SX SERIES 誕生ストーリー

SXシリーズ誕生ストーリー

伝統と革新を融合し新たな表現の可能性を追求したグランドピアノ SXシリーズ。ヤマハのコンサートグランドピアノに次ぐハイエンドモデルとして、プロのピアニストや指導者たちの想いに、その確かな音と演奏性で応えるこのピアノがどのような背景をもって生まれ、何にこだわり、そして演奏者に何を届けるために存在するのか?その全てをSXシリーズの源流であるSシリーズの系譜とともに紹介します。

製品年表 - 1982年 : S-400B | 1989年 : S700E | 1990年 : S400E | 1994年 : S4/S6 | 2000年 : S4A/S6A | 2006年 : S4B/S6B | 2017/2018年 : S3X/S6X

SXへと続く、Sシリーズの系譜

常にその時代時代における最高の技術とノウハウを投入し、ピアニストが想い描く演奏を、期待と想像を超える音とパフォーマンスで叶えてきたピアノ、それがSシリーズです。ここではSXシリーズの源流となるSシリーズの誕生から、代表的なモデルとその開発エピソードを紹介します。

[イメージ画像] 1982年

1982年、Sシリーズの初代「S-400B」が誕生

SXシリーズの原点、それは1982年に発売されたSシリーズの初代「S-400B」にまで遡ります。当時、ヤマハの技術を結集してつくられたフルコンサートピアノ CFがヤマハ グランドピアノの頂点として君臨し、その開発過程で生み出された技術は、その後に発売されたGシリーズやCシリーズなどへと展開されました。また、さらに美しい音を求めるために科学的な分析技術が開発され始めたのも丁度この頃で、新しいピアノが誕生する環境が整いつつありました。

そしてその頃、“ピアニストが家でも心ゆくまで演奏、練習することができるよう、家庭用サイズでもフルコンサートピアノの音と表現力を備えたピアノを届けたい”という想いのもとに、新たなピアノの構想が話し合われていました。「コンサート用のピアノも大事だが、ピアニストのホームピアノをもっと向上させる必要がある」、「CFをホームユース用にもっとコンパクトにすれば、そういったピアノができるのではないか」。こうしたヤマハの開発者と職人の強い想いのもと、昭和54年6月に最高級の小型グランドピアノ「S-400B」の開発がスタートしたのでした。

[イメージ画像] グランドピアノ

特別プロジェクトチームが結成され、当時の最先端技術を結集した「S-400B」

新しいピアノの開発には特別プロジェクトチームが編成されました。開発でまず技術陣が苦心したことはピアノの基本設計(スケールデザイン)でした。たとえCFと同じ材料を使用しても単純に小型化するだけではCF並みの美しい音は得られない。それを補うための改良を施し、全体をバランスよく設計することが必要でした。その結果、フレームはCFの鋳造方法を採用しながらも一部が改良され、響板にはCFと同じルーマニア・スプルースという高価な材料が使用されました。またハンマーも、従来の硬めのものから弾力性を持たせた専用のものが開発されました。そして73台もの試作を経て完成したのが、家庭用サイズでもフルコンサートピアノに引けを取らない程の豊かで深みのある音色と響きを実現した「S-400B」でした。

国内の発売に先立って、公演のために来日していた世界的ピアニストの一人が「S-400B」を試弾して、「すばらしいピアノに出会った。小型ながらコンサートにも立派に使える」と感想をもらしました。その後も、著名な女流ピアニストが自宅のレッスン用に購入するなど、「S-400B」の評価は年を追うごとに高まっていきました。

[イメージ画像] 1994年

フルコンサートピアノ CFⅢの技術が投入された「S6」「S4」

「S-400B」の発売から12年、ヤマハのフルコンサートグランドピアノはCFからCFⅢへとさらなる進化を遂げていました。CFⅢは“歌うピアノ”を開発目標に、約2年もの歳月を掛け開発されました。フレームはCFより10kgも軽量化され、そのぶん支柱の材質を固くすることで強度を補い、響板にはドイツ・スプルース材を採用し貼り方も変更するなど、積極的に新しい設計方法が採用されました。

