、そのままケーブルを外に逃がす通線口もありますから中継車用ケーブルを外に出すためにドアを開けたままゴムシートで養生、というようなことをしなくて済みます。また施設の既設ケーブルもケーブル溝に入っていますので、仮に今後ケーブルの入れ替えが発生したとしても、壁や床の工事は不要で、簡単に取り替えることができます。また電源に関しても音響用の電源はほかの電源と分離してグランディングが徹底的に施されており、ノイズ対策も万全になっています。

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」の床面はケーブルが収容できる溝が様々な場所に用意されている。ドアにも周囲にケーブルをかける枠がつけられており、外へとケーブルを送る通線口も用意されている

また持ち込みスピーカーに関しても、ステージ上手、下手にそれぞれ持ち込みスピーカー用のトラスが用意されています。既設・持ち込みスピーカーのトラスはいずれも吊り下げたままの状態で内向き外向きに角度が変えられます。いったん吊ったスピーカーの角度を変えられる機構は他では見たことがありませんが、これは非常に便利だと思います。

ステージの両脇には持ち込みスピーカーを吊るトラスが用意されている。トラスはスピーカーを吊った状態で角度の調節が可能

ホールの常設用にNEXO STMのラインアレイスピーカーを設置

ホールの音響設備についておきかせください。「TACHIKAWA STAGE GARDEN」には非常に多くのNEXOスピーカーが使われています。NEXOを導入した理由をお聞かせください。

菊地氏:
「TACHIKAWA STAGE GARDEN」ではシーリングスピーカーなどをのぞけば、ほとんどのスピーカーがNEXOのものです。NEXOは私の会社でも使っていますが高く評価しています。特にここでメインで使用している「STM M28」というスピーカーシステムは、小さい音から大きい音まで、非常に自然でストレートに音を再現してくれます。私自身はクラシックの仕事も多く、「STM M28」はいわゆるクラシックのコンサートでも使用できる、きわめて素直な「クラシッククオリティ」のスピーカーだと思っています。

上手、下手、センターにNEXO「STM M28」で構成されたラインアレイスピーカーが常設されている
上手、下手のスピーカークラスターは12台の「STM M28」で構成され、センタークラスターは8台の「STM M28」で構成されている
さらに2、3階席用にも補助用のNEXOスピーカー(2階アウトフィル「PS15R2」 3階補助用「GEO M10」)が用意されている

ステージの床下には客席に向かってぎっしりとNEXOのSTMのサブベースモジュール「STM S118」が並べられていて驚きました。

菊地氏:
サブウーファーをステージの前にずらりと並べるのは、最近の野外ライブのPAではよく用いられる低音制御技術です。サブウーファーを一列に並べることで、「ディップポイント」がなくなり、どの場所にいても迫力のある重低音を出すことができます。ただしこれはおもに仮設での手法なので、ホールの音響システムとしてサブウーファーを横一線に並べているところは、まだあまりないかもしれません。実際会場を歩いてみると分かるんですけど、迫力ある低音がどこでも均一に聞こえて、とてもうまくいったと思っています。
このようにステージの真下にサブウーファー置くと、ステージ自体が超低域の周波数で振動する「ランブリング現象」が起こりがちですし、サウンドに濁りが発生することもあります。そうした悪影響を排除するために今回はNEXOの標準の機能として搭載されている「キャンセリング機能」を使いました。キャンセリングについて説明すると、お客さまの側に向いているサブウーファーは16台です。そしてステージ下でお客さまの反対側、つまり舞台側を向いているサブウーファーが8台あります。この8台はお客さまに聴かせる音を出しているのではなく、ステージ上の振動を消すために逆相の音を出すんです。それによってランブリング現象を避けています。

ステージ下にサブベースモジュール「STM S118」が計24台設置されているが、うち8台は後ろ向きに設置されキャンセリング用に使用されており、また「STM S118」の上にはリップフィルとして「ID24」が合計8台設置されている。
NEXOスピーカーを駆動するためにNEXOパワードTDコントローラー「NXAMP4x4MK2」が導入された

ガーデンステージ用にもNEXOスピーカーを常設

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は室内だけでなく、屋外にはガーデンステージとグリーンヒル、パブリックスクエア、そして公園があるわけですが、その音響はどのようにされているのでしょうか。

菊地氏:
ガーデンステージ、グリーンヒルから公園に向けて公園側の劇場の壁面にNEXOのラインアレイをセットしてあります。またガーデンステージ使用時にはスライディングウォールの開口部の上手と下手にもそれぞれNEXO「PS10R2」と「LS600」のスピーカーシステムが設置できるようにしています。またグリーンヒルの両側に全天候に対応する常設のポールスピーカー6台常設しています。

