2020年 ショパン国際ピアノコンクール特設ページ

ショパン国際ピアノコンクールを
裏で支える
ヤマハのもう一つの闘い

 ショパン国際ピアノコンクールは、ポーランドの首都ワルシャワで5年ごとに開催され、今年2020年は第18回大会が行われる。その名の通りショパン作品のみで審査される、世界的にも珍しいコンクールだ。チャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールと並び「世界三大コンクール」ともいわれている。

 1985年の第11回ショパン国際ピアノコンクールから公式ピアノに採用されているヤマハは、2015年開催の第17回大会でも公式ピアノに選ばれ、ピアノの調整によってコンテスタントの演奏をサポート。その奮闘ぶりを伝えるトークコンサート「ショパン・コンクール物語~ヤマハの闘い」が2020年2月22日にヤマハ グランドピアノサロン名古屋で行われた。前半のトーク・コーナーには、ヤマハのピアノ技術者の花岡昌範氏と元ポーランド支店長の田所武寛氏が登場。それぞれの立場からコンクールに向けた闘いについて語った。


地道な活動が実を結び、協会公式パートナーに

 田所氏は2013年春に、ヤマハのポーランド支店長としてワルシャワに移った。
「ポーランドには3年間駐在していましたが、特に駐在を始めたころはコンクールの会場であるワルシャワ国立フィルハーモニーホールをはじめ、現地の空気をとらえようと思いコンサートに足を運んだり、さまざまな活動を積極的に推進しました。そのなかでもポーランド・ショパン協会との関係作りには特に注力しました。協会主催のイベントに協力するなど地道に活動することで、ショパン協会に認められ、ピアノメーカーとして初の協会公式パートナーとなることができました。また、ホールのスタッフと良好な関係を築けるよう努力を重ねました。」

 コンクール期間中は、昼夜問わずにコンテスタントの要望に応えるだけでなく、ピアニストでもある審査員たちにも電子ピアノを用意するなどサポートしたという。
「審査員には現役のピアニストも多いですし、審査中である1ヵ月近く、自由に弾けないのは苦痛でしょう。ショパン協会からの提案もあって、審査員のホテルの部屋に1台ずつ用意し、コンクール期間中も自分の練習ができるよう計らいました」

ピアノ事業部 ポーランド支店 元支店長 田所武寛

コンクール期間中は寝る間も惜しんでピアノの調整

 調律を担当した花岡氏も2年前から楽器の準備をスタートさせたという。
「ピアノは、最大限の力を発揮するためには、弾き込みや調整を重ねなければなりません。それには完成から数年の歳月がかかるのです。ショパンコンクールの会場はシューボックス型で1,100席ほど。響きがとても良く、音色のグラデーションや細かいニュアンスが伝わるホールです。2階に設置される審査員席は、それらがとてもよくわかる場所なんです。
 コンクールの1ヵ月前までにはピアノを現地に運び、その環境になじむよう調整を行います。本選が開始されると、季節がら調律師に予告なくホールに暖房が入ることもあって、これには苦労しました。演奏で調律が狂うことはほとんどないのですが、暖房による温度変化や乾燥には弱いのです。また、頻繁にステージを掃除されるのですが、水に浸したモップを使うので湿度が変わってしまい、これも私たちを悩ませました。コンクールは10時スタートで、丸一日かかりますので、寝る時間を削って深夜や早朝に調律をしていました」

 2015年の第17回大会では、ヤマハ、カワイ、ファツィオリ、そしてスタインウェイの4社のピアノが公式ピアノとなった。なかでもスタインウェイの楽器はワルシャワ・フィルハーモニーの備え付けで、コンクールの前から弾き込まれている状態。それでもヤマハのコンサートグランドピアノCFXは一次予選では78名中36名が、ファイナルでも10名中5名が選んでくれた。
惜しくも「優勝ピアノ」とはならなかったが、第2位入賞のシャルル・リシャール=アムラン氏がCFXを使用してくれた。
「CFXを艶やかで豊かな表現力と、多彩な音色と湧き出るような響き、美しいピアニッシシモ、さらに連打のコントロール性が良く弾きやすいタッチになるよう最高の状態に仕上げました。ヤマハを選んでくれた方々は『自分の期待する表現ができた』と異口同音に話してくれました。CFXを信頼して、このピアノで闘いたいと思ってくれることが、一番うれしいです」と花岡氏は語った。

ピアノ事業部 ピアノ調律技術者 花岡昌範

直感的にCFXが良いと感じました

 トークコンサートの後半は、第17回大会に出場した木村友梨香さんが登場し、「舟歌」「幻想曲」などショパン作品5曲を披露。優しい表情を持ちつつ、折り目正しい演奏を聴かせてくれた。コンクールでのピアノ選びについては「ピアノセレクションは15分という短い時間ということもあり、直感でピアノを決めました。CFXを弾いた瞬間に、安心してステージに立てると思いました」と当時について話してくれた。
 5年ごとに開催されるショパン国際コンクール。今年秋に第18回が予定されているが、ヤマハの準備はすでに始まっている。

第17回大会出場 ピアニスト 木村友梨香