そうしたCFⅢの開発で生まれた新しい技術を採用しながら、「S-400B」等で高く評価されていた音の重厚感や品の良さを継承すべく企画されたのが、1994年に発売されたSシリーズの「S6」「S4」でした。「S6」は、「C6」という同サイズのグランドピアノが存在しましたが、スケールデザインは全く新しいモデルとなり、その開発には数多くの葛藤と苦労が立ちはだかりました。

[イメージ画像] 職人の手作業

職人技と機械を融合した巧みなピアノづくりで、Sシリーズの魅力をより多くの演奏家へ

「S6」「S4」の開発においては、現在のピアノづくりでは当たり前となっている音響解析(FEM解析)の原型となるコンピューターを使った解析的な手法や、“クラドニ”と呼ばれる振動の状態を可視化する実験的なアプローチが新たに活用されました。

また製造面においても、ピアノの音を大きく左右する重要な工程では熟練の職人の手作業による入念なつくり込みをおこない、本体の組付けなどの工程には専用の機械を使用するなど、匠の技と機械をバランスよく融合したピアノづくりが導入されました。なぜなら、これまでのフルコンサートピアノや「S-400B」「S-400E」などの開発を通して、ピアノづくりの工程でより多く職人の手を入れることで求める品質を確保できることはわかっていましたが、その反面、どうしても生産台数が限られてしまう、という課題が生まれていたからです。その課題を解決するために「S6」「S4」では様々な新しい取り組みが導入され、設計と製造が一体となったピアノづくりが進められました。その結果「S6」「S4」は、Sシリーズならではの魅力をより多くの演奏家に届けることができるモデルとして完成させることができました。

その後も「S6」「S4」をベースに、コンサートグランドピアノ CF3の技術を受け継いだ「S6A」「S4A」が2000年に、CFⅢSの遺伝子を受け継ぎ、さらに音の力強さ、繊細さに磨きを掛けた「S6B」「S4B」が2007年に発売されるなど、その評価を裏付けるように数多くの後継モデルが生まれました。

[イメージ画像] 2018年

Sシリーズの伝統を受け継ぎ、最先端・革新的技術を投入した新シリーズ「S6X」「S3X」が登場

Sシリーズの最終モデル「S6B」「S4B」の発売から約4年が過ぎ、ヤマハのコンサートグランドピアノの最高峰はCFXとなり、ヤマハの創業125周年を迎えた2012年にはグランドピアノ CXシリーズが発売されるなど、Sシリーズでも新しいモデルを期待する声が高まっていました。

そんな中、“伝統と革新の出会い”をコンセプトに全く新しいシリーズとして誕生したのがSXシリーズの「S6X」と「S3X」でした。SXシリーズはそのコンセプト通り、サイズを超えた音の“重厚さ”や“気品”といったSシリーズがこだわり続けてきた伝統の音を大切にしながら、CFXで開発された響板や響棒、支柱構造などといった新しい設計技術が積極的に採用されました。加えて、新品でありながら長年大切に使い込まれたような深みのある豊かな音の響きを生み出すヤマハ独自の木材加工技術「A.R.E.」も、ピアノで初めて導入されました。

こうして、“フルコンサートピアノの表現力を家庭サイズのピアノで実現する”というSシリーズの思想、伝統の音を継承しながら、最先端かつ革新的な技術を融合させることで、さらなる音の高みを実現したピアノ SXシリーズが誕生しました。

[写真] 当時の開発責任者 泉谷 仁

SXシリーズの誕生

Sシリーズの系譜を受け継ぎながら、“伝統と革新の出会い”をコンセプトにさらなる音の深化を追求したSXシリーズとはどんなピアノなのか?これまで語られてこなかったSXシリーズの名前に込められた想いや開発秘話を当時の開発責任者 泉谷 仁のインタビューをもとに紹介します。

[写真] 当時の開発責任者 泉谷 仁

プレミアムグランドピアノ SXシリーズとは

“あなたを咲かせる音”、SXシリーズの広告やカタログにはそんなコピーが使われています。SXシリーズは、家庭用サイズのグランドピアノとしては最上位のモデルで、全く新しいシリーズとなるピアノですが、最も大切にしていることは、ピアニストの方の想いに想像を超えた音と演奏性でしっかり応えるということでした。

