バンドキーボードの効果的な使い方
キーボード担当になった!キーボードを買った!けれど、バンドの中でどういう使い方をしたらいいか分からない……といった経験ありませんか?
悩める軽音部・バンドのキーボーディストに向けて、バンドでのキーボードの使い方を解説します。
キーボードと聞くと何を思い浮かべますか?
ピアノ?オルガン?シンセサイザー?・・・どれも正解と言えば正解なのですが、大きな意味としては鍵盤がついている楽器ということになります。
実は生楽器の中で一番音域(低音から高音まで)が広いのがピアノで、88鍵あるグランドピアノに勝る音域を持ったものは生楽器では存在しません(無理に作れば出来るかもしれませんが・・・)。その次がハープで、それ以外の楽器は低域が得意だったり、高域だけが得意だったりと少し狭い音域になります。電子楽器の代表とも言えるシンセサイザーでは、自由に音作りが出来るので、理論的にピアノより広い音域を出すことが可能なものもあるのですが、音階として使おうと思った場合にはピアノの音域で充分になります。
このようにピアノは様々な音域を担当できるのに加え、和音を奏でる事ができるので、アンサンブルの中のユーティリティープレーヤーなのです。
さらにピアノの素晴らしいところは、音域が変わっても演奏方法が変わらない点にあります。例えば管楽器では高い音を出すのに強い息が必要だったり、音域によって息の強さを上手くコントロールしないと音程が定まらなかったりします。弦楽器の場合も高い音程では指の位置(手の位置)が若干きつい体勢になってしまって弾きにくいなんてこともありますが、ピアニストは涼しい顔をして鍵盤を押すだけで音を出すことができます。これはキーボーディストだけが得られる特権といっても過言ではないでしょう。
さて、この涼しい顔して音が出せるピアノですが、同じ奏法で他の音色を出すことができるのが電子楽器のキーボードということになります。前衛的(創造的)な音を求めるならシンセサイザーということになりますが、CKシリーズ、MODX+シリーズどちらでも様々な楽器の音を奏でることが可能です。例えば鼓笛隊や吹奏楽団でつかわれているグロッケンシュピールという楽器ですが、本来なら両手にバチ(マレット)を持って演奏する楽器なのでその都度持ち替えなくてはいけません。しかし、キーボードを使えば指のまま演奏が可能です。
○○○オールスターズの曲なんかには随所にこのグロッケンシュピール音色が出てきますが、普段はピアノ音色を弾いているキーボーディストが一瞬音色を切り換えるだけでグロッケンシュピールの音が出せれば、バンドサウンドのクオリティーは格段に上がります。このように楽器ごとの演奏スタイル(奏法)を行わなくてもその楽器の音を出せるという大きな魅力が隠れているのです。
ちなみにポピュラーミュージックではリズム隊とよばれる楽器として、ドラム、ベース、ギター、ピアノの4パートを基本にしているものが多く、この4つで構成されているリズム隊を「フォーリズム」などと呼ぶ場合があります。その中でもピアノとギターはリズムを刻むこともコードを奏でることも出来る楽器で、楽曲の基礎となる重要な楽器です。リズムと言うとドラムが担当では?と思うかもしれませんが、レゲエやスカの2拍目、4拍目に演奏されるギターのカッティングなどは、ジャンルを決定づける非常に重要な要素といえます。他にも6/8拍子の楽曲でピアノのアルペジオを8分音符で奏でれば、ドラムが4分音符しか奏でていなくてもロッカバラードと呼ばれるジャンルを演奏することができます。このようにジャンル感を決定づけるリズムの組み合わせには「フォーリズム」の役割が重要なのです。
もちろん和音が演奏できるという点でもピアノやギターの役割は大きいのですが、ハードロックなどではエレキギターが1度と5度だけを弾くパワーコードと呼ばれる奏法になっていることも多く、その場合にはコードのメジャー/マイナーを決める3度の音を担当するのがキーボードだけになります。楽曲のコード感を出すという意味でも、キーボードの役割は非常に大切です。
前章では鍵盤楽器の奏法的なアドバンテージ(優位性)について少し触れましたが、これを活かすとバンド内でとても活躍することができます。ここではその裏技について解説しましょう。
CKシリーズやMODX+シリーズでは、音色を切り換えるだけでピアノやオルガン、ストリング、ブラスなど様々な音が出せるのですが、1曲を通して全部同じ楽器の音とは限らないですよね?
