【導入事例】株式会社フジテレビジョン 様 / 東京
Japan/Tokyo Sep. 2025
東京都港区台場を拠点に地上波でのドラマ、バラエティ、報道、スポーツ番組の放送、さらに公式動画配信サービス「FOD」などのデジタル展開も行っている株式会社フジテレビジョン。このたびフジテレビジョンにヤマハ デジタルミキシングコンソール「DM7」、「DM7 Compact」、「DM3」が導入されました。
導入の経緯や使い勝手などについて、株式会社フジテレビジョン テックアートデザイン局 回線・送信技術部 日置 健太郎 氏(写真左)、同制作技術統括部 音声担当の福岡 優紀 氏(写真右)にお話をうかがいました。
ヤマハ機器への信頼性とDante対応で「DM7シリーズ」を導入
「DM7」、「DM7 Compact」、「DM3」の導入理由を教えてください。
日置氏:
弊社では「DM7」のサイズの卓を中型可搬卓、「DM7 Compact」のサイズの卓を小型可搬卓と呼んでいますが、これらを多数所有しています。中にはまだ古いアナログミキサーも残っており、デジタルミキサーへの更新を進めていました。そのために多くの機種を検討したのですが、弊社ではこれまでヤマハの「DM2000」、「DM1000」を長年使っており、ヤマハ機器への信頼感がありました。また小型卓としてすでにヤマハの「QLシリーズ」も使用しており、その実績もあり今回「DM7」、「DM7 Compact」、「DM3」を導入しました。
福岡氏:
私としては、「DM7シリーズ」がDanteネットワークとの親和性が非常に高い点を評価しました。
放送現場におけるDanteには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
福岡氏:
まずスポーツ中継などでアナログケーブルを敷設する労力が大幅に減ります。アナログ時代は競技現場から中継車まで何本ものケーブルを何百メートルも引き回していましたが、今はDanteのおかげでデジタル化し、そうした労力が劇的に軽減されました。またアナログケーブルは長くなるほどノイズが混入しますが、デジタル化でSN比が飛躍的に向上しましたし、アナログケーブルに起因するトラブルが減りました。
中型可搬卓としてスポーツ中継などで活躍する「DM7」
モデルごとにお話をきかせてください。「DM7」はどんな用途で使っていますか。
日置氏:
ある程度大きな規模の外部収録や中継において音声中継車を使わない場合に「DM7」を使用することがあります。たとえば出演者の多いスポーツ中継現場では、出演者分のマイクと、競技音をミックスする必要があるため、中規模程度のミキサー卓が必要ですが、中継車ではなく、「DM7」を使用することがあります。
「DM7」を使用してみての感想はいかがですか。
日置氏:
まず機能面で一番良かったのは電源の二重化です。放送全般に言えることですが、特に生放送では非常に高い信頼性が要求され、電源の二重化は必須です。以前はUPS(無停電電源装置)を別途用意していましたが、「DM7」も「DM7 Compact」も本体のみで電源が二重化できるようになったので助かります。
音質面では「DM2000」、「DM1000」と比べて明らかに向上しました。特にダイナミックレンジが広いと思います。例えば声量の大小が激しいお笑い芸人が出演するような番組の収録でも「DM7」ならヘッドルームが広いので歪みませんし、コンプレッサーで音量を整えても詰まりのない自然な音で収録できます。
「DM7」の新機能で個人的に使いたかったのがスプリットモードです。最近はテレビ放送用の音声PGMに加えてFODなどの配信用、さらに国際信号(ISミックス)も一緒に作るケースが増えました。そのためにこれまではミキサーを2台用意していましたが、「DM7」なら1台で対応できます。
福岡氏:
「DM7 Editor」の使い勝手も評価が高いです。「DM7」本体と全く同じ画面がPC上に再現されるので、分かりやすい。実機のある場所までいかなくてもいいし、自宅のリモ−ト環境でも仕込みやプランニングが設定できるので作業効率が向上しました。
高音質・可搬性を備えた小型可搬卓「DM7 Compact」
「DM7 Compact」は、どのような用途で使われているのでしょうか。
福岡氏:
音声中継車から離れた出先でサブミキサーとして使用することが多いです。野球中継では、現在「QL5」をメインミキサーとして使用し、「DM7 Compact」を予備卓兼プリMIX卓として運用しています。プリMIXでは、コメンタリーのミックスなどを担当し、打球音をはじめとする競技音や球場内の観客の声などを集約。最終的なファイナルミックスはQL5で仕上げています。またゴルフ中継の場合はメインで放送する4~5ホールではホールごとにミックスを作ります。そういった用途で「DM7 Compact」はベストです。
「DM7 Compact」に搭載されたプラグインは、現場でも非常に高く評価されていて、特に「DaNSe」が好評です。たとえばコメンタリー音声へのIS(インターカム)の回り込みを大幅に減らすことができます。
日置氏:
サッカー中継の時は「DM7」と「DM7 Compact」を両方同時に使います。「DM7 Compact」ではピッチ周りに設置した10本以上のマイクからの競技音や選手の声をミックスします。「DM7」はメインミキサーでその競技音に加えて、実況、VTR、コメンタリー、場内のアンビエンスなどをまとめてファイナルミックスを作ります。
「DM7 Compact」を使ってみた感想を聴かせてください。
日置氏:
サイズは小さいですが音の面では「DM7」と同じで高音質ですし、小型なのに画面が大きくて使いやすいです。そして何より軽量でコンパクトな点も素晴らしい。内蔵のLEDライトは実際に使ってみると非常に嬉しい機能でした。暗いホールや格闘技中継のリングサイドなどでの収録は暗転があるので手元のライトが必須です。以前は小さなライトを取りつけていましたが、自照式になったのでとても便利です。
福岡氏:
私はiPadアプリの「DM7 StageMix」が使える点が良かったです。ゴルフのように距離がある現場では、予備卓やコミュニケーション卓の制御を1台のiPadでアドレスを変えてつなぐことで遠隔操作できるので、かなりの省人化になっています。
ソースセレクトや小規模なイベント収録などで
圧倒的な機動力を発揮する「DM3」
「DM3」はどのような用途で導入したのですか。
日置氏:
「DM3」は主にソースセレクトで使っています。ソースセレクトとはスタッフや出演者向けのモニター返しの回線をセレクトすることです。例えばカメラマンは常にディレクターの指示を聞いていますが、アナウンサーは競技音をしっかりと聞きたい。そのように人によってモニターしたい音が違いますので、それをセレクトするために使います。
福岡氏:
私は先日「DM3」を登壇者が5~6人程度の小規模な収録現場でミックスに使用しましたが、とても使い勝手が良かったです。シンプルで扱いやすいので入社1年目の新人に操作を任せましたが、すぐに使えていました。
日置氏:
スポーツ中継の実況などでも喋り手が少人数なら「DM3」で十分ミックスできます。また小規模なロケでも、小回りがきいていいと思います。とにかくスーツケースで手軽に運べるサイズなので運ぶ機材の量が劇的に減ります。
オートミキサー機能はいかがですか。
福岡氏:
複数の話者がランダムに話すようなシーンでも自動的にミックスしてくれて使いやすかったです。PAも兼ねたような現場ではハウリングに気を使わなくてもいいし、若いスタッフが音のまとまり方を学ぶ教材としても有効だと感じました。
今後ヤマハに期待することがあれば教えてください。
福岡氏:
放送業界では、映像・音声・補助データをIPネットワークで伝送するSMPTE ST 2110規格への対応が今後の課題となりますので、ミキサーでも対応を期待しています。
本日はありがとうございました。
株式会社フジテレビジョン
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