【導入事例】株式会社エヌアンドエヌ 様 / SRカンパニー / 東京

Japan/Tokyo Feb. 2025

株式会社エヌアンドエヌが「STM M46」/「RIVAGE PM5」/「DM7」を導入

“N&N Sound Freaks”という屋号でも知られる株式会社エヌアンドエヌ(東京都大田区)は、今年で創業50周年を迎えた老舗のPA会社です。各種イベントや音楽コンサートなどを手がける同社は昨年、大規模な設備投資を実施し、NEXO「STM M46」/「RIVAGE PM5」/「DM7」を導入。アリーナクラスの現場にも対応できる機材がラインナップに加わりました。

NEXO「STM M28」をいち早く取り入れ、ミキシングコンソールはヤマハ製で統一している同社ですが、新たに導入した「M46」/「RIVAGE PM5」/「DM7」についてはどのような印象を持っているのか。そのインプレッションについて、同社のサウンドエンジニアである栗山 大介 氏と打越 俊次 氏にお話を伺いました。


NEXO「STM M28」をいち早く導入したエヌアンドエヌ

はじめにエヌアンドエヌさんについて、簡単にご紹介いただけますか。

栗山氏:
弊社は代表の佐藤(注:代表取締役社長の佐藤信幸氏)が1975年4月に設立した会社で、今年で創業50周年を迎えました。“N&N Sound Freaks”という屋号のとおり、音響専門の会社で、たまに機材をレンタルで出すこともありますが、基本的には自分たちで運用してオペレーションするという昔ながらのスタイルでやっています。手がけている仕事は単発のイベントが一番多く、企業系もあれば歌モノもあります。あまり偏りはない感じですね。現在、8名のスタッフが在籍していて、全員オペレートを手がけます。

他のPA会社と比較したエヌアンドエヌさんの特色というと?

栗山氏:
僕ら自身は特に意識しているわけではないのですが、お付き合いのある人たちからは、“アットホームな会社だね”とよく言われます。まぁ実際、お昼ご飯もスタッフ皆んなで事務所で食べますし、社員旅行で海外に行ったりもします。少人数の会社だからこそなのかもしれませんけど。こんな会社なので、本番当日に楽器の数が増えても全然対応しますし、そういった意味では付き合いやすいPA会社なのかなと思います。

打越氏:
社長からは常に“人を売れ”と言われているんです。

栗山氏:
結局、人と人とが繋がってこその仕事ですからね。良い機材を持っていて技術が凄くても、それだけでは仕事にならないと思いますし。人と大事に付き合うということを一番に考えています。

株式会社エヌアンドエヌの栗山 大介 氏

現在お持ちのミキシングコンソールをおしえてください。

栗山氏:
弊社はフルDanteで運用しているのでヤマハ一択です。「CL5」が2枚、「QL5」が2枚、「QL1」が3枚、「DM3」が4枚、そして昨年、「RIVAGE PM5」と「DM7」も導入しました。Danteを取り入れたのは比較的早く、「LS9」や「M7CL」の時代からカードを装着して活用し始めたのですが、今となっては良い判断だったなと思っています。ネットワークオーディオとして凄く安定していますし、その後の普及によって繋がる機器が一気に増えましたから。

エヌアンドエヌさんには2015年に、NEXO「STM Series」をいち早く導入していただきました。

栗山氏:
NEXO製品に関しては、「Alpha Series」や「GEO S12」を使用していたので、その日本人に合った素直できれいなサウンドが体に馴染んでいるんです。なので「STM Series」も、他のラインアレイと比較して導入したわけではなく、すんなり移行した感じです。

打越氏:
これは「Alpha Series」でも感じていたことですが、NEXOのスピーカーは音だけでなく、コンセプトが良いなと思っています。「STM Series」で言えば、ワンボックスの中にLFとHFが入っているようなシステムを細かく組み合わせることができる。他社のラインアレイでは、そんなシステムを組むことはできませんから。我々のような小規模な会社でも持つことができるフラッグシップラインアレイというか。

栗山氏:
ただシステムを組めるというだけでなく、「NXAMP」にすべてのキャビネット用プリセットが入っていて、組み合わせにかかわらず、位相特性がしっかり合うというのもポイントですね。

導入時の構成をおしえてください。

栗山氏:
最初「M28」と「S118」を9/3対向の構成で導入したのですが、現場で使ってみてちょっと物足りない印象だったので、少ししてからモジュールを追加してブーストさせました。現在、「M28」は24本あります。「STM Series」を導入しようとなったときにもちろん「M46」もあったんですけど、女性スタッフもいますし、軽くて取り回しがいいものということで、「M28」を選定した感じですね。

