観て、聴いて、想像して楽しむ舞台 朗読と音楽で綴るサンド物語 『ノクターンの旅路~ショパンとの愛の日々』

ピアノの詩人ショパン。彼の、音楽に捧げた人生の中に“ジョルジュ・サンド”という一人の女性がいたことをご存知でしょうか。女性が男性と平等に働くことなど考えられなかった200年も前に、女流作家として嵐のように情熱のままに誇り高く生き抜いたジョルジュ・サンドの人生を綴った、朗読と音楽で繰り広げられる全く新しい形の舞台が8月3日に初演されました。

原作者である こやま峰子さんは、児童文学作家であり、詩人・エッセイストとして活躍され、長年にわたりジョルジュ・サンドの研究を重ねてこられた方。何度もフランスに足を運ばれてきたその熱い思いを受け、作曲家である中村守孝さんが詩に曲を付け、前嶋ののさんの脚本・演出のもと、全く新しい形の舞台となりました。観て、聴いて、想像して楽しむ舞台は、お越しいただいた方々すべての人の心に残る作品となったことと思います。

ピアノとエレクトーンによるショパンのピアノコンチェルトの甘美なメロディーを幕開けとして、作品はジョルジュ・サンドが幼少の頃から彼女の人生を追うように進んでいきます。幼くして父と弟をほぼ同時に亡くし、母親とも離れ離れになり祖母に育てられたジョルジュ。成長し、結婚、離婚、やがてフランス2月革命時代に様々な芸術家との交流を計りながら作家としての道を歩んでいきます。そしてショパンとの出会い、そこに生まれる博愛の世界、別れ。そんな彼女の劇的な人生の物語を、かとうかず子さんが朗読で語っていきます。さらに生まれ故郷であるフランスはノアンの風景や人との出会い、様々な想いを込めた8つの詩に中村守孝氏が作曲した劇中歌を、伊東えりさんの歌とエレクトーンによる演奏で表現し、ジョルジュがショパンと出会ってからは、須江太郎さんがその名曲の数々を奏でていく。

少し男勝りな一面を持ちながらもショパンや子どもたちに深い愛情を注いでいった彼女と、その背景をも見事に表現された女優・かとうかず子さん、劇中歌でまるでその時代にタイムスリップしたかのように情景・心情を歌われた歌手の伊東えりさん、ショパンがそこで弾いているかのような錯覚さえ覚え、演奏に引き込んだピアニスト須江太郎さんの好演は素晴らしいものでした。この魅力ある作品の中で現代の楽器であるエレクトーンを使っていただいたこともとても意義のあることでした。劇中歌のオーケストレーションはもちろん、物語の変化と風景や心情の移り変わりを効果音とオリジナルの曲で表現し、より色彩感を増すことができたのではないか、コンサートで楽曲だけを演奏するのとは、また一味違った形で楽器としての存在感を感じていただくことができたように思います。

今回ご覧いただけなかった皆様にもこの舞台をいつの日か観ていただける機会が来ることを願っています。

エレクトーン演奏家/長谷川幹人

(上から)写真3:ピアノ/須江太郎、朗読/かとうかず子、原作/こやま峰子、作曲/中村守孝、歌/伊東えり、エレクトーン/長谷川幹人

2014年8月3日 エレクトーンシティ渋谷