3人の異色コラボで幽玄に描く!川井郁子 CONCERT TOUR 2018 LUNA〜千年の恋がたり〜

ヴァイリオリニスト/作曲家の川井郁子は、もはや演奏という一つの領域に留まらず、映像、演劇、バレエ等、ボーダーレスな芸術家として多くを魅了している(フィギュアスケート界にもファンを有し、羽生結弦選手をはじめ世界の選手に、これまでに14曲を楽曲提供している)。

2公演の前半は、川井と特別ゲストのジャズピアニスト・国府弘子との演奏。筆者は後半の『源氏がたり』にて演奏した。これは林真理子作『源氏がたり』を題材に、川井が音楽/演出を手掛けたひとり舞台で、楽曲7曲と即興的な音楽から成る。元々は数人の和楽器奏者の演奏であったが、初演を鑑賞した作曲家・三枝成彰により、ヴァイオリン、和楽器奏者(和太鼓/笛)、そしてエレクトーンの奏者3人の編成による新たな世界観の可能性を提案、筆者の参加に至った。エレクトーン演奏の編曲やサウンド、即興演奏などは一度の打ち合わせのみで筆者に委ねられた。

多くの公演で川井を支える和太鼓奏者の吉井盛悟は、和楽器のみならず世界の民族楽器、古今東西の音楽に精通し国内外で多くの演奏経験のある名演奏家で、今回の演出にも名を連ねている。舞台は左方にエレクトーン、右方に和太鼓群が設置され、中央で美しい唐衣を纏った川井が、源氏に翻弄された女の情念を語り、演じ、奏でた。照明効果もあり、コンサートの域を越え、さながら川井による「モノオペラ」のような、新しい形の舞台であると筆者は感じた。

崇高でありながら、観客にとって重要なエンタテインメントという要素も失わない川井の所作、存在自体の優美さは、音楽とともに皆を陶酔させ、源氏の世界へ誘う。“アーティストとは、常に学び創造し発信して、それを観客と共有することができる存在なのだ”と深く感じ、川井に魅了された公演であった。(敬称略)

エレクトーン演奏家/清水のりこ

2018年1月27日 和歌山・紀南文化会館、2018年1月28日 福岡・黒崎ひびしんホール