【導入インタビュー】株式会社アーティカル

Japan/Kanagawa Jun.2022

ヘッドオフィスを構える大阪と神奈川・川崎ブランチを拠点に活動する株式会社アーティカル(以下アーティカル)。スタッフ18名を擁するSRカンパニーとして、ライブSRやライブ配信、設備音響設計などを展開しています。

このたびアーティカルにI/Oラック「RUio16-D」とプラグインホストソフトウェア「VST Rack Pro」が導入されました。導入理由や使用感などについて、アーティカル 代表取締役 濵田 正一 氏とサウンドエンジニア 石附 和哉 氏、八城 治幸 氏に同社川崎ブランチでお話をうかがいました。


アナログ2chをDante変換できるI/Oが以前から欲しかった

「RUio16-D」はプレスリリースをご覧になってすぐに購入を決定されたそうですね。

八城氏:
VSTプラグインが使えるDante・USB対応のI/Oラックということで、これはぜひとも使ってみたい! 今すぐ試してみたい!と思い、濵田に頼み込みました。

石附氏:
ヤマハのPA機器は長年使っているので厚い信頼を置いていますが、「RUio16-D」はちょっと異色ですよね。さらに「VST Rack Pro」のようなサードパーティが手がけそうな製品を出してくるとは予想もしていませんでした。それだけに「これは面白そう!」と強く思いましたし、スペックを読み込むうちに「これはいろいろ用途が考えられるぞ!」とエンジニア魂をかきたてられていきました。

濱田氏:
こういうものが出るとは思っていませんでしたが、以前からアナログ2chをDante変換できるI/Oがあるといいなと思っていたんです。それがこのサイズで実現されて、「VST Rack Pro」も使えて、これは便利に使えそうだと思いましたね。

株式会社アーティカル 代表取締役 濵田 正一 氏

持ち運びしやすくて、いろんな用途に使えるから
アイデアがどんどん広がっていく

「RUio16-D」はハードウェアとして具体的にどのあたりが便利で、どのような使い方ができそうでしょうか。

八城氏:
アナログ2chをもらったり出したりする場面ではどこでも使えますよね。たとえば、映像、DJ、タタキ(ポン出し)などのセクションが現場のあちこちに散らばっている場合、各ブースに1台ずつ配置してDanteでつなぐだけで、どこからでも操作ができ、しかもアナログ接続のような信号劣化もありません。

株式会社アーティカル サウンドエンジニア 八城 治幸 氏

石附氏:
たとえばスタジオでのリハーサル時にミキサーから離れた場所でリハーサル音源を録音するようなケースで重宝しますね。これまではミキサーとレコーダーの接続にセンドとプレイバックで計4ch使っていて、場合によってはヘッドホンアンプも用意していました。「RUio16-D」なら、そこに1台置くだけで録音にも、プレイバックにも、ヘッドホンも使えます。

株式会社アーティカル サウンドエンジニア 石附 和哉 氏

濱田氏:
ヘッドホンアンプが装備されているのがとても便利なので、「RUio16-D」をキューボックスとして使えるのではないかと思いました。ステージ上に数多く置いても場所をとらないので各セクションやバンドメンバーに1台ずつ配置できるし、DanteでつなげばLANケーブル1本でモニターを送ることも、信号をもらうこともできて、ヘッドホンでモニターもできます。ヘッドホン出力にはボリュームもありますから、キューボックスとしても十分使用できます。ハードウェアとしての「RUio16-D」の一番の魅力はそこなんじゃないかと思います。

石附氏:
ヘッドホンアンプとしても十分なクオリティを備えていますよね。「RUio16-D」のウリの一つに〝高品位なマイクプリアンプを搭載していて音響測定用途にも最適〟というのが挙げられていますが、ヘッドホンもマイクも、わずか5Vで動作しているとは思えないくらい音質がよくて、SNもすごくいいんですよ。この性能を活かせそうなのがマイクチェックです。マイクチェックは回線がつながる前やミキサーのセッティング前に済ませておきたいケースが多々あって、ファンタム電源を確保するのが大変だったりするので、「RUio16-D」のアナログ入力(XLR)が役に立ってくれそうです。

八城氏:
各コネクターがしっかりロックできる仕様になっているのは素晴らしいと思います。コネクターが抜けないようにジョイント部分にテープを巻くのは現場でよくあることですが、XLRはもちろん、etherCONやUSBまでもがロック機構が搭載されているのは、開発の方が現場をよく知っている証だと感じました。

石附氏:
トップパネルの回路図もいいです。たいていのことはこの回路図を見ればすぐにわかります。

八城氏:
画期的だなと思ったのは、フロントパネルに取り付けられたBYPASS USBスイッチ。PCの「VST Rack Pro」にトラブルが発生するとUSB音声の伝送が勝手にバイパスされて、「RUio16-D」とPCのUSB接続間の音声が止まるような事態を防いでくれます。PCは生きていてソフトウェアだけがダウンしたときも自動でバイパスする設定ができるし、何なら手動でも止められるというのは、現場のことを本当によく考えた結果だと思います。

