若き音楽家の登場 フレッシュ・コンサート ~電子オルガン科専攻・卒業生による~

音楽大学の「電子オルガン科」在籍生あるいは卒業生に演奏の場を提供しようと企画されたリサイタル形式のコンサート。3大学の教授陣からそれぞれ推薦を得て、今回は卒業生3名が思い思いの曲を披露した。持ち時間は一人30分。

トップバッターは長井里衣(洗足学園音楽大学)。音楽教室の講師を務めながらオペラ伴奏等の演奏活動も行っている。1曲目(バラキレフ曲/イスラメイ‐東洋風幻想曲‐)の演奏から笑顔を見せる余裕で、本人が演奏を楽しんでいる様子が聴く側にも伝わる。自作曲をはさみ、もう1曲ピアノ曲。ピアノ曲のオーケストレーションはエレクトーンならでは妙味と言えるが、電子音も駆使し難曲を見事に弾ききった。

二人目は菊地友夏(国立音楽大学)。起承転結を感じさせるプログラム構成で、特に3曲目(“転”)は、原曲はバッハのヴァイオリンコンチェルトであるが「おしゃべりのように聞こえたので……」とぺちゃくちゃ話をしているよう音色を組んで演奏。日頃、合唱伴奏や歌曲の伴奏(オーケストラの再現)とは違う一面を見せた。

ラストは沈媛(シンユアン)(聖徳大学)。彼女は聖徳大学博士課程を修了。現在、北京中央音楽学院で電子オルガンの教鞭をとっている。このコンサートのために来日した。故郷そして母を思い自作した交響詩「白樺」に始まり、中国の作曲家・呉祖強の曲まで4曲は、自作のポップス調楽曲も含め彼女の多才さと、彼女なりの曲に対する強い思い入れが感じられる演奏であった。

エレクトーンの演奏においては、先にも書いたがピアノ曲のオーケストレーション、オーケストラを含む器楽曲のリダクション等、表現の幅が広い。さらに様々な音色・エフェクトを駆使すればその音楽は演奏者の個性そのものと言える。若き音楽家の活躍に期待したい。

エレクトーンシティ渋谷・記

(上から)写真1:長井里衣|写真2:菊地友夏|写真3:沈媛

2011年6月26日 エレクトーンシティ渋谷

[プログラム]
長井里衣
イスラメイ‐東洋風幻想曲‐/M.バラキレフ
Scenery of notes /長井里衣
喜びの島/C.A.ドビュッシー
菊地友夏
ピアノソナタNo.6(第一楽章)/S.プロコフィエフ
弦楽セレナード(第二楽章)/E.エルガー
コンチェルト in E/J.S.バッハ
藍/菊地友夏
沈媛
交響詩「白樺」/沈媛
東方の暦/増本伎共子
The Fading Memory/沈媛
Red Memory/呉祖強