藤田氏:
ホールの中であれば、直接音に壁や天井の響きが加わりますが、屋外では壁面などからの響きがなくなってしまうんです。そこでガーデンステージではそこに空から響いてくる音を加えています。それがグリーンヒルの両側ある6台のスピーカーで、これはホールでいえば反響板と同じ働きをしています。

劇場壁面にガーデンステージ用に常設されているNEXOスピーカー「STM M28」および「MSUB15」
ガーデンステージ使用の際に設置する仮設用のNEXOスピーカー「PS10R2」および「LS600」
全天候型のボックスに収納され、グリーンヒルの左右6カ所に常設されているNEXOスピーカー「GEOS1230」

トラブルが少なくバックアップが容易なヤマハデジタルミキシングコンソール「CLシリーズ」、「QLシリーズ」を採用

音響調整卓としてデジタルミキシングコンソールの「CLシリーズ」や「QLシリーズ」を導入いただきました。これらの選定理由をおしえてください。

菊地氏:
ミキサーの選定条件としては、まずは最先端のデジタルミキサーでDanteに対応しているということ。それからバックアップ体制です。たとえば朝9時に問題があるとわかったとします。アナログミキサーであれば問題箇所のフェーダーを入れ替えれば良かったわけですが、今はミキサーごと取り替えないと対処できません。その時にバックアップをどうするか。そこを一番に考えました。ヤマハのデジタルミキサーについては、ずっと会社でも使ってきましたが、経験上一番トラブルが少ないですし、万が一入れ替えることになっても普及率が高いため代替機が容易に準備できるというメリットがあります。「TACHIKAWA STAGE GARDEN」のホール内4台すべてのミキサーをヤマハで揃えたのも、いざとなればすぐに入れ替えられる。このようなバックアップ体制が容易にとれるのは、デファクトスタンダードとして普及しているヤマハミキサーならではだと思います。

FOH用に設置されているデジタルミキシングコンソール「CL5」
ステージモニター用に舞台上手に用意されたデジタルミキシングコンソール「QL5」
舞台下手に設置されているデジタルミキシングコンソール「QL1」
舞台下手に設置されているデジタルミキシングコンソール「CL1」

シーリングスピーカーには高品位な再生音を実現した「VXCシリーズ」を採用

館内でのシーリングスピーカーとして「VXCシリーズ」を導入いただきました。シーリングスピーカーでもヤマハ製品を選ばれた理由を教えていただけますか。

菊地氏:
ホールのスピーカーは音質にこだわりますが、楽屋やホワイエのスピーカーの音質って意外に軽視されがちです。しかし、実は楽屋で出番を待っているアーティスト、演者さんたちには今現在ホールで起きていることを、しっかりとした音で聴きたいと思っている方がとても多いと思います。特に生の響きを大切にする歌舞伎や日本舞踊といった古典芸能、クラシック音楽の方々は、楽屋での再生音にできるだけ生音に近い音色を望まれます。そのような声に応えて、高音質でしかも原音に近いナチュラルなサウンドが再生できるシーリングスピーカーということで、ヤマハのVXCシリーズを採用しました。またホワイエやロビーのシーリングスピーカーに関しても、アナウンスを流すだけではなく、公演中はホールの音も再生します。その音質もやはり重要だと考えました。これらのスピーカーはDante対応のパワーアンプ「XMV-8280-D」、「XMV-4280-D」でドライブされています。

楽屋、ホワイエ、ロビーなどにはシーリングスピーカーVXCシリーズを導入。内装に応じてホワイトモデルとブラックモデルが選択されている
シーリングスピーカーなどを駆動するためにアンプリファイアー「XMV4280-D」、「XMV8280-D」を導入

立川を「音楽が好きになる街」にしたい

残念なことにコロナ禍で4月から連続で予定されていたオープニングの「グランドオープニングシリーズ」がキャンセルになってしまいました。

藤田氏:
辻井伸行、加古隆、レ・フレールというピアニストの競演から、八代亜紀さんのステージ、オーケストラによる第九、さらにロックバンドやアニソンなど、さまざまなジャンルのステージを用意していたのですが、残念ながらコロナ禍により中止になりました。その一方でコロナ時代の今だからこそ、お問い合わせが増えている面もあります。感染防止のために「三密」を避けるようにと言われていますが、換気に関して言うと、「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は会場が屋外に向かって開くという、非常に大きなアドバンテージがあります。普通のホールであれば、密閉を避けるためにできることはコンサートの休憩中にドアをあけて換気するぐらいですが、「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は最初から後ろをドーンと開けたままコンサートができます。これは大きいです。

