【導入事例】株式会社テレビ東京 様 / 放送局 / 東京

Japan/Tokyo Sep.2024

関東広域圏をはじめ全国5局の系列局とTXNネットワークを形成するキー局、テレビ東京。このたびテレビ東京はヤマハのデジタルミキシングコンソール「DM7」を導入。2024年パリオリンピックではテレビ東京の中継スタジオのメイン卓として重責を担いました。

その導入理由や使い勝手などについて株式会社テレビ東京 テック運営局 コンテンツ技術センター 五十嵐公彦氏、および、同コンテンツ戦略局 コンテンツ業務部 小森真美氏にお話をうかがいました。


このたびヤマハデジタルミキシングコンソール「DM7」を導入した理由をお聞かせください。

小森氏:
2024年パリオリンピックの中継用卓として「DM7」を導入しました。オリンピック放送では競技そのものを中継する時と、各放送局のスタジオなどでMCやゲストが話すような時がありますが、後者のテレビ局独自の制作スタジオでのメイン卓として「DM7」を採用しました。

五十嵐氏:
タイミング的にはオリンピックが契機になりましたが、もともと中継用の可搬卓の老朽化更新を検討していて、別のコンソールを導入するつもりで予算も確保していたのですが、ギリギリのタイミングで「DM7」が発表になりまして……(笑)。それで慌てて発表会に行って「DM7」の実機を見ると、放送寄りの機能がかなり充実していたので、社内を説得して「DM7」を導入しました。

「DM7」のどんな点が放送用途として優れていると感じましたか。

五十嵐氏:
いろいろあるのですが、まず重要なものとして電源が二重化されたことが大きかったです。放送機器は常にUPS(無停電電源装置)を入れて電源を二重化しますが、コンソール本体で電源が二重化されたので安心して使えるようになりました。

小森さん、オリンピックの現場で便利だった機能はありますか。

小森氏:
画面がタッチパネルであることで、直感的に操作できてよかったです。それとUser Defined Keysも必要な機能が自由に設定できて便利でした。オリンピックの現地ユニスタジオではインプット数がすぐ70チャンネルくらいになってしまうので、User Defined Keysで全部見られるようにカスタマイズしました。またモニターがA/Bの2系統あるのも便利でした。自分が作業しているモニターと別の競技の信号などを設定しておいてワンプッシュで切り替えて使っていました。

タッチパネルによる直感的なオペレーション
モニターA/B

また競技会場によっては観客の歓声でMCの声がかき消されてしまう現場もあり、現場から「MCの声も返してほしい」というケースもありました。そんなとき瞬時にセンドレベルが変えられるのも便利でした。

様々な機能をプリセットできるUser Defined Keys
レベルをワンプッシュで切り換え可能

「DM7」に搭載されたエフェクターなどの使い勝手はいかがでしょうか。

小森氏:
今回のオリンビックは入手してすぐだったので内蔵エフェクターは使いませんでしたが、今後はコンプレッサーやリミッターなど、今まで外部エフェクターとして持ち歩いているものを「DM7」の内蔵エフェクターで運用できるようになると、中継用の機材が減らせるので嬉しいです。

放送ではどのようなエフェクターを使うのですか。

五十嵐氏:
通常はコンプレッサーを必ず使いますね。コンプレッサーはいつも定番で使っている機材がありますが「DM7」のマルチバンドコンプレッサーの設定を細かく追い込めば代替できるかもしれないと考えています。それと我々が大量にエフェクターを使う中継としては隅田川花火大会の生中継があります。そこでは花火の破裂音のピークを抑えるために毎回膨大なアウトボードを持ち込んでいるので、そこで「DM7」の内蔵エフェクターが使えるとかなり助かるんじゃないかな、と思っています。

中継用のミキサーで一番大事なことはどんなことですか。

五十嵐氏:
信頼性だと思います。これまで私はヤマハの「DM1000」をさんざん使ってきましたが、トラブルはほとんどありませんでした。その様な実績がありますから、私はヤマハの機材を信頼しています。

小森氏:
私も今回、「DM7」はオリンピック直前の納品でしたし、個人的に初めての海外中継だったので不安はありました。もちろん事前に「DM7」のDante接続などのチェックはしましたが、基本的には「ヤマハのミキサーだから大丈夫」という信頼感がありました。

放送局ではDanteをどのようなシーンで使用するのですか。

五十嵐氏:
PAや劇場でのメリットは長距離のマルチチャンネル伝送だと思いますが、我々が重宝しているのは多数の入出力がLANケーブル1本で行えることです。これまで多数のアナログケーブルを引いていたような現場がLANケーブル1本になり準備時間が大幅に短縮されました。実際の活用例としては競馬中継ですね。競馬中継では主催者のJRA側から場内の音、ファンファーレ、審議の声など多チャンネルの音声が提供されます。以前はこれをアナログで受けていましたが今はDanteに集約しLANケーブル1本で受けています。

小森氏:
パリオリンピックでもDanteを使いました。やはり様々な会場からの入力があったり、簡易的なサブシステムを構築するという事で、信号の入出力数も多かったのですがDanteを使うことでコンパクトな「DM7」でも十分にメイン卓として活躍してくれました。

今後この「DM7」をどのように活用できそうですか。

五十嵐氏:
「DM7」の全チャンネルに搭載されたDan Dugan オートマチックミキサーはかなり便利だと思います。例えばひな壇に100人もの大人数が座ってその声を拾う場合、何台もの集音用マイクをスタジオに仕込みますが、それらのマイクのレベルを上げたままにはしておけません。とはいえそれだけの人数になると、発言があったときだけ当該のマイクのフェーダーを瞬時に上げるのは不可能です。そんな場合にはDan Dugan オートマチックミキサーはかなり使えますね。ただあまりにも便利すぎて、オペレーションが下手になっちゃう(笑)。人力で間に合うようであれば使うな、と、若い人には言っています。

それと「DM7」のスプリット機能も便利だと思います。今までコンパクトな可搬卓でスプリット機能を持ったものはなかったので。特にスポーツ中継でいいですね。たとえばMCとIS(インターナショナル・サウンド)など、これまで2種類のオペレーションが必要な場合、2台ミキサーを並べていました。でも「DM7」なら1台でスプリットして使えるし、シーンも共有できるのでミキサーを2台持って行くよりはるかに便利で効率的です。中継ではかなり助かるでしょうね。

パリオリンピックから凱旋した「DM7」は、今後はいろんな場面で活躍しそうですね。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。

テレビ東京 公式Webサイト
https://www.tv-tokyo.co.jp

Yamaha Digital Mixing Console DM7

DM7 Series

様々なシーンに対応できる高い拡張性と柔軟性を備えた革新的なデジタルミキシングコンソール。