「音楽っていいな」という原点に戻って きくちいまいStudio Mμ Concert

このコンサートは、6月1日と2日に両国にて今井学さんと行ったコンサート“うたうだけ”の企画を知った、Studio Μμのオーナー中村美幸さんが、ぜひ前橋でも開いてほしいとご依頼くださり、ELS-02Cと音響環境が整ったスタジオで開催した。

前半は、現代音楽、映画音楽、ポピュラー音楽など、多岐にわたり作品を残した武満徹の中でも特に親しまれる“SONGS”を、新しい編曲で取り上げた。「…これが“うた”であることの喜び、それが“うた”でないことのゆくえ…」というテーマを軸に、作編曲家の妹・晴夏を含む3人それぞれの挑戦が展開され、今やりたいことを擦り合わせ集結させた。後半は、私たちのホームグランドであるミュージカルやディズニーを。男性ボーカル一人でのディズニーは予想以上に曲目の幅が狭く、鍵盤ハーモニカや弾き歌いなど、飽きない工夫を凝らしてのセットリストとなった。

終えてみれば、小難しいことは置いておき「音楽っていいな」「この曲ステキだな」というお客様からの感想が素直にうれしかった。

それは恐らく私自身がエレクトーンの楽器そのものの高機能さや、技、要するテクニックいう壁に遮られ、がんじがらめになっていて、「音楽っていいな」と言うシンプルな感情を失っていたからかもしれない。今井学さんと出会い、歌手とエレクトーン奏者であること以前にお互い表現者であるという認識で向き合い、あえて多彩な音とリズムセクションとエレクトーン的裏技といったテクニックを取り除いたアレンジで、やりたいことに向かって行くことができたから。楽譜を丁寧に読み、“いいところ”を探していくというのは、簡単そうで本当はとても高度な試みであることを改めて痛感しながら、この感覚を忘れずにまた挑戦したいと思う。

著・エレクトーン演奏家/菊地友夏

エレクトーン演奏/菊地友夏

2019年6月30日 群馬県前橋市・Studio Μμ