佐伯栄一

 

 

小谷:今夜は音楽プロデューサー、作曲家、編曲家の佐伯栄一さんにお越しいただきました!よろしくお願いします!
佐伯栄一(以下、佐伯):こんばんわーよろしくお願いしまーす!
小谷、小南:よろしくお願いしまーす!

小谷:それでは最初に、佐伯さんのプロフィールをご紹介します。

~佐伯栄一プロフィール~

2006年に単身渡英して音楽活動を本格的にスタート。海外のフィルムワーク、ファッションショーなどの音楽、アメリカやヨーロッパ等のテレビCMや舞台音楽、昨年末には話題の総合格闘技「RIZIN」の音楽を担当。また、アーティストへの楽曲提供、アレンジの他、音楽制作チーム「LCA Creative Service」名義の活動、そしてアーティスト名義「The PBJ」としては、日本のダンスミュージック界を牽引と、多岐に渡って活動している。

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音楽活動の悩みは世界共通……?

小谷:プロフィールで「単身渡英」とあるのですが、佐伯さんの音楽活動はイギリスからスタートされているんですか?
佐伯:まあ、その前にも音楽はやっていたんですけど、なんというか「ちゃんと」仕事として音楽をやり始めたのが、イギリスから、という感じなんです。
小谷:ふーん、なるほど。
佐伯:カッコいいですよね!
小谷:すげえカッコいい!
佐伯:俺もそう思ってます!

(一同笑)

小谷:(笑)、それでは、その渡英は「日本より海外でスタートしたかった」ということなのか、最初から(イギリスでのデビューを)狙っていたのか……どういった経緯だったんでしょう?
佐伯:あのー、(渡英当時)25くらいだったんですけど、25くらいになると、「海外行っちゃおうよ!」「海外でやっちゃおうよ!」って気分になるじゃないですか、だいたいの人って!
小谷:あー、なるほどなるほど(笑)
佐伯:だいたいそうじゃないですか、常識でいうと!そういう感じです!(笑)
小谷:それじゃあ、言葉の問題とか、色々ためらう要素とかは無かったんですか?
佐伯:えっと、ためらわないで行ったんですけど、「(英語を)勉強していけばよかった」って向こうで反省しました!

(一同笑)

小谷:すごいポジティブな方ですね!
佐伯:そうなんです何も勉強しないで行っちゃったんで。ビックリしましたね!みんな英語喋ってるんですもの!

(一同笑)

佐伯:「あー、英語なんだー」って(笑)。ビックリしちゃいました。
小谷:なるほど(笑)。そんなイギリスでは、実際どのような活動をされていたんですか?
佐伯:えっと、とりあえずご飯食べたりしてたんですけど……あとは、散歩したり?
小谷・小南:(笑)
佐伯:……で、音楽もやってみたり、部屋の壁ドンドン叩かれたり(笑)下から!
小谷・小南:(笑)
佐伯:もうすごいんですよ外国って!でっかい声で「SHUT UP!!」「ガンガンガンガン!」みたいな。もう日本のレベルじゃないんですよ、騒音の苦情が。
小南:そういうのと戦ってたんですね、イギリスでは。
小谷:今の佐伯さんの作られる音楽は、EDMであるとか、いわゆるアゲアゲな音楽が多いですが、その頃から、ダンスミュージックをメインで作られていたんですか?
佐伯:そうですね。それ(ダンスミュージックを作っていた)なんで、ガンガン叩かれちゃったカンジなんですよね。
小谷:なるほど。
佐伯:(ダンスミュージックって)気がついたらデカくなっちゃうじゃないですか、音量が。そしたら「うわー!」「Oh My God!!」みたいな(笑)。
小南:(笑)
佐伯:それで、音をそっと消していないフリしたりね。

(一同笑)

小谷:それ、バレますよね!(笑)僕もやったことありますけど!
佐伯:あ、あります?やっぱ!
小谷:いないフリして、寝てたフリとかしてたことありますけど(笑)
佐伯:バレますよね(笑)。
小谷:バレますよね〜(笑)。

佐伯さんが体験した
「シェア」する文化とは?