アリーナクラスの現場にも対応するべく、「STM M46」を追加

そして昨秋、「M46」を追加で導入していただきました。その経緯をおしえていただけますでしょうか。

栗山氏:
計画が具体的になったのは去年の頭くらいなのですが、僕の中では2~3年前から考えていたんです。最近、アリーナクラスの仕事が増えているのですが、そういった大きな会場だと、「M28」ではやっぱり限界があるんですよね。一番感じるのはHFの飛びで、60メートルを超えたあたりから落ちてしまうんです。これはどんなに角度を合わせてもダメで、5,000人クラスの会場であれば「M28」でも何とかいけるんですけど、アリーナクラスの会場では70~80メートルくらいは飛ばないと難しい。

「M46」に関しては現場で使って、「M28」とは違うHFの飛びを持っていることが分かっていたので、広い会場の仕事が増えてきた2~3年前くらいから、もう導入するしかないなと考えていました。ただ、その後コロナ禍になってしまったので、昨秋ようやく導入することができたというわけです。自分の中では、やっと「M46」に辿り着くことができたという感覚ですね。

打越氏:
他のラインアレイを検討せずに迷わず「M46」を選定したのは、「M28」と組みわせて使えるからです。もちろん、「M28」をずっと使ってきて、絶大な信頼感があったというのも大きいですね。

栗山氏:
ただ、「M46」を導入した今でも、弊社の軸となるスピーカーは「M28」だと思っていて、「M46」はエクステンション的な位置付けというか。

株式会社エヌアンドエヌの打越 俊次 氏

実際に現場で使用されて、「M46」のサウンドはいかがですか?

打越氏:
「M28」とは少し違います。

栗山氏:
モジュールの構成が変わってくるから、まったく一緒にはならないですね。でも位相特性は似ているので、「M28」を上手く馴染ませるようにコントロールすれば、まったく問題ない。現場で使って一番印象的なのは、やっぱり音の飛びです。あの音の飛びは「M28」では出せないなと。

打越氏:
アリーナクラスの現場では、東京音研さん(注:株式会社東京音響通信研究所)にアウトで入ってもらうことが多いのですが、前に“M46のダブルカラムの音を聴いてほしい”と言われて、なるほどなと思いましたね。イベントの現場だと、あまり良い卓位置が貰えなかったりするんですけど、ダブルカラムの「M46」は、どんなミックスポジションでも音の存在感が消えないんです。同じ会場で「M28」だったら、きっと凄く遠い音を聴いている感覚になると思います。

栗山氏:
2,000~3,000人キャパの会場で初めて「M28」を使ったときも、距離感を感じさせない音だなと思いました。30メートルくらい離れているのに、それほど音が遠くないなと。まるでニアフィールドスピーカーでミックスしているような感覚というか。今回、より大きな会場で「M46」を使ったときも、同じような感覚でしたね。

新たに導入されたNEXO「STM M46」

カバレッジのコントロール性能については?

打越氏:
NEXOのトレーニングでは、“どんな現場でもNS-1を使いなさい”と言われるんですけど、しっかりシミュレーションどおりの結果になってくれますね。届かない場所には本当に届かない。素晴らしいと思います。

栗山氏:
NS-1、嘘つかない(笑)。会場によっては思ったよりも反射がキツかったりするんですけど、それを除けば、ほぼシミュレーションどおりの結果になる。本当に完成度の高いソフトウェアで、今やあれが無かったら仕事にならないですね。広い会場ではスピーカーの出力が上がる分、反射の影響が大きくなるので、よりプランニングが重要になってきますから。

設置のしやすさ、リギングの機構についてはいかがですか?

打越氏:
弊社の場合、「M46」は100%フライングで使用するのですが、「M28」と変わらないですね。

栗山氏:
CompassRigとPistonRigの違いはありますけど、「B112」がPistonRigだったので、大きく変わったという印象はありません。横幅は一緒なので、取り扱いは基本的に同じです。

総じて「STM Series」のリギングの機構は、とても良く出来ていますね。「M28」を導入して10年くらい経つので、フライングにもかなり慣れてきたというのもあるのですが、仕込みとバラしが本当に早い。ぶっちゃけ一人でもバラせてしまえるくらいのリギングの機構だと思います。

打越氏:
スタックで使う場合は、組んだ状態でゴロゴロ運んで終わりですからね(笑)。本当にらくです。

栗山氏:
「GEO S Series」のリギングは、角度を決めて横からピンを挿すという方式でしたから、絶対に複数人で作業をやらなければならなかったんですよ。その点「STM Series」は、コンプレッションで角度を決める機構なので、安全ですし、仕込みとバラしが早い。特許を取っている機構だけはあるなと思いますね。

