【導入事例】南海放送株式会社 様 / 放送局 / 愛媛

Japan/Ehime May.2021

南海放送株式会社は昭和28年に愛媛初の民間放送局としてラジオ放送を開始して以来、愛媛県エリアで唯一、ラジオ・テレビ兼営で放送事業を展開する民間放送局として地域の方々に親しまれています。

このたび南海放送株式会社のラジオ部門にデジタルミキシングコンソール「QLシリーズ」、シグナルプロセッサー「MRX7-D」、カスタムコントロールパネルソフトウェア「ProVisionaireシリーズ」などが導入されました。選定理由や使い勝手などについて、南海放送株式会社 取締役 執行役員技術局長 乗松義弘氏、機材選定やシステム構築に携わられた株式会社松山ステージサービス 取締役 勝間田 雅幸氏にお話しをうかがいました。


ラジオ局館内の音声をDanteでオーディオネットワーク化

このたび南海放送株式会社でデジタルミキサー「QLシリーズ」などを導入いただきました。その趣旨について教えていただけますか。

乗松氏:
以前の話になりますが、2006年に本社をここに移転したとき本館全館のリニューアルを行い、ラジオのスタジオも全て更新しました。その時ヤマハのデジタルミキサーのDMシリーズを導入し、全く問題なく運用してきました。それで今回の機材更新にあたりヤマハの信頼性を評価し、「QLシリーズ」を採用することになりました。

南海放送株式会社 取締役 執行役員技術局長 乗松義弘氏

それはヤマハのミキサーの信頼性ということでしょうか。

乗松氏:
今申し上げたのは信頼性ですが、更新の決め手はDanteでした。今回は局内の音声システムをDanteで新たに構築するという目標を持っていましたのでDanteへの対応と実績も含めてヤマハのシステムを採用しました。

局内はDanteによるオーディオネットワークを組んだということですか。

乗松氏:
はい。今回はスタジオ間とマスターを含めた全館のネットワークでDanteを使いました。

Danteを選んだのはどうしてですか。

乗松氏:
今、放送機器は音声のみならず映像も含めてIP化が進んでいます。我々もこれから音声のネットワーク化をどうするかという検討を重ねた結果、様々な規格がありますが、今後Danteが業界標準になるであろうと考えられること、それとネットワークの設定が、ほかの規格とくらべて比較的シンプルであることがDanteを採用した理由でした。

システムを手掛けられた勝間田さんはDanteについてどうお考えですか。

勝間田氏:
弊社は設備の機器導入の提案や調整、保守業務もしていますが、メイン業務としては舞台PA、イベントなどを手掛けており、そこでは日常的にDanteを扱っていますので我々としてはまったく抵抗はありませんでした。

株式会社松山ステージサービス 取締役 勝間田 雅幸氏

スタジオのワンマン化を実現するため全スタジオに「QL1」を導入

機材についておうかがいします。まず「QLシリーズ」はどのように使われているのでしょうか。

乗松氏:
弊社にはラジオのスタジオが4つありますが、すべてのスタジオに「QL1」を導入しています。さらに予備として「QL1」を1台、特番用に「QL5」を1台導入しました。

すべてのスタジオに「QL1」を導入した理由を教えてください。

乗松氏:
現在当社の取り組みとして、ラジオスタジオの省力化、ワンマン化を推し進めています。これはアナウンサーがディレクター業務を兼務しながらワンマンでアナウンスを行うというものです。当然技術者もつきませんので、アナウンサーは自ら機材の操作も行う必要があります。そのために今回はスタジオのシステムを統一しました。ミキシングコンソールは「QL1」に統一し、どのスタジオでも同じ操作で使えるようにしました。そうすればアナウンサーはスタジオごとにいろいろ操作を覚えなくていいわけです。

4つのスタジオすべてに「QL1」が導入された

勝間田氏:
どのスタジオの「QL1」も基本的なチャンネルの並びなどは可能な限り統一しています。またアナウンサーが触る必要のないコントローラーの部分は機能的制限をかけたり、アクリル板でカバーすることで誤操作を防いでいます。