小谷:それでは、イギリスでの活動期間はどのくらいだったんですか?
佐伯:2年くらいですね。海外って、「知り合いづて」っていうのがすごく多くて……文化の違いだと思うんですけど、「シェアする文化」なんですよね、家とかを。
小谷:あ、家をなんですか?
佐伯:1人暮らしする人ってほぼいないんで。
小谷:へー!
佐伯:一つの家の中に、「こういう音楽やってる人がいるよ」「こんな音楽やってる人がいるよ」っていうような繋がりがどんどんできてって、そこから「ちょっとコレやってみない?」みたいな。
小南:楽しそう!
佐伯:そう、そういうのが日本と違って結構楽しいんですよね。
小谷:なるほど。では、そこからどんどんコミュニティも広がっていって、という。
小南:そこで、作曲家として活動を始められたんですね。
佐伯:そうですね。向こう(イギリス)って、別に「作曲家だよ」って名乗ることに、日本だとありがちな「何、それでお金貰ってんの?」「それで生活してんの?」みたいなアレは無くて、「自分はアーティストだ」って言えばアーティストなんで。
小谷・小南:ほー!
佐伯:それでなんか、そういう繋がりで仕事をしたりとか。気付いたら「仕事だったんだ、コレ?!」みたいな、後でお金貰ったねーとか。
小谷:へー……面白いですね、そういう文化の違いというか。ではそこから日本に戻って来られて、色々なお仕事をどんどんされていく、ってことなんですね?
佐伯:そうですね!

総合格闘技「RIZIN」の音楽監督を担当

小谷:プロフィールで資料を頂いて追っていく中で気になったのが、格闘技のBGM制作だったり、「音楽監督」という肩書きになっていますが、これはどういうことをされたんでしょうか?
佐伯:あぁ、去年のですね。昨年末「PRIDE」って前身のイベントが10年ぶりに、今度は「RIZIN」ってイベントをやったんですが、それの音楽監督ってかたちですね。試合のテーマソングだとか、インターバルの曲だとか、選手が勝利した瞬間に流れる曲、退場の曲……。
小南:ぜーんぶ作ったんですね?
佐伯:そう、全部!プラス、あとは選手の入場曲ってあるじゃないですか。アレを全部チェックして、音圧を揃えたり、あとは演出上で「この曲はこのタイミングから流すとカッコいいよね」とか。
小南:演出ってそういうことなんですね。
佐伯:そうっす!それで、その入場のタイミングに「バーン!」とキューを出して、みたいな。
小谷:ほー。ちょっと気になるんで、早速そんなRIZINの楽曲を聴かせていただけないでしょうか。
佐伯:はい。じゃあ1曲目は、「Theme of RIZIN」。お願いします!


 
小谷:これは、ものすごく盛り上がる楽曲!なんですか、このフツフツと始まりの雰囲気が……!あ、曲の使われ方は合ってますか、始まりで?
佐伯:合ってます!(笑)
小谷:「来るぞ来るぞ〜」って感じ、ありますね!
佐伯:これに、がなる女の人、レニー・ハートっていう人なんですが、
小南:「○○(選手名)〜!!」っていう?
佐伯:そうそう、あの人が、この曲に合わせて選手の名前を言ったりするの!
小谷・小南:うわー、すごーい!

「音楽監督」という仕事について

小谷:先ほど、総合格闘技RIZINの「音楽監督」というお話があったのですが、この「音楽監督」、どういうことをされているのでしょうか?
佐伯:そうですね、普通に作曲するだけじゃなく、
僕、RIZIN以外にもイベント色々やってて、多分他の人に比べて、イベントいっぱいやってる作曲家だと思うんですよ。そういうイベントのお仕事だと、普通に作曲するだけじゃなく、選曲とか、「このタイミングでこの曲を流そう」とか、「出演者が退場するときはこっちの曲の方がいいんじゃないか」とか、あとは音楽の音量を上げて場を煽ったりとか。
(MCさんが)「○○さんありがとうございましたー!」なんて言った後はだいたい音楽って盛り上がるんですよね。で、ちょっと(音楽が)落ち着いてって、トークが始まる、とか。そういう音楽的な演出をするお仕事。
小南:それを現場で全部決める。
佐伯:そうですね、あと、事前にSEを用意して、台本には付箋とか貼って、そこにM番号(M=Music)振って、「ここではこういうことをする」「音的にはこれを流す」っていうのを全部決めて、あとはそれに従って音効さんが音を流す、と。
小谷:ほー……なるほど。
小南:なんかDJみたいな感じですね!
佐伯:そうですね!なので時々ホントに、DJのセット持って行ってやった方がいいんじゃないかって思う時もあるんですよ!ホントに!(笑)
小南:今は指示するって感じなんですね。
佐伯:そうですね。あとは格闘技だと、「選手の入場曲がありません。どういうのがいいですか?」って言われて、こっちで選んだり、(曲を)作ったり。
小谷・小南:ほー……。
佐伯:こないだ出た選手で、オリンピックにも出場してる村田夏南子って選手がいるんですけど、その人の入場曲は、俺が作りました。
小南:それは「こういう曲がいい」という要望があったんですか?
佐伯:いや、もう3パターンくらい出しちゃう!
小南:あー、なるほど。「こういうのどう?」って。
佐伯:そう。そしたら、「この曲がいいです」ってなって、「コレでいきましょう!」って。
小谷:うーんなるほど、音楽監督って、そういうお仕事なんですね。じゃあいつも現場にいらして、その場を暖めるお仕事だ。
佐伯:そうです!もう、だいたい現場ではふざけてます

