西岡奈津子(にしおか・なつこ)

新しいオペラのムーブメントとして注目されている、銀座オペラ。エレクトーン伴奏で贈るヤマハホールのオペラ第2弾に出演の西岡奈津子さんが語る、オペラの魅力とは?

—エレクトーンとの出会いは?

6歳の頃から、個人の先生に就いてエレトーンとピアノを習っていました。実は、あまり熱心な生徒ではなかったのですが、エレクトーンで受験できる聖徳大学付属高校音楽科に入学して、いろいろな楽器や声楽専攻の人たちにものすごく刺激を受け、歌の人とのアンサンブルの試験があったりと交流も深まり、視野が広がりました。そこで、作曲を含めたエレクトーンの勉強をしたくて、東京コンセルヴァトアール尚美(現・尚美ミュージックカレッジ専門学校)に進学しました。

—東京コンセルヴァトアール尚美に在学中、SEQ(尚美エレクトーンカルテット)に参加されました。

はい。私たちは2期生です。エレクトーン4台で、指揮者がついてオーケストラ曲を演奏するという、当時としては実験的な試みでした。エレクトーンシティの協力を得て、指導者を紹介していただいたり…。エレクトーンのアンサンブル自体の経験も少なく、指揮者を見て演奏するのは初めての経験でした。初めてのお仕事も、このときにお世話になった指揮者の方にオペラの団体を紹介されたのがきっかけでした。

—1990年後半は、オペラの世界では、エレクトーンは一歩を踏み出したばかりという時期でした。

そうですね。まずはオペラ界の常識、リハーサルの流れなどの基本的なことがわからず苦労しました。エレクトーンにマイナスイメージを持っている方もいらっしゃって、当初は私たちエレクトーン奏者のほうが長い歴史のあるオペラの方たちに一方的に歩み寄っていくだけでした。しかし、最近では、「フルスコアの編成だと(楽器の)持ち替えがあるけれど、ここはそのままいってもいいのでは?」といった音楽的であればスコアにとらわれなくていいという話ができるようになり、指揮者の方から歩み寄ってくれるようになってきたかなと思います。オペラ伴奏はEL-90の頃から始めましたが、オペラに必要な膨大なレジストデータもEL-900からはネクストソング機能で問題なくなりましたし、STAGEAではリアスピーカーが付いてアンサンブルが格段にしやすくなりました。

—アーツ・カンパニーのオペラ『カルメン』公演に、数多く参加されています。

最初のころからですから、17年目になります。エレクトーンは二人で組むことが多く、プレイヤーは入れ替わり立ち替わりですが、延べ500回を超えたそうです! 演目の力が大きいですね。文化庁主催“本物の舞台芸術体験事業”もその中に含まれます。日本全国の学校を回り、私がまだ行っていないのは滋賀県と和歌山県だけです。対馬、宮古島、石垣島、種子島など離島にもたくさん出かけました。離島でほほえましいのは、開演前に、島内の放送で「これから○○小学校で音楽劇があります」って流れて、そうすると島民の方たちがぞくぞくとやってくるんです。公演のあと、地方ではNHKのニュースでもよく取り上げられ映像が流れます。

—エレクトーンに対する反響はいかがですか?

意外なことに、いろいろなところを回って思うのは、今のエレクトーンを聴いたことがない人が多いということです。終演後に楽器を見にくる方もいますし、お子さんも興味を持って「やってみたい」と言ってくれたり、先生方も学校に欲しいとおっしゃったり…。オペラでは演奏者は美術や照明などと同じスタッフという立場です。スタッフは表舞台には出ませんが、自分たちがいるからオペラができているという誇りがあり、こだわりがある。そういった人たちみんなで一つのものを作り上げていく。お互いに刺激を受けますし、自分がオペラの全パートの一部分として、新しい楽器で参加しているということが楽しいです。

—韓国オペラ公演も大好評と聞きました。

韓国の人たちは、エレクトーンに対する偏見が全くなく、最初から珍しい楽器がある!とウエルカムでした。大陸的で感情を素直に出して見てくれますし、すごくやりやすかったですね。カーテンコールが大熱狂で、ミラーボールが回るんですよ。歌い手さんがひと通り終わったら、オーケストラピットがせり上がって、また大熱狂でした。

—銀座オペラ『愛の妙薬』は、一人でオンステージの演奏です。

銀座オペラではソロで指揮者もいないので、この公演では私が指揮者の役目を兼ねます。自分の解釈をしっかり持たなければいけません。また、ドニゼッティは編成の大きなプッチーニなどと違い、オーケストレーションがシンプルです。その分、アレンジも難しく、ポジションひとつ変えても違うものになってしまう難しさがあります。大変ですが、それを乗り越えていかないといけませんね。原曲を音楽的に生かすエレクトーンならではのアプローチをこれからも追求していきたいと思います。

—最後に、西岡さんにとって、エレクトーンとは?

絵を描く人が、自分の表現方法として、水彩より油が得意とか、人によってはクロッキーが得意とかありますよね。私はピアノも弾きますが、自分を表現するのに一番いいのがエレクトーンです。自分の思っていることを表現できる存在なんです。