YM-6100

大室 裕昭 (商品開発部打楽器設計課)

大室 裕昭 (商品開発部打楽器設計課)

1981年入社。これまでにティンパニと、ビブラフォン、グロッケンシュピール、マリンバ等の音板打楽器の開発・設計を担当。現在は打楽器全般における新商品開発のプロジェクトリーダーや設計リーダーを務める。

※所属部署および部署名は取材当時のものです。

片桐 歩未 (商品開発部打楽器設計課)

片桐 歩未 (商品開発部打楽器設計課)

2004年入社。これまでにマリンバYM-6100やシロフォンなどの音板打楽器の開発・設計を担当。また音板打楽器における特注品の設計や、コンサートサポートなどのアーティストリレーション業務にも携わる。

※所属部署および部署名は取材当時のものです。

この楽器が開発されることになったきっかけを教えてください。

大室)

このモデルが出る前に、YM-6000というモデルを出していました。YM-6000は音には非常に定評がありましたが、重量やセッティングが必ずしも扱いやすい楽器ではありませんでした。そうした点を改善してよりいろいろなところで使っていただきたかったのです。

また外観デザインも、YM-6000より現代的なものにしたかったのでYM-6100を新たに開発することに決めました。

YM-5100Aとの大きな違いは何ですか?

大室)

YM-5100Aに比べて音板のサイズが大きいので、よりパワフルに音を響かせることができます。

また、共鳴パイプの形状が異なります。YM-5100Aは低音部がひょうたん型になっている「ヘルムホルツ式」を採用していますが、YM-6100は低音部まで全て円形になっており、より良い響きを追求しました。

「レゾナンス・レギュレーター」とはなんですか?

大室)

低音側の共鳴パイプは、底を動かすことができるようになっていまして、共鳴管の長さを変えることによって、温度による音程の変化を調整することができます。

開発途中の苦労話などあれば教えてください。

片桐)

とにかく安倍先生はYM-6000に特別な愛着をお持ちだったので、サウンド・外観全てにおいて、これまでのYM-6000のイメージを壊すことなく、かつ新しいものづくりをしなければならない、という苦労がありました。デザインについてはデザイン研究所(ヤマハ製品のデザインに関する調査やアドバイスをする部署)にご協力いただきましたが、YM-6000がどういう楽器であるかを説明するうえで、関係者に実際にコンサートに足を運んでいただき、オケの中で安倍先生がYM-6000でコンチェルトを演奏するとどんな風になるのか、どういう存在感の楽器なのかを見ていただきました。それまで両者のイメージがなかなか一致しなかったのが、そのコンサートを機に、一気にお互いのイメージが合致し、デザインがまとまっていったと思います。マリンバは非常に大きな楽器ですので、試作品を至近距離で見るだけでは、ホールの舞台上で照明を当ててみたときと印象がガラリと変わって見えることが多くあります。そのため、一つ新しい試作をしては、社外の音楽ホールへ楽器を運んで、本番さながらの照明を当てて遠めの外観も確認するという作業を行いました。大きな楽器を作るのは、女性の私には肉体的にかなり大変な作業でした。

そんな中で私の強いこだわりとして、全ての方にとって扱いやすい楽器にしたいという思いがありました。YM-6000のサウンドや存在感は他のマリンバを圧倒するものとして広く認知されてきましたが、一方で重くて扱いづらく、組み立てにくいという難点がありました。どのような方にも扱いやすい楽器にしなければいけないという使命感を貫いたつもりです。結果として、共鳴パイプと長枠の軽量化に成功し、YM-6000に比べると10kgも軽い楽器になりました。お陰様で各方面より「扱いやすい楽器になった。でも音は従来のYM-6000と変わらない」と嬉しいお声をいただいています。