(一同笑)

佐伯:いや嘘です嘘です!ちゃんとやってますよ!(笑)スーツも着てます!

(一同爆笑)

小谷:そうなんですね!(笑)
佐伯:そうです、蝶ネクタイしてますから!

アーティスト名義「The PBJ」とCubase

小谷:佐伯さんは、個人のアーティスト名義「The PBJ」としても活動をされていますが、その活動内容についてお聞かせいただけますか?
佐伯:えっとー……あの、音楽を作ってます!
小谷:まあ、そうなりますよね(笑)
佐伯:はい!元々はバンドだったんですけど、俺のことが嫌になって1人減り、2人減り……気付いたら1人だったっていう。

(一同笑)

小谷:私も事前に聴かせていただきましたが、「ド・EDM」というか。アゲアゲのサウンドで。
佐伯:そうです。アゲまくってます!
小谷:これらの曲はもう、日本のみならず世界中に流通しているんでしょうか。
佐伯:どこまでできているかは分からないですけど、海外のアーティストは沢山呼んでいるんで、そういう広げ方はどんどんしていきたいなって!思っております!
小谷:色々なシンガーの方を、ゲストボーカルで呼ばれていますね。
佐伯:そうですね!
小谷:それでは、そんな「The PBJ」のサウンドを一曲、お願いします!
佐伯:はい、聴いてください、「Sun Goes Down」です。

 

小南:めっちゃカッコイイ!
佐伯:ですよね!そう思いました!

(一同笑)

小谷:佐伯さんはDAWはどういったものを使われているんですか?
佐伯:昔は……というか、今は両方なんですが、Ableton LiveとSteinbergのCubase Pro8.5です。今、ちょうど移行してる時期で、Cubaseに移行したいなと。Cubaseに移行しつつ、「あ、分かんねえや!」ってなったらLiveに戻る感じです。
小谷:なるほど。僕もCubaseユーザーなんですけど、僕は最初に買ったDAWがCubase SX2なんですけど、もうすごい進化していて、Cubaseって便利だなっていつも思っている感じですね。
佐伯:じゃあ、分かんなくなったらすぐ小谷さんに連絡しますね!(笑)Cubaseで分かんないことがあったら、Cubase使ってる友達に片っ端から連絡してますもん、俺(笑)。
小谷:僕も、Cubaseの情報交換で「何、その機能?!」ってなること、よくあるんで(笑)。

目標は2020東京オリンピックの
音楽監督?!

小谷:それではここからは、佐伯さんの最新のお仕事について聞いていきます。この夏に公開される舞台の音楽制作もされているとのことなんですが、それはどんな舞台なのでしょう?
佐伯:はい!8/8に行われる「Infinity」。舞浜のアンフィシアターってところでやる舞台で、簡単に言うと「日本の心意気」みたいなのを表現する舞台ですね。

小南:さっきフライヤーをいただいて見たんですが、太鼓とかも使われる?
佐伯:そうですね!篠笛とか太鼓とか、あと三味線、尺八。
小谷:なるほど。日本の伝統芸能とか、色々なものが集まって、一つの舞台を作るっていうことですね。
佐伯:そうです!
小谷:所謂、役者さんはいらっしゃらない?
佐伯:「infinity」は、役者はいないですね!8/10にも同じく舞浜アンフィシアターで手掛けた舞台があって、それは「Gift」っていうんですけど、そっちは役者さんも出る演目があります。

