【音像制御システム「Sound xR Image」使用事例レポート】舞台『ピグマリオン-PYGMALION-』/ 東京

Japan/Tokyo Feb. 2026

2026年1月20日~2月8日、東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて、沢尻エリカ、六角精児、橋本良亮、平田満らを迎え、劇作家ジョージ・バーナード・ショーの傑作喜劇『ピグマリオン-PYGMALION-』の公演が行われました。本公演は全国ツアーとして上演され、その中で東京公演では、ヤマハの音像制御システム「Sound xR Image」を用いた音響演出が行われました。

その狙いや実際の効果について、音響を担当した大木 裕介 氏(有限会社サウンドバスターズ)にお話をうかがいました。


舞台『ピグマリオン-PYGMALION-』について

公演概要

日程:2026年1月20日(火)~ 2月8日(日)
会場:東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
作:ジョージ・バーナード・ショー
演出:ニコラス・バーター
出演:沢尻エリカ、六角精児、橋本良亮、平田満ほか

舞台『ピグマリオン-PYGMALION-』は、1925年にノーベル文学賞を受賞した劇作家ジョージ・バーナード・ショーの傑作喜劇を現代の感性で再構築した作品です。名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の原作としても知られますが、本演出ではヒロインが自らの意志で人生を選択していく、より現代的な結末が描かれます。本作品は言語学者が下町言葉の花売り娘を言葉の教育によって貴婦人に変身させられるかという賭けをする物語です。「声」や「発音」が物語の核となる、きわめて音響的なテーマを内包した作品でもあります。

『ピグマリオン-PYGMALION-』公式ウェブサイト


舞台『ピグマリオン-PYGMALION-』におけるヤマハ「Sound xR Image」について

本公演では、イマーシブな音響演出を可能にする音像制御システム「Sound xR Image」が使用されました。さらに、俳優の位置情報をリアルタイムに追尾するトラッキングシステム「TiMax TrackerD4」と連携することで、演者の動きに合わせて音像が移動する、リアルで自然な音響空間が創出されました。

「Sound xR Image」スピーカー構成

使用スピーカー

1 フロントスピーカー(2・3階席用) 3基 NEXO「GEO M12シーズ」
2 フロントスピーカー(1階席用) 6台 NEXO「P12」
3 舞台奥スピーカー 4台 NEXO「PS15R2」劇場設備
4 サイドスピーカー 2基 NEXO「GEO S12シーズ」劇場設備
5 リップフィルスピーカー 8台 NEXO「ID24-T」
6 効果用スピーカー、補助スピーカー 一式 劇場設備
フロントスピーカー(2・3階席用)のNEXO「GEO M12シリーズ」)
フロントスピーカー(1階席用)のNEXO「P12」)
舞台奥スピーカーのNEXO「PS15R2」
リップフィルスピーカーのNEXO「ID24-T」
サイドスピーカーは劇場常設のNEXO「GEO S12シリーズ」
パワードTDコントローラーNEXO「NXAMP4X2MK2
音響ブース。ヤマハのデジタルミキサー「QL1」「CL1」「QL5」を使用
「Sound xR Image」をプロセッシングするNEXO「DME10」

『ピグマリオン-PYGMALION-』+「Sound xR Image」インタビュー

音響 大木 裕介 氏(有限会社 サウンドバスターズ 取締役社長)

1,000人超規模の劇場でも、マイク使用を感じさせない自然な定位と音質――音響演出の新たな可能性を示した「Sound xR Image」

今回の舞台でイマーシブオーディオを導入した理由を教えてください。

大木氏:
実は、イマーシブオーディオへの取り組みは今回が私にとって初めてのチャレンジでした。ただ、以前から強い興味を持っていました。学生時代から演劇やミュージカルに30年近く関わってきましたが、ワイヤレスマイクを使う演劇では、同時に5、6人以上が歌ったり喋ったりすると、音が平面的になって混ざってしまい、どこで誰が喋っているのか分からなくなることがあります。そうした状況を何とか解消できないかと常々考えていました。