例えばイントロではブラスの音色でメロディーを弾き、歌い出しからピアノの演奏・・・さらにサビに入ったらストリングスを追加して盛り上げたい・・・などなど音色の切り替わりは曲ごとにことなります。
もちろんセクションごとに音色切り替えボタンで音を変えても良いのですが、ピアノの音色で演奏していて、Aメロ2小節目の2拍目、3拍目、4拍目だけにド、ミ、ラ~などとグロッケンシュピールの音を入れたい時に、鍵盤全部の音色を切り換えてしまうと、2小節目でピアノの演奏を止めて音色を切り換え、2小節目の4拍目のラの音を弾き終えた瞬間にピアノの音色に戻す・・・というアクロバットな操作をしなければいけません。そこで、キーボードスプリットという機能を使用し、キーボードの右半分をグロッケンシュピールの音に、左半分をピアノの音色にしておけば、左手はピアノの音で和音を弾いた状態で右手を使ってグロッケンシュピールの演奏ができます。
このように2種類(場合によっては2種類以上)の音色を同時に鍵盤上に並べることが出来るのがキーボードスプリットという機能で、これを使用すれば音色切り換えスイッチ地獄から解放されます。
もちろん、ライブセット上にいくつも組み合わせを作っておけば、曲毎に様々な音色を使い分けることが出来るのです。ギタリストはエフェクターの切り替えで音色を変化させていますが、こちらはギター同時2本持ち!!!くらいのすご技を披露できるので、ぜひチャレンジしてみてください。
さらに、サビを盛り上げるために単なるピアノ演奏に包み込むようなシンセパットの音を足したい・・・という場合にはレイヤーという機能がオススメです。こちらは二つの音色を同時演奏できるようにする機能で、例えばドの音の鍵盤を押すとピアノのドの音とシンセストリングスのドの音の両方が出せます。本来二人のキーボーディストが演奏しないと奏でられない音を、一人で演奏できてしまうのでバンドサウンドに厚みを持たせることができます。
このレイヤー機能ですが、よく使われる組み合わせとしてはアコースティックピアノ+ストリングス、アコースティックピアノ+エレクトリックピアノ、アコースティックピアノ+エレクトリックピアノ+シンセパッドなどがあります。ピアノ音色にグロッケンシュピールをレイヤーするのも面白いでしょう。また、重ねるときに片方の音色のオクターブを変更して重ねるとちょっと変わった音色になるので試してみてください。
音色同士の組み合わせ+オクターブや音量バランスの組み合わせなど、同じレイヤーでもかなりバリエーションがありますので、色々と試して自分なりのレイヤー音色を作成してみましょう。
キーボーディストのちょっと変わった活躍の場についても解説しましょう。様々な音を出すことができるキーボードを使えば、バンドメンバーが欠席したときにピンチヒッターを務めることも可能です。
例えばベース。
ベーシストが欠席して困っているときは、前述のスプリット機能を使用して、左手の音色をベース音色にし、ルート音だけでも弾いてあげれば他のメンバーの演奏がしやすくなります。もちろんしっかりフレーズをコピーしてベースパートを弾いても良いのですが・・・あんまり上手だとベーシストクビにする問題が勃発しますので、ほどほどにしましょう(笑)。もちろん最初からキーボードでベースを演奏するというバンドにしても良いのです。CKシリーズやMODX+シリーズに搭載されているベースの音色は本格的なベース音色になっていますので、その音を前提にバンドを組むというのもアリですね。実際ジャンルによってはシンセベースと呼ばれる音色で演奏されている楽曲もあるので、本物に近いサウンドを・・・ということであればむしろキーボードでベース演奏をした方が良いケースもあります。お仲間を増やすためにもベーシストにキーボード購入をお勧めしてみても良いかもしれません。
ドラムなんかもキーボードから鳴らしてみると面白いでしょう。CKシリーズやMODX+シリーズには本物のドラムの音をサンプリングという技術で録音した音が入っているので、これを使えばドラム演奏も出来てしまいます。鍵盤を使った指ドラムのプロフェッショナルもいるぐらいですので、チャレンジしてみるのも良いかもしれません。
完璧なドラム演奏で無くても、ハイハットの音やライドシンバルの音でリズムを奏でるだけでも良いです。無伴奏のアカペラ的な楽曲を数人で演奏するときに、みんなのタイミングを合わせるクリック的なものが欲しいけど、音程のある楽器で演奏すると煩わしい・・・といったときには、ハイハット音色で2拍目、4拍目だけを刻んであげると良いでしょう。とてもタイミングが取りやすくなりますので、これもぜひ試してみてください。
音作りというと難しい印象があるのですが、ここでは音作りの基本となる知識と用語に関して解説します。実際の音作りは機種毎に操作が異なるので、また別の機会に解説したいと思います。
さて、音の三要素というのを聞いたことがあるでしょうか?