ワンプッシュでバイパスが可能なBYPASS USBスイッチ

使い慣れた卓でVSTプラグインを使えるようになるし、
どこにでも同じ設定を持ち回れるのはありがたい

「RUio16-D」は付属のプラグインホストソフトウェア「VST Rack Pro」でお好みのプラグイン環境を構築できますが、その点はどのように評価されていますか。

濱田氏:
プラグインが実装されていない古いモデルのデジタルミキシングコンソールでも、Mini-YGDAIスロットを装備していればDanteカード「Dante-MY16-AUD2」を装着することで「RUio16-D」と接続でき、プラグインホストソフトウェア「VST Rack Pro」が使えるようになります。使い慣れた卓でヤマハとスタインバーグのプラグインを使えるようになるのはとてもありがたいです。昨今は弊社においてもライブ配信の比重が高くなっていて、ライブハウスに常設の「LS9」や「M7CL」を配信マスターに使うことも少なくありません。そんなときに「VST Rack Pro」が使えるのは助かります。

2021年に導入いただいた「RIVAGE PM5」には、50種類を超えるエフェクターを搭載していますが、プラグインについては日ごろどのような使い方をされているのでしょうか。

濱田氏:
使うのはダイナミクス系が多いです。ボーカルにはコンプレッサーを二重にかけたいし、「DeEsser」も使いたい。「CL5」、「QL5」、「QL1」では「VST Rack Pro」ではなく「Premium Rack」になりますが、コンプを二重にかけるというのを標準としてやっています。

また配信のマスター出力を処理するときは、「VST Rack Pro」に搭載されている「Maximizer」や「MultibandCompressor」などSteinbergのエフェクトを使い始めています。内蔵のエフェクターではできないことをプラグインでまかなうわけですが、もう一つの利点として、PCにウィンドウを開いておくことで、各エフェクトのパラメーターを常時監視できるということも大きいです。

これはいい!と思うプラグインがあったら教えていただけますか。

石附氏:
僕は「Vintage Compressor」ですね。モデリング元のコンプレッサーが大好きなので。それに、信号のアタック部分を保持するPunchボタンとかプログラムに基づいてパラメーターをコントロールするAuto Releaseといった他にない機能があるので、どういう挙動をするのか試してみたいと思っています。

「Vintage Compressor」

濱田氏:
私はダイナミクス系の「Tube Compressor」です。High-Lowが切り替えられて、アタックやリリース、それにレシオまで切り替えられて、ドライブ感というか倍音の質感も変えられるというものです。

先日、配信マスタリングの現場に「RUio16-D」と「VST Rack Pro」を持ち込んで「Tube Compressor」などいくつかのプラグインを試しましたが、配信マスタリングで使用した感触は、かなり良かったです。その時に現場で使用したプラグインを紹介しますと、「Tube Compressor」はCompの質、そしてパラメーターのCharacterとDriveがかなり良く、「MultibandEnvelopeShaper」は、全帯域でアタック感を簡単に出せる不思議な感覚があって面白かったです。もっと使いこんでみたいと思いました。「SuperVision」は1アプリでメーターもアナライザーもラウドネスも表示できて、超便利!「Maximizer」は音質にほぼ影響なくラウドネスが出せていい感じでした。

「Tube Compressor」
5月某日に行われた配信マスタリングのセッティング(写真提供: アーティカル/濱田 正一 氏)

現場で困ったり悩んだときの解決策の一つに

今後「RUio16-D」を使ってやってみたいことはありますか。

八城氏:
プレスリリースで「RUio16-D」を知った時から、新しいことを思いつきそうなアイテムだなと思っていました。特定の用途で使うだけでなく、現場で困ったときに役立ってくれる便利なギアで、不測の事態に備えて常に持ち歩くべきだと思っています。

石附氏:
今後もいろいろな現場の中でどんどん使いこなしのアイデアが出てきて、現場で悩んだ時の解決策の一つになっていく存在だと思います。「VST Rack Pro」もこれからいろいろ試してみて、PAやライブ配信に活用できるプラグインを積極的に取り入れていきたいと思っています。

濱田氏:
とにかくコンパクトでシンプルな製品なのに、意外なほど何にでも便利に使えて、用途の幅がすごく広いですよね。アイデアをどんどん広げていけることが「RUio16-D」と「VST Rack Pro」の一番の魅力かもしれないですね。

お忙しいところいろいろなお話をお聞かせいただき、どうもありがとうございました。

株式会社artical(アーティカル)
http://artical-inc.co.jp

製品情報

I/Oラック RUio16-D
プラグインホストソフトウェア VST Rack Pro