また、効果音の表現においてもイマーシブオーディオには大きな可能性を感じていました。私は「劇団☆新感線」の音響効果でキャリアをスタートしており、効果音をより立体的に表現したいという思いをずっと持ち続けていました。近年では、映画館などでDolby Atmosをはじめとした立体音響を体験することが当たり前になっています。

そうした音響体験に慣れたお客様に対して、劇場でも同様の立体感を提供したい。その思いにこたえてくれるのが、イマーシブオーディオだと思っていました。

そして今回、ようやくにチャレンジする機会を得た、ということです。

長年やりたいと思ってきたことが、イマーシブオーディオを使えば実現できそうだ、ということですか。

大木氏:
そうですね。効果音で言えば、たとえば向こう側でタクシーが通れば、音も向こうから聞こえてほしい。大砲の音であれば、発射音は遠くで小さく鳴り、着弾音は手前で大きく鳴ってほしい。これまでは、その立体的な効果音の表現をするためにミキサーの設定やDAWソフト上で非常に細かくパンニングを組む必要がありました。イマーシブオーディオであれば、音をオブジェクトとして扱い、コントローラー上で自由に空間内を動かすことができます。その自由度の高さに、非常に画期的なツールだと感じました。

商業演劇の主戦場である1,000人超規模の劇場で「Sound xR Image」に挑戦したかった

今回イマーシブオーディオシステムで「Sound xR Image」を選択した理由を教えてください。

大木氏:
今回の会場である東京建物 Brillia HALLには、ヤマハの機器やNEXOスピーカーが常設されており、ヤマハのシステムとの親和性が高いと考えました。また、「Sound xR Image」はヤマハ製で、日常的に操作に慣れ親しんでいるデジタルミキサーと操作感が近い点も、大きなポイントでした。現場での運用を考えたときに、分かりやすさは非常に重要です。そして最終的な決め手となったのが「Sound xR Image」がトラッキングシステム「TiMax TrackerD4」と連携できるようになっていることでした。

オートトラッキングシステム「TiMax TrackerD4」との連動は重要だったのですか。

大木氏:
非常に重要でした。正直に言えば、もし連携できなければ使わなかったと思います。

非常に重要でした。正直に言えば、もし連携できなければ使わなかったと思います。 舞台を観にくるお客様は、必ず俳優の演技を見ています。ですから私の音響では俳優の声が何よりも最優先です。「Sound xR Image」の立体音響とトラッキングシステム「TiMax TrackerD4」が連携することで、俳優の動きに合わせて、まるで俳優の口もとからセリフが聞こえてくる。その仕組みは、私にとっては、もっとも必要としているシステムでした。

TiMax TrackerD4(センサー)
TiMax TrackerD4を制御するPC画面

今回は規模が大きな劇場でのストレートプレイですが、ここで「Sound xR Image」を採用した理由を教えてください。

大木氏:
ここは約1,300人収容する、ワイヤレスマイクによる拡声が必要な劇場でした。こうした規模の劇場は、日本の商業演劇において最もポピュラーで、いわば主戦場とも言えます。私は、その“主戦場”でイマーシブオーディオに挑戦したいという思いを持っていました。この規模の劇場で着実に実績を積み、その効果が広く認知されていくことが、将来的に劇場の設備仕様がイマーシブオーディオ対応へと変わっていくための、大きなきっかけになるのではないかと考えたからです。

仮想的な点音源がもたらすナチュラルな拡声と劇場の響きの改善

劇中では「Sound xR Image」がどのように使われたのでしょうか。

大木氏:
私は、演劇の音響をパズルのようなものだと捉えています。これまでのLRでのミックスでは音を平面的に配置するので、どうしても表現に限界がありました。それがイマーシブオーディオになると、平面が立体へと拡張され、縦・横・奥行きのある空間の中に音を配置できるようになります。まず人の声をここに、次に音楽をここに、にというように音の居場所を整理していく。これは私の演劇音響の手法にとって、非常に大きな変化でした。

