品格あるホールでエレクトーンの魅力を発揮 神田 将リサイタル

品格あるコンサートホールでのエレクトーン演奏会を定期的に継続したいとの思いで始めたリサイタルは今年で第4回目。初回よりカザルスホールで開催してきましたが、来年3月の閉館が決まったため、今回はカザルスにおける最後のリサイタルとして感慨深い思い出となりました。

演奏こそ終始ひとりでも、その陰に多くの方々の支えがあってこそのリサイタルですので、ファンや音楽関係者の皆様、ヤマハの皆様には、いつも心より感謝しています。

設えが立派で音響にも優れているホールでの演奏は、実に心地よいものです。迫力あるリッチな音が出せるばかりでなく、ピアニッシモなど繊細な領域でのより芸術的なアプローチが可能になり、結果的にエレクトーンの魅力が一層引き立つように感じました。

視覚的には、エレクトーンソロの場合、奏者が楽器に固定されるためステージの変化が乏しくなりがちですが、曲にシンクロして変化する照明演出が音楽のイメージを大きく膨らませてくれました。

毎回リサイタルに合わせて10曲以上を新たに編曲し初演するのですが、できる限りの準備をしてもその成果を十分に発揮するのは難しく、演奏面ではいつも不満と課題が残ります。終わった後、達成感どころか喪失感に襲われることもありますが、それでも回を重ねるごとに蓄えられた経験は、私にとってかけがえのないものです。

そして、この先エレクトーンがより広く人々に愛されていくために、私たち演奏家は何をすべきかを考えさせられる中、エレクトーンの世界でよしとされてきたものが必ずしも広い音楽の世界で通用するとは限らず、エレクトーンだからという既成概念を打ち破る勇気が求められていると、強く思い知らされました。

特に、ターゲットをエレクトーン愛好家に限定せず、むしろ一般のお客様にも自然に受け入れてもらえる選曲と演出は欠かせません。こうした試みが、エレクトーンを学んでいる才能ある若者たちの活躍の場やビジネスチャンスにつながるよう願いつつ、一期一会の気持ちを大切に、今後もリサイタルを継続していきたいと思います。

エレクトーン奏者 神田 将

エレクトーン演奏/神田 将

2009年4月11日 日本大学カザルスホール