音の大きさ、音の高さ、音色という3つの要素から成り立っているのですが、音の大きさとは音量に関する事、音の高さは音程、音色とはピアノの音とかギターの音とかを指しています。音作りというと最後の音色のところをさすのかな?と思われる方が多いと思います。もちろんそれも正解なのですが、じつは最初の音量(音の大きさ)の部分も密接に関係しています。
ピアノの音と、オルガンの音を想像してみて下さい。
ピアノは鍵盤を弾いて押しっぱなしにしても、次第に音は小さくなっていき、最後には無くなってしまいます。しかしオルガン(電子オルガンを例に取っています)の場合は、鍵盤を押し続けている間ずっと音が鳴り続け、離すと止まるというピアノとは異なった鳴り方をします。
実はこの音量の変化が楽器らしさを表現する一つの要素になっているのです。仮にピアノの音だったとしても、オルガンのように鍵盤を押している間しか音が出ない様にしてしまうと、なんだか昔のゲーム機から聞こえてくる音のようになってしまいます。逆にオルガンの音でもピアノのように鍵盤を押した後にだんだんと減衰していき、鍵盤を離してもほんの少し余韻が残るような音に変えると、ピアノのような演奏に聞こえるのです。
こういう着眼点で様々な楽器を見てみると、オルガンを始め、フルートやリコーダーなどの管楽器、バイオリンなどの擦弦楽器は持続音(じぞくおん)系のサウンドで、ピアノ、アコースティックギター、ビブラフォン、マリンバなどは減衰(げんすい)系のサウンドという具合に分類できます。
さらに、発音を止めてから音が消えるまでの時間も楽器ごとにことなり、オルガンやリコーダーではすぐに止まりますが、ビブラフォンでは少し長めの余韻が得られるようになっています。これらの楽器をキーボードで演奏する場合、鍵盤を離す=発音を止めることになるので、鍵盤を離す=リリースした時点からどのくらいの時間で音が消えるかを表現する言葉としてリリースタイム(または単にリリース)という言葉を使っています。
このリリースが長いか短いかでも音の印象は変わるので、音作りの第一歩としてリリースタイムを調整する・・・というところから始めてみましょう。
CKシリーズでは、このリリースタイムを簡単に調整できるようにするため、本体右上の「EG」と書いてあるON/OFFスイッチのすぐ上にある「RELEASE」というツマミで調整できるようになっています。右に回すと鍵盤を離してから音が消えるまでの時間が長くなり、左に回すと短くなります。
音色によって限界もあるのですが、ある程度長めに設定すると幻想的で豊かな音色になり、短くするとシャープで歯切れの良い音色に変わります。
そしてもう一つリリースの対局にある要素がアタックというパラメーターです。アタックとは音の立ち上がりを意味しており、ピアノやマリンバなどはアタックが早く、バイオリンやストリングスアンサンブルの音色はアタックが遅めです。たとえピアノの音であったとしてもアタックを遅くしてしまうとまるでバイオリンのようなイメージの音になってしまうのです。
このパラメーターもCKシリーズの先程解説した「RELEASE」ツマミのすぐ上にある「ATTACK」というツマミで変更でき、右に回すとアタックが遅くストリングスの様な響きに・・・左に回すとアタックが早くパキパキとしたサウンドに変わります。
難しいことは抜きにして、この二つのパラメーターをちょっと変更してあげるだけで、自分がイメージしている音の鳴り方に近づけることが出来きます。まずはこのアタックとリリースの二つだけを覚えて音作りにチャレンジしてみてください。
キーボードプレーヤーのもう一つの特権・・・それはエフェクターを持っていると言うことです。エフェクターとはギタリストが足もとに並べているカラフルな装置と一緒で音を自在に変化させる機械です。実はキーボーディストもギタリストみたいな足もとエフェクターを接続して使用する人もいるのですが、現代のキーボードには本体にエフェクター機能が充分に内蔵されているので、それを使いこなすだけで十分ともいえます。ギタリストはギター以外にエフェクターを買いそろえる必要がありますが、その分がキーボード本体についていると思ったらメチャクチャお得ですよね!