「Sound xR Image」コントロール画面

実際に「Sound xR Image」を使用して、音質面での変化はありましたか。

大木氏:
実際に使用してみて、もう一つ大きなメリットを感じました。それは「響きの整理」です。私はさまざま劇場で仕事をしますが、劇場固有の響きが耳につき、その対策に手間がかかることも少なくありません。ところが「Sound xR Image」を使用してみると、そうした違和感が抑えられ、自然な響きが感じられました。これは「Sound xR Image」によって音源がオブジェクトという仮想的な点音源として扱われ、不要な反射が抑えられたことで、結果として響きが整理されたからだと思います。

たとえば、従来のLR音響では、下手にいる俳優のセリフを上手の客席に届けるために、上手側のスピーカーからも音を出す必要がありました。しかし「Sound xR Image」では音が点音源として明確に定位するため、余計な反射が減り、響きがスッキリしました。こうした音場の変化によって、自然で生声に近い質感が実現することができました。

これは、劇場で実際に使ってみるまで分からなかった、非常にポジティブな成果だと感じています。

3Dリバーブによる空間表現の深化と新たな音響手法の手応え

劇中で登場人物が観客に向かって話しかけるようなシーンでは、セリフの響きが明らかに変わりました。これも「Sound xR Image」の効果ですか。

大木氏:
そうです。通常のシーンでは、俳優の口もとに音を定位させていますが、ナレーションや抽象的なシーンでは、声のオブジェクトを舞台前面に固定したり、あるいは脳内に直接響くような効果を狙ってオブジェクトを客席に配置したりしています。こうした場面ごとに音像定位を大胆に切り替え、定位感そのものをコントロールできる点は大きな特徴です。これは「Sound xR Image」だからこそ可能な演出方法であり、今後の舞台音響における表現の幅を大きく広げるものだと感じています。

「Sound xR Image」に内蔵された「3Dリバーブ」も使用したのでしょうか。

大木氏:
「3Dリバーブ」はお風呂場のシーンで使用しました。通常のデジタルリバーブとは質感が異なり、残響音の切れ際が空気に溶けていくようなニュアンスがあって、非常に自然な響きが得られました。一方で、楽隊が演奏する音楽については、響きに音楽的なニュアンスが必要だったのでミキサー内蔵のリバーブを使用しています。そのリバーブ成分を「Sound xR Image」でオブジェクト化し、バンドと同じ位置に配置することで、音像とリバーブが一体となった、非常に自然な効果を得ることができました。

ただし、不穏な雰囲気を強調したいシーンでは、あえてリバーブを楽隊から切り離し、客席側に配置しました。そうすることで、劇場全体が不協和音の響きに包まれるような、印象的な演出も行いました。

最後に、このチャレンジを終えての手応えを教えてください。

大木氏:
商業演劇で最も多く使われている規模の劇場において、「イマーシブオーディオが実際に使える」という確かな手応えを得られたのは、大きな収穫でした。実戦投入したからこそ見えた課題もありますが、それは今後に向けてのステップだと捉えています。

将来的には、このイマーシブオーディオを地方公演などの巡業先でも使えるように、よりコンパクトなシステムを模索していきたいと考えています。自分の音響手法を理想に近い形で具現化できるツールとして、イマーシブオーディオはこれから欠かせない存在になると思います。

お忙しい中、ありがとうございました。

『ピグマリオン-PYGMALION-』公式ウェブサイト
https://pygmalion2026.jp


音像制御システム「Sound xR Image」について

「Sound xR Image」とは

「Sound xR Image」は、音像を3次元的にかつ自在に定位・移動させることで、演劇、オペラ、コンサート、インスタレーションなど多彩なシーンでイマーシブな音響演出を可能にするオブジェクトベースの音像制御システムです。

主な特長

  • 洗練されたGUI上でのオブジェクト操作や音像サイズ調整により、緻密かつ迅速な音像コントロールが可能
  • 特定のスピーカーセットにのみオブジェクト再生を割り当てできるスピーカーゾーニング機能を搭載
  • 3Dリバーブシステムを搭載し、それぞれのリスニングエリアにて臨場感ある残響と音場を実現
  • DAWやコンソールのパンニング操作を実空間の形状に最適化するレンダリングエリアコンバージョン機能を搭載

詳しくは「Sound xR Image」製品ページをご覧ください。

Sound xR

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