「QL1」を調整する勝間田氏 アナウンサーが触れる必要のないコントローラーはアクリル板でカバーされている

シグナルプロセッサー「MRX7-D」はどのように使われているのでしょうか。

乗松氏:
ラジオのスタジオには他拠点からの音声など多数の入力ソースがありますので、スイッチャーとして「QL1」に送る音声の切り替えを行っています。音声回線はDanteですべて一度「MRX7-D」に集約する形で活用しています。

音響ラックに設置された「MRX7-D」(中段)。上段はDante対応のI/Oラック「Rio1608-D2」
音響ラックにマウントされたDante対応のI/Oラック「Rio3224-D2」

勝間田氏:
それに加えて「MRX7-D」には予備卓としての役割もあります。「MRX7-D」はマトリクスミキサーなので、オプションユニットの外付けフェーダーを使えば「QL1」と同じように操作ができます。普段は引っ込めてあるこの外付けフェーダーパネルを出せば、「QL1」と同じチャンネル並びに設定してあり、すぐに「QL1」と同様に音声の送出が行えます。

乗松氏:
放送用のスタジオでは放送事故にならないようバックアップのシステムは不可欠です。その手段をどうやってコストミニマムに抑えるかを考えたとき、「MRX7-D」は最適なモデルでした。

カスタムコントロールパネルソフトウェア「ProVisionaireシリーズ」はどのように使っていますか。

乗松氏:
各スタジオの音声、イベントホールや別施設からの音声などのソースをすべてDante化し「MRX7-D」に集約したわけですが、ではその音声をどうやって切り換えるのか。それを検討した結果、タッチパネルによるシンプルな操作で瞬時に回線が切り換えられる「ProVisionairesシリーズ」の導入に至りました。

Dante化された膨大な回線は「ProVisionaire Control」によって画面にタッチするだけで切り換えが可能

今後はサテライトスタジオなどともDanteでネットワーク化を

勝間田さん、今回Danteで放送局のシステム構築を行っていかがだったでしょうか。

勝間田氏:
乗松さんより当初から「低コストでシンプルなシステムを」というコンセプトを伺っておりました。Danteは柔軟で多機能な構築が可能なので最適でした。使った方からも「スッキリしていて、分かりやすいね」というお言葉もいただきました。
「QL1」に関しては他の製品と比べるとシンプルで音響初心者にも抵抗感が少なく、簡単に使えるミキサーなので良かったと思います。以前はスペースの都合で資料などが卓の上によく置かれていましたが、コンパクトな「QL1」になってフェーダー操作ミスの心配もなく、台本や資料が近くに置けて作業しやすくなりました。

乗松さん、今後南海放送として今後やってきたいことがあれば教えてください。

乗松氏:
今回全館のネットワークでDanteを使ったんですが、ラジオで最も大切なラジオマスターというラジオの番組を自動送出するシステムがまだDante化できていません。ここをDanteネットワークで渡すことができれば、完全なシステムとして確立できますから、まずはそれを目指したいと思っています。

乗松氏:
さらに言えば、将来的にはサテライトスタジオや局外のスタジオ全部がIPネットワークでつながるシステムを構築したいと考えています。今は現場でミキシングされた音声が局に送られてきますが、いずれは現地に音声インターフェースのみがあり、スタジオにネットワーク経由で送出してミキシングは局で行うといったことも実現したいと思います。映像に関してはデータ量が重くて途中で切れるのではないかという先入観があるので、なかなかIPネットワークの方向に進みませんが、音声はその点、先に進めやすいのではないかと思っています。

本日はご多忙の中、ありがとうございました。

南海放送株式会社
https://www.rnb.co.jp

株式会社 松山ステージサービス
http://www.mss.cc

製品情報

デジタルミキシングコンソール QLシリーズ
シグナルプロセッサー MRX7-D
カスタムコントロールパネルソフトウェア ProVisionaireシリーズ