さて、このエフェクターなんですが、大きく分けると主に音量を変化させて効果を得るダイナミクス系、周波数を変化させるフィルター系、時間的な変化を加えるディレイ系の3つに分かれます。
エフェクターの名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれませんが、ディストーション、コンプレッサーはダイナミクス系、イコライザーはフィルター系、ディレイやリバーブ、コーラスなどはディレイ系というカテゴリーになります。
今回はそのなかでもキーボーディストに不可欠なディレイ系エフェクターのリバーブについて取り上げてみたいと思います。
リバーブとは残響のことで、お風呂で鼻歌を歌うと良い感じで響いたり、体育館で叫ぶと反響音がすごかったりするあの効果です。実空間での原理ですが、部屋の中で「パン」と手を叩くとその音は直接耳に届きますが、それ以外に部屋の壁に反射して耳に届く音もわずかながら聞こえます。音は秒速約340m/sで空気の中を進むので、目の前で叩いた手から発する音と、壁に当たって耳に届く音では時間差が生じます。また、壁は正面だけでは無く、床、天井、後ろの壁など様々な部分があり、それぞれ反射した音が届くので、時間差の音の集合体を聞くことになります。もちろん部屋の大きさが変われば時間差も大きくなります。
これをディレイという音を遅らせる装置を用い、多数の反射音をシミュレートしたのがエフェクターのリバーブということになります。
リバーブをかけると広いホールで演奏している様な広がり感および残響音を加えることができるため、自分の演奏が上手くなったような?サウンドに仕上げることができます。
しかし、体育館や講堂で演奏する場合にはPAから出てくるキーボードの音に講堂(体育館)の残響が加わるため、キーボード側であまりリバーブをかけてしまうとなんとなくぼやけた感じの音になってしまいます。いわゆるリバーブかけ過ぎ状態ということです。もし残響の多い場所で演奏を行う場合には、キーボード本体のリバーブを抑えめにセッティングしたり、オフにしたりして対応しましょう。たったこれだけの工夫であなたの演奏がとても聞きやすくなります。
ヘッドフォンで聴くときはリバーブがないと下手くそになった気分になるかもしれませんが、ライブの時のリバーブかけ過ぎには絶対に注意しましょう。
ピアノやオルガンは元々その楽器の音しか出ませんので、音色を切り換えるという発想がほとんどないのですが(エレクトーンのようなオルガンは音色を切り換えますが・・・)、CKシリーズやMODX+シリーズなどは様々な音色が搭載されているほか、自分でもある程度エディットして使うことができます。しかし、変更するパラメーターをライブの度に呼びだしてツマミを調節していたのでは、毎回ボーカリストに長めのMCをお願いする事になってしまうので、変更したパラメーターを保存する機能を使用してあらかじめ記憶しておくようにしましょう。
もちろん、編集しないで使用するという人もいると思うのですが、好みの音色がとても離れた番号のところにあると、ツマミをぐりぐり回したり、プラスマイナスのボタンを何度も押してその音色にたどり着かなくてはなりませんよね?
