【導入事例】なら100年会館 様 / 多目的ホール / 奈良
Japan/Nara Nov.2022
一本の大木をくりぬいて作った古代船を思わせるデザインがユニークな「なら100年会館」は、奈良市制100周年を記念して1999年2月に建設された多目的ホールですが、今や奈良県を代表する文化発信の拠点となっています。
2021年1月、その「なら100年会館」の大ホールにデジタルミキシングシステム「RIVAGE PM5」、中ホールにデジタルミキシングコンソール「CL3」が導入されました。導入までの経緯や導入後の運用について、一般財団法人 奈良市総合財団 なら100年会館 事業係係長 今出 典克 氏、同 音響担当の金沢 祐樹 氏、同 𠮷田 尚樹 氏にうかがいました。
「文化の船」の意匠のもと、奈良県最大の客席数を誇るホール
「なら100年会館」について、ご紹介いただけますか。
今出氏:
なら100年会館は開館して約24年、奈良市民や近隣の方々から「なら100」と呼ばれて親しまれている多目的ホールです。特徴的な外観は建築家 磯崎 新 氏の「文化の船」という意匠によるもので、奈良における文化拠点の役割を果たしています。収容人数は奈良県内最大の客席数を誇っており、コンサートや国際会議、学会等、多目的な利用に適している大ホール(収容人員1,476人)、全面ガラス張りでクラシックを中心とする演奏会に適している中ホール(収容人員434人)、会議・各種展示会等に適している小ホール(収容人員約100人)を備えています。
JR奈良駅至近で、駅から会館まで直結の歩道も用意されていて、アクセスは抜群ですね。
今出氏:
ありがとうございます。JR奈良駅は大阪天王寺駅から約45分、京都駅からも1時間弱という好立地で、奈良県で大きな催し物がある時は、この会館をよく使っていただいています。
エントランスホール等の改修を機に
音響の更新を行い「RIVAGE PM5」を導入
なら100年会館の大ホールに「RIVAGE PM5」を導入された理由を教えてください。
今出氏:
2020年にエントランスホール等の改修工事で半年ほど休館することになりました。それ以前から奈良市には音響、照明、舞台機構の更新をお願いしていたのですが、「どうせ休館するならこの機会にホールの中も見直そう」ということになり、その時一番状態が悪かった音響機器の更新を行いました。
というのも、当館は大ホール、小ホールともに外観同様、ちょっと特殊な形状をしていたこともあって、大ホールの2階席に向けたスピーカーが設置されていませんでした。ですから演劇や落語などMCが伴うイベントでは、マイクの音声が聞き取り辛かったんです。
また音響システムそのものも古かったため、よく故障しましたし、アナログシステムでしたからリモート操作などもできず、利用者の方にご要望をいただいても「それはシステム的にちょっと無理なんです」とお断りせざるを得ないことが多々ありました。そんなこともありましたので、この改修を機にさまざまな要望を市に出し大ホールの調整卓として「RIVAGE PM5」の導入に至りました。
具体的には「RIVAGE PM5」のどんな点を評価して選定していただいたのでしょうか。
金沢氏:
第1は操作性です。大ホールのミキサーは乗り込みの音響オペレーターの方が使うことも多いので、扱いやすいミキサーがベストだと考えました。ヤマハのデジタルミキサーは業界のスタンダードなので、音響オペレーターであれば「RIVAGE PM5」も直感的に操作できるだろうと考えました。
𠮷田氏:
それからアウトの系統数が多いことも大きかったです。出力数が多いほど客席ブロックごとにスピーカーから出す音を細かな部分まで調整できますし、個別のスピーカー単位でも音作りを追い込んでいけます。
液晶画面、iPadリモート機能などの卓越した操作性
導入されて2年ほどですが、「RIVAGE PM5」を実際に運用してみての感想はいかがでしょうか。
金沢氏:
使い勝手はとてもいいですね。僕はずっと大ホールの音響を担当していますが、大ホールの先代のミキサーがヤマハではなかったので、僕自身はヤマハのミキサーをあまり使ってきませんでした。「RIVAGE PM5」で初めてヤマハミキサーを本格的に使うことになりましたがとても触りやすくて驚きました。特に3つの液晶画面へのBayアサインが自由に設定できる点が便利です。
以前のミキサーはリモートができなかったそうですが「RIVAGE PM5」ではiPadリモート機能をお使いですか。
金沢氏:
使っています。今さら「リモートができる!」と驚いているのは恥ずかしいですが、実際のところiPad用アプリ「RIVAGE PM StageMix」はとても便利です(笑)。舞台上で実聴しながら手元で音量や設定をコントロールできるだけでなく、たとえば「3階のスピーカーだけ使わせてほしい」と言われたら、3階席にいっしょに来てもらって、実際に音を聴きながらiPadリモートで設定を変更し「これでどうですか?」とその場で変化を確認しながら緻密な調整が行えます。その時の出力状況をiPadのアプリ画面で視覚的に共有できるのも便利です。
𠮷田氏:
僕の場合は主に中ホールで「CL3」を使うことが多いのですが、送りのレベルは数値で確認しています。その点「RIVAGE PM5」は送りのレベルもゲージで表示されるところがいいですね。パッと見で「ここ今ちゃんと送れてる」「オフにしたから消えた」といった状況が分かりやすいと思いました。
以前はアナログシステムだったそうですが、オーディオネットワークを導入して便利になった点はありますか。
今出氏:
オーディオネットワークはDanteとTWINLANeの両方に対応しています。アナログシステムの時代は「これがこう接続できたらいいんですけどね」って言いながら運用していたんですけど、今は簡単にパッチ変更できるのでほぼ「できない」ということがなくなりました。
金沢氏:
そうなんです。だから逆に、言い訳ができません。デジタルの導入でできることが増えたので、利用する方にいろんなリクエストをもらいますが「それはできないんです」とは言えなくなりました(笑)。
今後「RIVAGE PM5」を使ってやってみたいことがあれば教えてください。
金沢氏:
今までは「ここには音が届かないんですよ」とお詫びしなくてはならないことがあったんですが、今は2階席のスピーカーも貸してくださいと要望されるようになりました。特にプロックごとをカバーするスピーカーがついたことで、音が緻密に設定できるようになったので、さらに設定を詰めてよりいい音で聴いていただけると思います。それから、ダブルキャストの演劇公演などで便利な「RIVAGE PM5」のシアターモードも使ってみたいです。
今出氏:
音響機器の更新でミキサーが「RIVAGE PM5」になりスピーカーも変わって、ホールのどの席でも音がきちんとクリアに聴こえるようになりました。先日も音に厳しいことで有名なアーティストが公演をされて「変わった形状のホールなのに、音はいいよね」と褒めてくださいました。たいへん辛口な方だったのでビクビクしていましたが、スタッフみんなで「よかったな、よかったな」と喜びました(笑)。
また当館はこれまでは演劇系の催しものには音響的に厳しいと言われてきましたが、今は演劇でも、落語でも全く問題なく、むしろ高いクオリティでの公演が可能だと思います。ですからぜひお芝居や劇団のイベントでもどんどん利用していただきたいと思います。というのも、今まで奈良は大阪や京都でソールドアウトした演劇を上演してもお客さんが入らないと言われてきたんです。音響システムを刷新した「なら100年会館」は、今後演劇や落語でもどんどん利用いただき、評判が上がり、お客様が増えることで奈良に対するイメージも変わるのではないかと思っています。
なら100年会館でのお芝居、ぜひ見てみたいです。本日はお忙しい中ありがとうございました。
製品情報
デジタルミキシングシステム | RIVAGE PMシリーズ、CLシリーズ |