新しいフラッグシップ卓として「RIVAGE PM5」を導入

「M46」と同じタイミングで、「RIVAGE PM5」と「DM7」も導入していただきました。

栗山氏:
「RIVAGE PM5」に関しては、アリーナクラスの現場が増えてきて、アウトが足りないという問題もありましたので、新しいフラッグシップ卓として導入しました。「RIVAGE」はこれまで一度も持ったことのないシリーズだったのですが、やはりアリーナクラスの会場はプレミアムな卓でやりたいなと。

一方、「DM7」に関しては、サイズ的にも価格的にも次の世代のスタンダードになる卓という印象だったので、こちらも導入したいと思ったんです。最初は「RIVAGE PM5」か「DM7」か、どちらか一方を導入しようと思ったんですが、悩むくらいなら両方導入してしまおうと(笑)。

打越氏:
「RIVAGE」と「DM7」の一番の魅力は、96kHzに対応しているところですね。やっぱり48kHzとは音質が全然違うので、これからは96kHzが主流になっていくと思っています。

栗山氏:
これまで48kHzでやっていた会場で、卓を96kHz対応のものに変えるだけで、出音がまるで変わりますからね。分解能が高くなって、分離も明らかに良くなる。もちろん、オペレーターによっては48kHzのまとまった感じが好きという人もいると思うんですけど、将来的には96kHzがスタンダードになっていくと思います。音の抜け、リバーブやコンプのかかり具合が全然違いますから。

その昔、アナログ卓からデジタル卓に移行したときも音のきめ細やかさに驚きましたけど、あれから20年経って、あのときと近い感覚がありますね。どちらの卓も96kHzに対応しているので、今後は会場の大きさや可搬性によって使い分けることになると思います。アリーナクラスの会場であれば「RIVAGE PM5」、小規模なイベントであれば「DM7」という感じですね。

打越氏:
ハウスに「RIVAGE PM5」、モニターには「DM7」を使って、96kHzでシステムを組むパターンもあると思います。アナログはマイクとスピーカーだけで、あとはフルデジタルというような。

栗山氏:
そういうシステムを組めれば、現場に持ち込む物量を減らすことができますし、結果的にトラブルも少なくなるのではないかと思っています。

新しいフラッグシップ卓として「RIVAGE PM5」も導入

「RIVAGE PM5」の操作性についてはいかがですか?

打越氏:
「CL Series」の流れを汲んでいるので、ヤマハのデジタル卓に慣れている人であれば、すぐに使えると思います。

栗山氏:
インプット段に関しては全然難しくない。ただ、システムを組むとなると、TWINLANeなどこれまでにない概念があるので、これから勉強しないといけないですね。

お気に入りの機能があればおしえてください。

栗山氏:
何と言ってもSILKプロセッシングですね。倍音成分を足すというのは、「CL Series」や「QL Series」ではできなかった処理ですから。もう声にも楽器にも何にでも使えるので、僕は全チャンネル入れてしまいます(笑)。もちろん、どれくらいかけるかはチャンネルによりますけど、個人的にはREDを使うことが多いですね。SILKプロセッシングを使うと、音が上手く混ざってくれますし、特に歌モノでは重宝する機能です。

打越氏:
僕はBLUEの方が好きなんですが、データを作るときに全チャンネルに入れてしまうので、もはや存在を意識していないです(笑)。

エヌアンドエヌ様の今後の展開についておしえてください。

栗山氏:
「M46」、「RIVAGE PM5」、「DM7」と、大きな設備投資をしましたので、これからどんどん新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。機材だけでなく、人のスペックも上がっていると思いますし。

打越氏:
スピーカーに関しては、「M46」を導入したおかげで、あきらめなくてもよくなったというのが大きいですね。先ほどダブルカラムの音が良いという話をしましたが、会場によっては重量やサイズ的に難しい場合もあるんですよ。そんなときは、「M46」と「M28」を組み合わせてシングルカラムで使うことで、これまでよりも格段に良い結果が得られるようになりました。

栗山氏:
メインアレイは「M28」で、3階席だけ「M46」で狙うといったトリッキーな構成も試しましたけど、凄く効果がありましたね。

最後に、NEXOの今後に期待することがあればお聞かせください。

栗山氏:
新しいものを出し続けていくというのは大変だと思うんですけど、イノベーションを刺激する製品をどんどん出してほしいですね。今は人よりもテクノロジーが先で、人はそれに追従する時代だと思うので。昔と違ってオリジナルでスピーカーを作るわけにはいかないので(笑)、NEXOの今後には期待しています。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

RIVAGE PM Series

新世代のフラッグシップ・デジタルミキシングシステム。

Yamaha Digital Mixing Console DM7

DM7 Series

様々なシーンに対応できる高い拡張性と柔軟性を備えた革新的なデジタルミキシングコンソール。