【導入事例】放送大学学園 様 / 千葉
Japan/Chiba Nov.2024
放送大学学園は生涯学習を支援し幅広い世代に高等教育の機会を提供する、日本で唯一の通信制大学です。テレビやインターネットを活用した授業により、時間や場所を問わず柔軟に学べる環境を整え、学士課程から修士課程まで幅広い履修に対応しています。
このたび放送大学学園にヤマハのデジタルミキシングコンソール「DM7 Compact」が導入されました。導入の経緯や使い勝手などについて、放送大学学園で放送機器のシステム設計・施工を担当する株式会社NHKテクノロジーズの小林 雄途 氏(写真右)と番組制作を手掛ける株式会社千代田ビデオの淡路 重雄 氏(写真左)にお話をうかがいました。
学校であると同時に放送局でもある「放送大学学園」
放送大学学園とはどのような組織なのでしょうか。
小林氏:
放送大学学園は学校ですが、同時に放送局でもあるというユニークな機関です。設立当初はテレビやラジオでの授業がメインでしたが、近年はインターネットによるオンライン授業や配信にも力を入れており、多彩な授業を展開しています。放送局としてはNHKに準じる放送設備を備えており、その運用にはNHK関連の技術者が多く携わっています。
NHKテクノロジーズの小林様と、千代田ビデオの淡路様は、どのような形で放送大学学園に関わっていらっしゃるのでしょうか。
小林氏:
私はNHKテクノロジーズという会社の人間ですが、放送大学学園の技術運行課からの依頼で放送機器の選定、設計、そして施工工事などを担当しています。
淡路氏:
私が所属している千代田ビデオは番組制作プロダクションで、ここでは放送大学学園の授業番組の制作作業を請け負っています。
この編集室では「DM7 Compact」をどのような用途で使っているのですか。
淡路氏:
「DM7 Compact」を導入したスタジオはいわゆるリニア編集室と呼ばれる編集スタジオです。ここでの主な作業はビデオに入っている4つの音声トラックを放送用の2トラックにミックスしています。その他にはノイズを処理したり音量レベルを整えたりする整音作業でも使用します。
小林氏:
具体的にはここに送られてくるXDCAMディスクに収録されている演者やナレーションの音声、BGMといった音素材の音量やバランスを決めて完プロ(完成プログラムパッケージ)のディスクをリアルタイムで作る作業を行っています。
*XDCAMとは放送局やプロの映像制作者が使用するビデオ記録システムで、映像の高品質な記録、保存、編集が効率的に行える。
「DM7 Compact」を導入されるまではどんなミキサーを使っていたのですか。
小林氏:
リニア編集専用の音声ミキサーを使っていましたが、その機材が老朽化しメーカー修理ができない状態になってしまったために更新しました。
「DM7 Compact」の選定理由を教えてください。
小林氏:
そんな理由でしたので急いで後継を探していたのですが、なかなか後継が見つかりませんでした。今回は音声ミキサーだけの更新だったため、特に筐体サイズが重要で、これまで使っていたラックにきれいに収まることが前提でした。「DM7 Compact」が発売されたのでサイズを見てみると、まさにここにピッタリだったのですぐに導入を決めました。
サイズ以外に「DM7 Compact」を選定する決め手になった点はありますか。
小林氏:
この機能があったから「DM7 Compact」を選定したともいえるのが、放送用途の機能を追加できる「Broadcast Package」です。そこに含まれるタリー信号をGPI経由で送り、音声と映像を連動させる「Audio Follow Video機能」や「ラウドネスメーター機能」は放送用途では大変重要な機能です。
加えて放送用途では電源の二重化も重要なポイントでした。急な停電などの非常時だけではなく、例えば館内停電が予定されている場合などの際、一方の電源を停電していないところから引いておけば、電源が落ちてもミキサーを動かし続けることができます。
それとI/Oラック「RSio64-D」を使うことでDanteのインターフェースユニットが自由に選べるところも良かったですね。この編集室ではもともとAES/EBUを使用していたので、ユニットを入れ替えるだけですぐに運用できました。
実際に「DM7 Compact」を運用してみた感想はいかがでしょうか。
淡路氏:
これまで使っていた音声ミキサーは機能が限られていて操作はシンプルでした。それに比べると「DM7 Compact」は機能が増えて慣れが必要な部分もありますが、逆に今までなかった大型のタッチディスプレイが搭載されているので、直感的に操作できるようになりました。これも大型パネルの恩恵ですが、再生音がどこから来ているのかがすぐに確認できる点も便利です。
「DM7 Compact」をGPIで制御していると聞きました。具体的にはどのような運用をしているのでしょうか。
小林氏:
放送機器や映像設備間で制御信号をやり取りするためにGPI(General Purpose Interface)を使いますが、ここではビデオ編集コントローラーから「DM7 Compact」を遠隔操作するためにGPIを使っています。音声を専門に操作するエンジニアが来る場合もありますが、ビデオ編集者が映像と音声を同時に編集する場合も多いので、ビデオ編集機から音声ミキサーが操作できる必要がありました。
具体的には6基のXDCAMのビデオ再生/録音機に対し、ビデオ編集機で選んだビデオ再生/録音機の音声だけがチャンネルオンになるようにすることで音と映像をセットで切り換えて操作できるようにしています。それによってセレクトしたビデオソースのフェーダーを上げ下げする作業を簡略化することができます。これまでのリニア編集機はそういう仕様になっていたので、「DM7 Compact」でも同様の動作をさせるためにGPIを活用しています。
それとGPI端子に5Vの電源が供給されている点も設備側の人間としては嬉しい機能でした。ミキサーの更新にともなって製作した操作盤のスイッチのランプは「DM7 Compact」のGPI端子から5Vの電源をもらっています。もしそれがなければ別途電源をとる必要があったので、GPI端子に5Vがあるとないとでは大違いでした。
「DM7 Compact」に限らずヤマハ製品についてはどんな印象をお持ちですか。
小林氏:
放送大学学園にはラジオ番組の収録スタジオが複数ありますが、その全てのスタジオにヤマハのデジタルプロダクションコンソール「DM2000」が入っていて、ずっと使い続けています。またNHK内にもヤマハのプロオーディオ機器は相当数導入されていますが、これまで大きなトラブルがあったという話は聞いたことがありません。
ですから私たちの周りでヤマハの音響機器について否定的な人はほとんどいないですね。放送という信頼性が最も重視されるジャンルでも、ヤマハのプロオーディオ機器は非常に高い評価を得ていると思います。
ご多忙中、ありがとうございました。
放送大学学園
https://www.ouj.ac.jp