【導入事例】株式会社文化放送 様 / ラジオ放送局 / 東京都港区
Japan/Tokyo May 2024
株式会社文化放送は、関東エリア1都6県をカバーするラジオ放送局として、1956年の設立以来、数々の名番組を放送してきました。
このたび文化放送にデジタルミキシングコンソール「DM7 Compact」が中継放送用機器として導入されました。その導入理由や使い勝手などについて文化放送 総務局 技術システム部部長 上原 裕司 氏にお話をうかがいました。
最初に上原さんの文化放送でのご担当を教えてください。
上原氏:
技術システム部という部署で音響を担当しています。レギュラーとしては「楽器楽園~ガキパラ~ for all music-lovers」、さらに箱根駅伝や野球、ボートレースなどのスポーツ中継も担当しています。とはいえ担当分野は放送機器のみならず、電気で動くものを全体的に管理しています。時には送信所でアンテナ周りの点検をすることもあります(笑)。
どんなきっかけで音響の仕事を目指したのですか。
上原氏:
小さいころから音楽が好きで学生時代は軽音楽部で演奏もしていました。街中や公会堂でライブを行う際、自分たちで機材を集めてPAのようなことをやって「面白いな」と思ったのが音響に興味を持ったきっかけです。その後、都内のレコーディングスタジオでアルバイトをし、最初はテレビCMを作る会社に就職しました。しかしCMは映像が優位だったので、もっと音に向き合いたいと思っていたところ、文化放送が技術職の募集をしていたので応募しました。今年で入社してちょうど20年になります。
これまで、ヤマハのデジタルミキサー製品はどんなものをお使いでしたか。
上原氏:
デジタルミキサーとしては「01V」が最初です。そこから「02R」「DM1000」「QL1」「QL5」「CL3」と、ずっとヤマハのデジタルミキサーを使ってきました。
ヤマハのデジタルミキサーを使い続けている理由を教えてください。
上原氏:
操作性が共通している点が大きいです。「01V」を触れば「DM1000」も似たように操作でき、「DM1000」を触れば「02R」も同様です。基本的な操作性が一貫しているので一度ヤマハ製品の操作を覚えれば、それ以降の製品もすぐに使いこなせる。それがヤマハミキサーを使い続ける理由です。
このたび「DM7 Compact」の導入を決めた理由を教えてください。
上原氏:
一番の理由はサイズです。19インチラックの幅に収まる12または16フェーダーというサイズがラジオ局にちょうどいいんです。たとえば「楽器楽園~ガキパラ~ for all music-lovers」を収録しているスタジオの場合、セッティングや撤収は全て一人で行います。ですから一人で持ち上げられることはとても重要です。「DM7 Compact」は、これまで使っていた「QL1」とサイズ感がさほど変わらずに機能面がアップグレードされていたので迷わず導入を決めました。
実際に放送用途で「DM7 Compact」を運用してみた感想はいかがですか。
上原氏:
音質は非常にナチュラルです。ミキサーでの色付けが無いので、放送用途として安心して使えます。それに放送中継などの過酷な現場でもノイズなどに悩まされることがありませんし動作も安定しています。音質面でも「DM7 Compact」は96kHzのサンプリングレートに対応しているので、透明感のあるサウンドでミックスできるようになりました。
機能面はいかがでしょうか。
上原氏:
「QL1」とほとんど同じサイズなのにできることがかなり増えました。これ1台で放送中継の音声周りは全て事足ります。たとえば放送本線のミックスを行いながら豊富な入出力を利用してマトリクスを組み、Dante経由でパラの音声をNuendoで収録しています。
またQLシリーズから愛用している機能「Dan Dugan オートマチックミキサー」も、さらにスピーディーに設定できるようになりました。しかもDSPパワーに余裕があるのでGEQやエフェクトインサート数が増えて助かります。
それと嬉しかったのが、チャンネル名に日本語が使えるようになったことです。生放送で人名を日本語で書き込めるので直感的に操作できます。
さらに放送用途での大きなメリットは電源の二重化です。生放送では電源がトラブったらその放送すべてが終わってしまいますから電源は生命線です。これまでもUPS(無停電電源装置)などで瞬時停電などの対策はしてきましたが「DM7 Compact」は本体の電源が二重化されたので精神衛生上だいぶラクになりました。
操作性や使い勝手で気づいた点はありますか。
上原氏:
最初は物理エンコーダーが少ないことに不安を感じましたが実際に使ってみると「Touch and Turn」で直感的に操作できました。今はこのほうが逆に便利だと思います。
中継用とは別にインターネット配信用のスタジオもヤマハの「DM1000」から「DM7 Compact」に入れ替えましたが問題なく使えました。音響の技術者ではない一般のディレクターもすぐに操作できていました。
「DM7 Control」についてはいかがですか。
上原氏:
早速、スポーツ中継の現場で使用してみました。「Broadcast Package」をインストールしたので、ラウドネスメーターが見やすく、モニターセレクトも本社のマイナスワンやインカム音声をヘッドホン内にミックスしてモニターができたのが便利でした。
もちろん「DM7 Control」もセットしたので、豊富なUser Defined Keysに多くの機能を割り当てる事ができました。
User Defined Knobsにも、ダイナミクスのスレッショルド、実況アナウンサーへのモニター送りのレベル等を常時出しておく事ができ、生放送でのオペレーションが非常にやりやすかったです。
今後「DM7 Compact」で試してみたい使い方や機能があれば教えてください。
上原氏:
Assist機能を活用したHA調整や、スプリットモードなど多忙な現場で助けになりそうな機能を試したいです。Assist機能はスレッショルドのターゲットレベルを選んでおけば自動的にゲインを設定してくれるので、大規模なバンド物収録のセッティング時間が大幅に短縮できそうです。またスプリットモードは生中継の際にPA用と本線用にスプリットしておけば1枚の卓で両方の画面を見ることができます。今まで2枚の卓を並べてオペレートしていたので、このモードが使いこなせれば本当に便利になりそうです。
「QL1」が出たときも10年ぐらい中継に連れまわしていましたが、これからは「DM7 Compact」が新しい相棒になってくれそうです!