そんな苦労を一度でも経験した人は、音色の並べ替えという意味でも音色の保存機能を活用しましょう。
実はCKシリーズにもMODX+シリーズにもライブで使用するフェイバリッド音色を並べて保存しておくライブセットという機能があります。あまり取扱説明書を見ない人にとっては、いつもライブセットの中から使える音色が出てくるものを探して使っているので、保存などしたことがない・・・なんて人も居るのかもしれないですね。
MODX+ではタッチパネルで確認しながら選択できるのであまり苦にはならないですが、CKシリーズではLIVE SETボタンで選択するので、「6番って何の音だったかなぁ・・・」などとつい不安になってしまい・・・次の曲は6番で、その次の曲は2番で、その次の曲は4番で・・・と、一貫性のない操作になってしまいます。
これが、1曲目は1、2曲目は2、3曲目は3・・・・と整理されているだけでも全然違いますよね?
保存機能や入れ替え(スワップ)機能というのはそのためにあるのです。ぜひこの機能を使いこなしてスマートなライブ演奏に挑みましょう。
同じ音色しか使わない人でも、鍵盤のオクターブ位置を変更した状態で保存したりスプリットポイントを変更して保存したりするというのも使いこなしのアイデアです。
演奏する曲毎に使う鍵盤エリアもことなりますし、「この辺で指動かすと映える!!」みたいなことを想像しながら設定を変更するのも良いと思います。
試験勉強と同じで日々の準備がものをいうのです。
バンド演奏時だけで無く、練習の前日には音色を並べ替えたりバックアップをUSBメモリーに保存したりと、入念な準備を行いましょう!
文化祭や大会などでお世話になるPA(ピーエー)についても勉強しましょう。PAはPublic Address(パブリックアドレス)の頭文字を取ったもので、演奏者の音をお客さんに公平に伝えるのが目的の音響システムです。一般的にステージの左右にスピーカーを置いて鳴らすものですが、各楽器の音やマイクの音をまとめて音量バランスをとるミキサーとミキサーでまとめられた音を大きな音の信号に変換するパワーアンプ、そしてお客さんに音を伝えるスピーカーという3つの要素が基本に成り立っています。
キーボーディストは、キーボードのライン出力(MAIN OUT やLINE OUT、OUTPUTなどと書かれている端子)からミキサーのインプットにケーブルを接続してPA側に音を送ります。この時シールドを2本使ってステレオで送るのが一般的です。PAの本質からすると、客席のどの位置に座っていても同じ音が聞こえるのが理想ですので、モノラルで送るのが良いとする音響屋さんも居るのですが、キーボードに付属しているエフェクターがステレオ仕様であるため、片チャンネルしか接続しないと正常な音にならない場合もあります。キーボードのアウトプット端子にL /MONOといった具合にL側の端子にしか接続しなかったときにはMONO出力に変換される機種の場合には問題ありませんが、そうなっていないキーボードの場合は必ずステレオで接続しましょう。
また、キーボードとミキサーの距離がさほどない場合はシールドで直接ミキサーに接続しても構いませんが、ミキサーが客席側にあって、距離が離れている場合は、ダイレクトボックスという機器を使ってシールドからマイクケーブル(キャノン端子がついているボーカルマイクなどを接続するケーブル)に変換してからミキサーまで送るようにしましょう。一般的なシールドで接続する際は7m~10m程度が限界です。それ以上の距離は一度ダイレクトボックスでキャノン端子に変換して、マイクケーブルで接続して下さい。ダイレクトボックスでマイクケーブル用に変換した信号は、バランス信号と言ってノイズに強い信号になっています。これに対して普通のシールドの信号はアンバランス信号と言い、照明などの電源ノイズを拾いやすいので注意が必要です。
