エレクトーンの未来を明るくする6つの作品を披露 COMPOSITIONS 2011

『COMPOSITIONS』は1990年に始まり、13回目を迎えた今回は、6つの作品が演奏されました。これまでにこの演奏会で発表した作品は、全部で79曲となりました。

松本裕樹氏の自作自演。3曲からなる小組曲は、それぞれ白鍵のみ、黒鍵のみ、白と黒の両方の鍵盤を使うという色彩豊かでユニークな作品。

酒井隆博氏は大学院生で同じく自作自演。エレクトーンを自ら演奏しながら音色や雰囲気をつかむというアプローチで作曲。エネルギッシュな演奏は、作曲過程での化学反応で生まれたのでしょうか。

西山淑子氏の金子みすゞの詩による作品はまさにライフワーク。声楽家の西脇香織氏との共演で彼女ならではの世界観を表現。

三宅康弘氏は、2台の鍵盤を向き合わせ、間に奏者を置く斬新な楽器配置。桑原哲章氏は、このコンセプトを汲んで、目の前にある空間を操るかのように演じました。

橘川琢氏の作品は、「ビオトープ」をテーマに、透明感が漂う心癒される作品。筆者・福地奈津子がイメージを音色に置き換え、エレクトーンにしかない音色での表現を展開しました。

菊地雅春氏の出品12回は最多。その作品を多く初演してきた安藤江利氏と素晴らしいリコーダー奏者の吉澤実氏との初共演の作品は、4曲で構成される森の主イサルーと小鳥のキーアが登場する物語です。古楽器と呼ばれるリコーダーに対して新楽器とも言えるエレクトーンとの相性の良さとそれぞれの持つ音色の美しさに聴衆は酔いしれていました。

6つの作品のコンセプトがよく活かされた6つの演奏は、大変個性豊かであり、どれもがエレクトーンの未来を明るくする作品であったことは、作曲者の作品への真剣な取り組みと、奏者の作品への愛情あふれる取り組みの賜物であったように思います。

日本音楽舞踊会議/福地 奈津子

(上から)写真1:宅康弘氏の楽曲を演奏する桑原哲章氏。|写真2:写真・奈良岡 忠

2011年2月26日 エレクトーンシティ渋谷