佐伯:8日の「infinity」に関しては、ホントに演劇とかはなくて、1部が狂言、2部が日本舞踊、3部が太鼓等の和楽器になっています。もうほんとガチなやつです。
小谷:その「infinity」「Gift」といった舞台も、音楽監督として参加されるということで、もう稽古等は始まっているんですか?
佐伯:えーっと……今、頑張って曲作ってる最中です!
小南:じゃあ、曲も和楽器とのコラボで?
佐伯:そうですね!和楽器とコラボレーションしたり、あとは「どういう人が(この曲には)いいか」とか考えたり。例えば、奄美(大島)の民謡の人……奄美の民謡って言われても、皆さんあまりピンと来ないですよね?
小谷・小南:うーん……そうですね。
佐伯:で、俺もピンと来てなかったんですけど、実際聴いて「あぁ!沖縄と、本土のちょうど中間なんだー!」とか、俺自身勉強しながら、「面白いね!入れてみよう!」とか、そういう風に勉強しながらやっていく感じですね。
小谷:なるほど。イギリスでキャリアを始められて、EDMサウンドの得意な佐伯さんが、この和の文化に入られていく、ということで。
佐伯:オリンピック目指してるんで!オリンピックのオープニングやるためにやってます!
小谷:なるほど!

(一同笑)

小谷:8/8が和の舞台とのことですが、8/10の舞台について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
佐伯:こちらは、身体能力を使った、アクロバティックなショーですね。エアリアルっていう、紐を上から吊るしてやるやつとか、
小南:あー!あのクルクルーって回ったりするやつですね!
佐伯:そうそう!あと、新体操の人たちだったり、キッズダンサーが出たりとか、そういう身体的な演目の中に、ちょっとお話が入ってくる舞台です。
小南:へー、面白そう!
小谷:面白いお仕事ですね。今までにも、そういった舞台をいっぱいやられてきてるんですか?
佐伯:いや、舞台はこの2本くらいなんですけど、まあでも、いつもやっているイベントものとそんなに変わらないかなー、っていうカンジですはありますね!
小谷:これらの舞台も、さっき仰っていたように、現場に佐伯さんがいらして、先ほどのRIZINと同じように、音楽を出すタイミングの指示であるとかを、臨機応変に操っていらっしゃるってカンジなんでしょうか?
佐伯:そうですね!
小谷:へー……すごい!音楽監督って、すごいですね!
佐伯:いやいやいや、あと、色々交渉したりもしなきゃいけなかったりもしますけどね。
小谷:交渉ですか?!
佐伯:はい。「オーケストラ、これ生で録りたいんですけど」とかそういう「ここはこいしたい」っていうのを、制作の人たちと、「この予算の中でどうするか」みたいなことを話し合って、段取り決めたりとか、そういうのもやるんです。普通、作曲家って、納品したら終わりじゃないですか。でも音楽監督ってなると、そういうのもちょっとやるんです。
小南:なるほど、色々提案して。
佐伯:そうです!「こういうことやりたい」って。

和楽器とのコラボは大変……。

小谷:僕、島根県出身なんですけど、実は島根県の郷土芸能の「石見神楽」っていうのを東京で広める団体に所属していて、それは和楽器に合わせて、日本の神話に基づいたストーリーを相謡するっていうものなんですけど、そういうジャンルの方と会話をすると、やっぱり使う「ワード」が違うじゃないですか。
佐伯:あーはいはいはい!
小谷:「4拍目から入って」とか言っても絶対分からない。
小南:あーなるほどー!
佐伯:分かんない、分かんないですね!
小谷:佐伯さんにも、きっとそういう苦労があると思うんですけど、どうですか?
佐伯:そう、大変なんですよ。
小南:楽譜とか無かったりする……?
佐伯:そうなんですよ!楽譜ないんで、色々伝えるのが難しいんですよね〜……なのでもう、手話です!

(一同笑)

小谷:「Cセクションから」とか言えないですもんね。
佐伯:言えない!その「Cセクションから」って言葉を(和楽器の言葉に)言い換えたとしても、今度はそっちの(和楽器の言葉)が咄嗟に言えないんです!なのでもう、手話、ジェスチャー!(笑)

[見出し]今回からヤマハのヘッドホンが使われています!

小谷:はい、そんなワケで今日は佐伯さんをお招きして、楽しいお話を沢山して頂いたワケなんですが……。
佐伯:……あれ?!このヘッドホン、めちゃくちゃいい音じゃないですか?!

(一同笑)

佐伯:何だこのヘッドホン!!
小谷:(笑)こちらですねー、今回よりヤマハさんから機材提供頂いた、HPH-MT7です!

佐伯:なるほど!もう買って帰ります!

 

小谷:ということで、今回は音楽プロデューサー佐伯栄一さんに、ゲストとしてお越しいただきました。ありがとうございました!
佐伯:ありがとうございます!
小谷、それでは最後に一曲、紹介頂けますでしょうか!
佐伯:はい! The PBJで、「Blackhole feat. Mike James」