日本音楽舞踊会議主催による2つのコンサートより

日本音楽舞踊会議とは、音楽家と舞踊家が共に研究や演奏活動をしている団体で、創立53年になります。1990年からは、エレクトーンを活用したコンサートを積極的に続けおり、昨年11月には『ELオーケストラによるコンチェルトとアリアの夕べ』と『COMPOSITIONS 2016~エレクトーンの為の作品コンサート~』を開催しました。

ソリストの望みを叶える一夜 ELオーケストラによるコンチェルトとアリアの夕べ (2016年11月18日)

ソリストの望みを叶える一夜 ELオーケストラによるコンチェルトとアリアの夕べ (2016年11月18日)

このコンサートを毎年行うようになってから早4年。毎回出演希望者が多く、人数を絞るに一苦労という状況は、演奏家がいかにオーケストラ伴奏で演奏したいかということ物語っています。

今回は、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番(ピアノ/寒河江真弓)、第5番(ピアノ/宇都由美子)、ショパン:アンダンテスピアナートと華麗な大ポロネーズ(ピアノ/戸引小夜子)、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番(ピアノ/山下早苗)、プッチーニ、ベッリーニのアリア(ソプラノ/小彩波、村上貴子)と名曲揃いに加え、本会会員・高橋通『不安定なアスペクト~尺八とオーケストラの為の~』(尺八/川俣夜山)と橘川啄『ピアノと管弦楽による「錦秋賀」』(ピアノ/小崎幸子)の2作品も演奏され、バラエティーに富んだプログラムとなりました。指揮は、寺島康朗。エレクトーン奏者は、市川侑乃・清水彩香・鈴木栄奈・内藤香里・西山淑子の5名。曲によって2台または3台のエレクトーンでスコアを忠実に再現し、素晴らしいオーケストラサウンドでソリストを支えました。「原曲通りのオーケストラ伴奏で演奏する」という演奏家の望みが叶った一夜でした。

エレクトーンのための作品を集め、その可能性を示す COMPOSITIONS 2016 ~エレクトーンの為の作品コンサート~ (2016年11月25日)

今回で15回目。この日発表された作品も含め、初回より86曲を初演・再演してきました。

演奏者は楽譜を渡されるとまずレジストレーション(音作り)という過程があり、作曲家が音色に関してどのように指示するか、演奏者がどんな音を作るかで、どんな音楽が完成するかが決まってきます。そのため、演奏者は『第2の創造者』とも言われます。そこがエレクトーンの大きな特徴であり、アコースティックな楽器との違いです。それぞれの作品がエレクトーンの多彩な可能性を示してくれました。

トップは、福地奈津子・山田多賀乃作曲「Turn Composition "kirameki" ~2人の奏者のための~」[2008年作。再演]。お互いに順番に自らのパートを作曲し、触発、融合してゆきます。演奏は作曲者・福地奈津子と榎本美那子。

続いて、田口和之作曲「Sagittarius」[2015年作。再演]。市川侑乃(演奏者)が自らのリサイタルのために委嘱した作品で、ライブパフォーマンスに特化してエレクトーンの可能性を追求した作品。

次は、橘川琢作曲「合唱交響詩『招賀・花幻会』Op.95」[2016年作。初演]。混声合唱曲をエレクトーンソロで演奏するという試み。声明や雅楽を彷彿とさせるスケールの大きな音楽で、奈良・平安の古都へ誘われました。「和」の音作りが興味深い。演奏は福地奈津子。

4曲目は、高橋 通作曲「〈幼き頃の風景〉より3つの小品 1.前奏曲(おぼろげな記臆)2.おどり(レコードのある部屋)3.夢(優しい母のいる縁側)」[改定初演]。二十歳の頃書いたピアノ連弾を編曲したもの。エレクトーンならではの多彩な音色が次々と飛び出し、作曲者の心情をよく表していました。演奏は、佐々木彩香と西山淑子。

続いて、菊地雅春作曲「12のわらべうた」「大日本活劇絵巻 其乃壱 "猿飛佐助"」[1982年作。再演]2曲ともエレクトーンコンクールに出場する人のために作曲されたもの。身体性が良く考慮されていてエレクトーンの演奏スタイルの原点と言える作品。34年を経ても色褪せていないところが素晴らしい。演奏は安藤江利。

最後は、中島恒雄作曲「飾り棚の上の時間II」[改定初演]。自分の好きな響きを集めて飾り棚に並べたような作品とのこと。「現代音楽」を脱却した調性のあるとても安心して聴ける響きで、またエレクトーンでなければならない作品でした。演奏は市川侑乃。

理事/西山淑子

2016年11月18日、25日 エレクトーンシティ渋谷