CH-500 生産完了品
大室 裕昭 (商品開発部打楽器設計課)
1981年入社。これまでにティンパニと、ビブラフォン、グロッケンシュピール、マリンバ等の音板打楽器の開発・設計を担当。現在は打楽器全般における新商品開発のプロジェクトリーダーや設計リーダーを務める。
※所属部署および部署名は取材当時のものです。
この楽器を開発することになったきっかけはなんですか?
大室)
発売されたのは1986年~87年ぐらいのことで、当時まだ吹奏楽ではチャイムという楽器はあまり一般的ではなかったのですが、だんだんチャイムの需要が出てきたという市場の様子を見て、1984年くらいからヤマハでもチャイムを作ろう、ということになりました。私が入社した1981年にはまだヤマハではコンサート向けのグロッケンシュピールもなかったくらいでしたからね。ましてやチャイムなんてまだまだといったところでした。 当時チャイムで世界的に有名なメーカーは2社あったのですが、そのどちらをお手本にしようかというときに、ヤマハはやはりディーガンをお手本にしました。オーケストラチャイムを発明したのはディーガンでしたから。
ディーガンのチャイムは明るい音色とコンパクトなサイズで、でも音量が良く出て、伝統的な楽器として定評がありました。
ヤマハオリジナルとしてこだわった点は?
大室)
ヤマハはディーガンのチャイムを意識していたので、CH-500もディーガンのチャイムと直径や肉厚はほぼ近いですね。しかし、材質はディーガンと違うものを採用しました。ヤマハのチャイムのほうが柔らかい材料を使っています。
20音という音域も、やはりディーガンよりは多くしたいという要望が強くて(ディーガンは18音)20音になりました。グロッケンもディーガンより少しだけ音域が広いんです。しかし、材質は違っても音色はやはり伝統的なディーガンに近づけたいということで材料の選定や加工には非常に苦労しましたね。
新しいデザインでかつ強度を持たせるという点、より吹奏楽で使われるために音の止まり(止音性)を良くするという点から、ダンパーの止音性には徹底的にこだわりましたね。ダンパーは作動自体がなめらかだし、ディーガンよりも強い材料を使っています。また、どこからでも踏み込みやすいように幅を広げて、使い勝手がよくなるように工夫しました。土台もしっかりしているので重量もありますね。