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は、演奏される音楽ジャンルがクラシック、ロック、ジャズ、演歌、アニソンなど幅広さも特長ですね。

藤田氏:
「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は、「音楽を好きになる街」を目指しているんです。もともと音楽が好きな人が集まるのではなく、音楽にさほど関心がなかった人が「あ、音楽っていいね」「心が豊かになるね」と思ってくれるような街です。そのためには音楽との接触チャンスをできるだけたくさん作っていきたい。ホールが公園側に向かって開くのもそのためですし、街区のスピーカーから音楽が流せるようにしたのもそのためです。またホールの屋上に上がると、ホールの中がのぞける窓があるんですよ。これも散歩に来た方に「ホールでは何をやっているんだろう」という興味を持ってもらうことが必要だと思って作ったものです。

カスケードを登り切ってホール屋上にあがるとホール内がのぞける窓がある

さらに「TACHIKAWA STAGE GARDEN」のロビーはいつでも人が入れるように開放していて、そこではフリーコンサートをやっています。ロビーの階段の上でピアノとバイオリンとチェロ、フルートぐらいの小規模な編成で演奏するのですが、これが非常にいい響きなんです。自分たちでも驚きました。

音楽と触れ合う機会が増え、立川に音楽ファンが増えそうですね。

藤田氏:
さらに、種まきとして、立川の小中学生を中心に「TACHIKAWA STAGE GARDEN」のバックステージツアーをやろうと思っています。バックステージって普通は来られないし、できれば子どもたちをここのステージに上げてあげたいんですよ。ステージにいるときにスライディングウォールが開いて空が見えるのを体験してもらったり、キャットウォークも歩かせてあげたい。そんな体験が印象に残れば、何人かの子はここのファンになってくれるかもしれないし、いつかステージに上がってみたいと思うかもしれません。またステージに上がらなくても、音響や照明、機構、舞台監督などの制作側としても関わって、ホールや劇場で働いてみたい、そんな思いを育みたいと思っています。

「TACHIKAWA STAGE GARDEN」はまだオープンしたばかりですが、今後はどのようなホールにしていきたいとお考えでしょうか。

藤田氏:
この「TACHIKAWA STAGE GARDEN」は、多目的ではなく多機能であり、ユーザーオリエンテッドなホールだと思っています。2.5次元ミュージカルなどで顕著ですが、今、ホールを使うユーザーの方々のニーズが急速に多様化しているにもかかわらず、劇場側ではそうした新しいニーズに応えられていないのが実情です。いま「TACHIKAWA STAGE GARDEN」では歌舞伎の花道を外までずっといくようにできないか、というご相談も来ていますし、天井のキャットウォークが広くて何でも吊れますので、天井にスピーカーをたくさん設置して「イマーシブサウンド」をやるといったニーズにも対応できます。ユーザーの方々の様々なニーズにお応えできるホールでありたいと思っています。

さらに言えばユーチューバーの方たちとのコラボもやりたいんですよね。先ほどロビーを開放している話をしましたが、ロビーには誰でも自由に弾けるロビーピアノを置きました。このピアノをユーチューバーのピアニストに弾いてもらってネットで中継してもいいと思っています。ネットを使って新しい音楽表現をしている音楽家がたくさんいますから、彼らを呼んできてどんどんコラボするということにも積極的に取り組んでいこうと思います。

今までのホールにはない「TACHIKAWA STAGE GARDEN」らしい取り組み、楽しみにしています。本日は忙しい中ありがとうございました。

取材にご協力いただいた「TACHIKAWA STAGE GARDEN」の音響スタッフの方々(左から細川氏、菊地氏、佐藤氏、平下氏)

TACHIKAWA STAGE GARDEN
https://www.t-sg.jp

株式会社立飛ホールディングス
https://www.tachihi.co.jp

製品情報
デジタルミキシングコンソール CL5CL1QL5QL1
I/Oラック Rio3224-D2Rio1608-D2
スピーカーシステム VXCシリーズ
パワーアンプリファイアー XMV8280-DXMV4280-D
NEXOラインアレイタイプスピーカーシステム STM M28 STM S118 GEO M10 GEO S1230
NEXOスピーカーシステム PS15-R2 PS10-R2 ID24
NEXサブウーファー LS600
NEXOパワードTDコントローラー NXAMP4x4MK2