詩と音楽を歌い、奏でる 第9回「トロッタの会」

生の楽器とエレクトーンは噛みあうのか? エレクトーンと一緒に、マイクを通さず歌い、語り、違和感なく演奏できるのか?……

第9回「トロッタの会」は、疑問符を抱えたままで幕を開け、閉じた。すっきりした解答は得ていない。しかし手応えはあった。

“詩と音楽を歌い、奏でる”は「トロッタの会」のテーマである。2007年以来、年平均3回のペースで開催し、第9回をエレクトーンシティ渋谷で行った。クラシックで用いる楽器を基本に、PAを通さない生演奏を行う。歌と同様、詩唱=朗読も五線譜上に声部を設け、発声する箇所を厳密にする。意識としては室内楽の演奏会だ。そこに、電子楽器であるエレクトーンを取り入れようとした。

まったく初めての試みだったが、トロッタにはもともと新曲が多い。第9回のプログラムも、11曲のうち4曲が初演、6曲が改訂および編作初演である。未知の領域に向かっているのだから、恐れることはないはずだった。

唯一のエレクトーン奏者で、『アルバ/理想の海』の作曲者、大谷歩の言葉……。

「エレクトーンは、一台で多様なジャンルや音色が表現できるだけに、詩唱や生の楽器のよさを消してしまうのでは? という不安がありました。でも練習と本番を通じて、エレクトーンは生楽器とのアンサンブルも十分に楽しめるんだという発見をし、とても貴重な経験だったと思います」

もちろん批判はあったが、お客様からも好意的なご意見をいただいている。

「情景の転換がエレクトーンによって効果的に表現された」「エレクトーンを含め、詩と音楽が融け合って想像力を膨らませてくれた」「いろいろな試みができそうなホールで楽しみ」などである。足を運んでくれた作曲家から、エレクトーンのための曲を書きたいという声があがったことも付記しておこう。

時期は未定だが、「トロッタの会」を再びエレクトーンシティ渋谷で開きたい。その時は、過去の課題を解決し、将来に向けて新たな課題が生まれるような挑戦をしたいと思っている。

トロッタの会 木部与巴仁

(上から)写真2:エレクトーン奏者/大谷 歩

2009年9月27日 エレクトーンシティ渋谷