ミキサーに接続したらキーボードのボリュームを上げて音を出しながら徐々にミキサーのフェーダーを上げていき、PAスピーカーから音が出ることを確認します。ミキサーにはフェーダーの他にGAINやTRIMといったツマミが用意されていて、そのツマミでも音量が調節できますが、ここを上げすぎてしまうとフェーダーを絞っても歪んだ音になってしまうので、大きな音を出したときに歪んだ音になっていないかを確認しながらGAINのツマミを調整します。YamahaのMGシリーズミキサーならGAINの時計でいう10時ぐらいの位置に黒(または白)く塗りつぶされた目盛りがありますので、その位置ぐらいに合わせておくと良いでしょう。チャンネルにPADというボタンがある場合はONにして使います。また、キーボード側のボリュームツマミまたはフェーダーは8分目ぐらいに設定しておくと、ライブが始まってからどうしても音量を上げたいときなどに便利です。
これでPAから音が出ていれば問題ないのですが、実はキーボーディストが注意しなければいけない点がもう一つあります。ギタリストやベーシストには、ギターアンプやベースアンプというものがあって、PAに関係なくステージ上で音が聞こえます。もちろんドラムも生音が大きいので問題ないのですが、キーボーディストはPAから聞こえてくる音しか自分の音を聞く手段がありません。もしPAスピーカーが全部お客さんを向いていると自分の音が聞こえずに演奏が出来なくなってしまいます。プロのライブではモニタースピーカーという自分の音を聞くためだけのスピーカーを用意してもらって自分の音を聞くのですが、そういったシステムがない環境では、お客さん用のスピーカーを少し内向きに設置してモニターするか、キーボードアンプを別途用意して自分の音を聞くためだけのシステムを作ることになります。ボーカリスト用にはモニタースピーカーを用意するのですが、キーボーディストには用意されていない(忘れられている)ケースも多いので、ライブを企画するときは必ず確認しましょう。
先程のPAのところでキーボードのマスターボリュームを8分目ぐらいにして、演奏中に音量を変更できるようにしておくと便利という話をしましたが、これはあくまでバンドアンサンブル上のバランスを調節する目的です。
これに対して、演奏に抑揚をつけるための音量可変を行いたい場合には、フットコントローラーというものを使用して行います。別名エクスプレッションペダルなどとも呼ばれているのですが、足で踏み込むと音量が大きくなり、踏み戻すと音量が小さくなります。YamahaではFC7という型番のフットコントローラーがこれにあたり、CK61ではこれを背面パネルのFOOT PEDAL 2の端子に接続します。ピアノ音色の演奏ではあまり使いませんが、オルガンやストリングスなど持続音の音色を演奏する際に活用するととても効果的です。
いつものバンド演奏でストリングス音色を使ったコード演奏の時にも、ただ単に鍵盤をおさえて弾くだけで無く、フットコントローラーでだんだん音量を上げていき、コードチェンジした瞬間にすっと音量を小さくしてまた徐々に上げていくといったことを繰り返すと、コードチェンジ時に鍵盤を押さえるのが間に合わなくて音が途切れるような箇所をスムーズに繋ぐことができます。このように音量の変化だけでもかなり演奏クオリティーが変わりますので試してみてください。
他にもFOOT PEDAL 1の端子にFC5やFC3Aといったフットスイッチを接続すれば、ピアノのダンパーペダルのような役割をこれらのスイッチに割り当てることができます。ピアノ音色の演奏時は生ピアノと同様の使い方くらいしか活用法がないのですが、オルガンやストリングスにダンパーペダルを用いると、一度弾いたコードを、鍵盤から手を離しても鳴りっぱなしにさせる事ができますので、両手を使った振り付け的なパフォーマンスや、2台目、3台目のキーボードを演奏するといった特殊な演奏も可能になります。
但し、これらのフットスイッチやフットコントローラーを使用する際は、椅子に座って演奏した方がやりやすいので、椅子の用意、キーボードスタンドの高さ調節など、事前にチェックをしておくことも重要です。
鍵盤を弾くだけで無く、この曲のここでペダルを使おう・・とか、ボリューム変更で盛り上げよう・・・など、多角的にキーボード演奏を楽しむことを想像すると、キーボード演奏がもっと楽しくなりますので、ぜひ試してみてください。










