ダンス、絵本、朗読、チェロ、エレクトーン…、その交差点 Intersection

コンサートタイトル『Intersection』は交差点という意味を持つ。チェロ、エレクトーン、ダンス、絵本…と、このコンサートを構成する要素や人物が、それぞれ異なる歴史や性格を持ちながらおのおのの道を歩んでいる中で、5月20日に交差する点、という意味を込めてつけたものだ。この一瞬のために、これまでたびたび共演をしてきたチェリスト村上咲依子さんと、じっくり時間をかけて作ってきた。

1部は“ダンスと音楽”。ピアソラの「タンゴ・バレエ」を弦楽器・電子音・クワイヤの音を軸に盛り込んだエレクトーンとチェロにアレンジし、それをもとに、ダンサー・藤浦功一氏に自由な解釈で振り付け、パフォーマンスを依頼。何度も試行錯誤とリハーサルを重ね、スタイリッシュで官能的、これまでに体感したことのない世界が広がった。

2部は“お話と音楽”。絵本『チェロの木』(いせひでこ著) に作曲家・菊地晴夏氏がつけた曲を演奏しながら、津久井舞氏が朗読。合わせて壁いっぱいに絵本が投影された。絵本、表情豊かな音楽、優しい声が相まって温かく感情を揺さぶり、唯一無二の総合作品となった。

会場は東京のど真ん中、閑静な住宅街に佇む絵本塾ホール。演劇や朗読などに多く利用されるシアター系の空間としては珍しい、クラシックコンサートにも充分対応する響きを持つ。真っ白な壁は、前半は、そこに薄っすらと照明を落とすことにより無機質で想像力を掻き立てる空間に、後半は、出演者をも包み込む大きな絵画へと、演目に応じて変化した。

私自身、今年は人生の節目の年となり、エレクトーンを自らの唯一のアウトプットツールとして、どのように交差できるのか…葛藤もありつつ、今やりたいことを詰め込んだ大切なコンサートとなった。2回公演満員のお客様からは、たくさんの感想をいただき、いろんな視点から見た二つの世界を改めて新鮮に感じることができたことも喜びの一つだ。

著・エレクトーン演奏家/菊地友夏

エレクトーン演奏/菊地友夏

2018年5月20日 絵本塾ホール