そんなSXシリーズの名前に込められた“S”が意味するもの、それは勿論、このピアノの源流となるSシリーズの“S”になります。そして新しく加えられた文字 “X”に込められた意味は、SXシリーズがその設計思想や最新の技術を継承したコンサートグランドピアノ CFXの“X”、 そして総合楽器メーカーであるヤマハにしか生み出すことのできなかった革新的な技術を象徴する“X”、という意味が込められています。

ヤマハがSシリーズでこだわり続けてきた伝統の音に加え、CFXから受け継いだ新技術、革新性がもたらした入力に対する感度の良さや音色変化の多彩さによって、演奏者が目指す音、演奏者の想いを咲かせることを追求したのがSXシリーズというピアノなのです。

[イメージ画像] 設計図

さらなる深化を求めて。Sシリーズから継承した伝統と情熱が息づくピアノ

SXシリーズが、24年もの歳月をかけて進化し続けてきたSシリーズから継承したもの、それは支柱や響板といったピアノのパーツや設計手法だけではなく、「S-400B」の時代からこだわり続け、数多くの演奏家から高く評価されてきた“重厚でありながらも気品のある音”でした。

家庭用サイズながら、まるでコンサートグランドピアノのように音がよく鳴り響くピアノとしての根幹、そして音色に魅力があり、ピアニシモからフォルテシモまで多彩に、表情豊かに表現することができるSシリーズならではの音。そんな音を継承するために、SXシリーズには、卓越した技と感性を持った熟練技術者の手によるハンマーや鍵盤のつくり込みや、整音・整調作業などといったピアノづくりへの深いこだわりをはじめ、新しい技術によってさらにその音を深化させようとするピアノへの飽くなき情熱と探究心が息づいています。

[イメージ写真] バイオリン

伝統を守るために投入されたSXシリーズの革新性

SXシリーズに導入された革新的な技術、その代表的な技術がヤマハ独自の木材改質技術「A.R.E.(Acoustic Resonance Enhancement)」です。この技術は、温度、湿度、気圧を高精度にコントロールする専用の装置でピアノの曲練支柱というパーツに処理を施すことで、まるで長年大切に使い込まれたピアノのような深みのある豊かな音の響きを生み出すことができる技術です。しかしこの技術は単にピアノを進化させるために採用されたのではなく、SXシリーズにおいては、Sシリーズからこだわり続けてきた音を守るために導入された技術なのです。

CFXで開発された技術や設計手法を、そのままSXシリーズに導入しようとすると、レスポンスの良さや入力に対する感度の良さが際立ち、音の“重厚感”という面でSシリーズらしさが損なわれてしまいました。それを解決するために採用されたのが、音に暖かみと深みをもたらす「A.R.E.」技術だったのです。他にも、CFXの開発で得た知見を活かして作られた専用設計のハンマーや曲練支柱、響板設計などを導入することで「S-400B」から大切にしてきた重厚で気品のある音を大切にしながら、SXシリーズならではの豊かで力強い響きと表現力に優れた音色を実現することができたのです。

[写真] 当時の開発責任者 泉谷 仁

届けたいのは、演奏者の新たな表現の可能性

本当にいいピアノに出会った時、自分でも気づかなかった表現力が自然と引き出されることがあります。

ヤマハのピアノは“こんな風に弾いたら、自分の予想以上の音で返してくれる”、“こんな風に弾いたらどうなるんだろう?”と、演奏される方の意欲を触発、インスパイアし、ピアノと一緒に自分の表現を高め、作っていくことができる、そんなピアノを目指しています。

そしてSシリーズで大切にしてきた音や表現力をさらに深化させたSXシリーズでは、それをより強く、鮮明に感じて頂けると思います。私たちが一台一台、丹精を込めてつくるこのピアノを通して、より多くの方々が自分の音楽、演奏をさらに深め、新しい表現の可能性に出会って頂ければこれに勝る歓びはありません。