鈴木弥生(すずき・やよい)

4歳からヤマハ音楽教室に学び、音楽大学に入学。在学中より演奏活動を始めた鈴木弥生さん。敷居は低く、間口が広い、一般の音楽好きの方たちのためのエレクトーンコンサートをやっていきたいと語ります。

—エレクトーンを始めたのはいつ頃からですか?

4歳になりたての頃、ヤマハ音楽教室の幼児科に入りました。両親は、おもちゃがわりになるかな、とエレクトーンを購入したと聞いています。

—どんな生徒さんでしたか?

小学生になって、ジュニア科専門コース(J専)に入り、週2回、グループレッスンと個人レッスンを楽しくて続けていました。親から「練習しなさい」と言われたことは一回もなかったですね。グループにエレクトーンは私一人で、楽器店のJ専のエレクトーン一期生。アンサンブルではベースをよく担当していました。その頃アンサンブルに親しんだこと、J専の仲間との出会いは今の仕事にもつながっています。高校は都立高校の家政科で、服飾関係に進むと思っていましたけれど、エレクトーンを弾けなくなるのが辛いと高校の先生に相談したら「じゃあ、音楽に進めば?」と。将来的に音楽を仕事にするってちゃんと決めたのは大学生の頃かもしれません。実は、大学に入学するまで、ただただ楽しくレッスンに通っていて、(市販の)データで演奏して、レジストを作ったこともアレンジをしたこともなかったんです。

—大学入学前には、エレクトーン演奏グレード4級を取得されています。

オリジナルはJOCで毎年課題を作っていました。それと、中学から小寺久美子先生にレッスンを受けた影響は大きかったと思います。データを買って弾いていただけで、ここで何が鳴っているか把握していなかった私に、「バイオリンはこうして弾いているんだよ」とか「トランペットはこうして吹いているんだよ」ということを教えてくれ、イメージをわかりやすく伝えてくださった。そんな小寺先生や大学時代の恩師の海津幸子先生への憧れから演奏をしていきたいと思うようになりました。

—演奏のお仕事への道のりはいかがでしたか?

大学時代は月に一回くらい演奏の機会があり、大学と楽器店のEFや発表会で演奏をしながら過ごし、環境に恵まれていました。ところが、卒業するとパタッと演奏する機会が減り、20代前半は悶々とやめたらどうするかばかり考えていました。家族からは、それでも「好きにやりなさい」と言われ、かえって辛かったです。そんなとき、大きな出会いがありました。海津先生の主催する「コンチェルトクラブ」での演奏を聴いて、指揮者でピアニストの桑原巌さんとエレクトーン奏者の三浦美帆さんに「コンチェルトキャラバン」というコンサートに誘ってもらいました。二人は私の音楽をやりたいという気持ちを応援してくれ、「自分でコンサートを企画すれば?」と背中を押してくれました。それまで仕事は待っているもので、自分で企画するという発想がなかった…。

—自主企画を立てていくようになったのですね。

大学の卒業生による自主コンサートの制作で手応えを得て、イタリア語で「遊ぼう!」という意味の「Giochiamo!(ジョキアーモ)」という自主コンサートを2012年12月にエレクトーンシティ渋谷で開催しました。オペラ歌手の方たちと一緒に、オペラアリア・重唱や歌曲のほか、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を元にしたオリジナル音楽劇を上演しました。「Giochiamo!」は、2013年、2014年、そして2015年と続けています。一台のエレクトーンで、自分でできることを最大限努力しようと思ってやっています。

—共演者やお客様の反応はいかがですか?

普通の人たちにとって敷居が低くて、間口も広く、誰でも楽しめて、でも内容はきっちりしているものをやりたいとつねづね思っています。2014年秋に行ったテノールの富澤祥行さんのリサイタルがまさにそういうコンサートでした。「Giochiamo!」に出ていただいたとき「僕の初めてのリサイタルは弥生ちゃんとエレクトーンと一緒!」とおっしゃっていたのが、実現しました。私のやりたいことを聞いて企画してくださり、エレクトーンの良さを生かし、コンサートは初めてという人でも楽しんでいただけるものになりました。「また来ます」というお客様が多いんです!「音楽の入口」になり、エレクトーンが普通の方たちの耳に触れる機会が増えるといいなと思います。今度は、ミュージカルに挑戦しようと思っています。

—最後に、鈴木さんにとってエレクトーンとは?

難しいですね。私、もともと力みがなくて、自分をアピールするのも苦手なんです。音楽教室の頃からこういう感じで育ってきたので、音楽がすごく好きという自覚はあってもエレクトーンに執着している感覚はなく…。ただ、「初めて先生の体験レッスンに来たときに、エレクトーン愛にあふれていて、この先生だったらやっていけると思った」って生徒が言ってくれたことがあるんです。自覚はしていないけれど、すごく好きなのかもしれないですね。それに、エレクトーンをやっていなければ、音楽の仕事をやっていなかったかもしれないし、大切な人たちとは出会えなかった。やはり、大事な存在だなと思います。