デジタル教材WEB実践事例 菊川市立菊川東中学校
ヤマハ デジタル教材WEB実践事例
菊川市立菊川東中学校
校長 山崎 公男
概要
- 目あて
- 「自ら気づき→行動する」の一点突破による学校経営とGIGAスクール構想
- デジタル教材
の種類 -
ヤマハデジタル音楽教材
ボーカロイド教育版
- 中学校
- ボーカロイド教育版
- Windowsタブレット
内容
1 重点目標「自ら気づき→行動する」の一点突破による学校経営とGIGAスクール構想
静岡県菊川市立菊川東中学校では、学校の重点目標である「自ら気づき→行動する」の実現へ向けた手段の1つとして、タブレットや学習用ソフトといったICTを活用されています。
学校経営において大切にしていることや、実現するために行っている取り組みについて、加えて、上記実現のための学習用ソフトに対するお考えを、菊川東中学校校長・山崎公男先生にお伺いました。
山崎先生:
本校は生徒の主体性向上を目指し、重点目標「自ら気づき→行動する」の一点突破による学校経営を行っています。この目標が達成できれば、上位目標に迫ることができると考え、あえて他の目標には触れていません。この重点目標を達成するために4つの柱を設定しているのですが、特に大切にしている柱が「自己肯定感向上」です。(右図青の歯車)自分は大切な存在だと思えると、生徒は前向きになることができます。つまり、自己肯定感が高くなることで、重点目標どおりの行動ができるようになり、ひいては学力向上や不登校減少にも繋がると考えています。
菊川東中学校グランドデザイン
2 称揚のボイスシャワーをシステム化した「躍動賞」
山崎先生:
自己肯定感を高める取り組みの中で、特に生徒と教職員がよく取り組んでいると感じているのが「躍動賞」という取り組みです。重点目標「自ら気づき→行動する」を継続して実践している生徒に「躍動賞」という学校賞を贈っています。(校訓の躍動から命名)躍動賞の表彰は、全校生徒の前で行い、賞状を入れる筒も賞状と一緒に渡します。さらに、これまでの躍動賞の賞状を玄関に掲示して、誰が躍動賞を受賞したかがすぐにわかるようにしています。ここまですると、躍動賞を取りたい!と、生徒が前向きに頑張るようになりますし、既に躍動賞を受賞した生徒は、その後も躍動賞に恥じない行動を取るようになるのです。
この躍動賞は、週に1度、学年主任の推薦と校長の承認によって決定されます。各教員は生徒の頑張りを必ず週に一度報告をする仕組みになっています。そのため、教員は生徒のことをとにかく認め励ます言動が多くなります。本校では称揚のボイスシャワーとよんでいます。褒め続けなければ、週に1度の躍動賞推薦の報告ははできないですからね。
このような仕組みをつくったことで、教員も生徒も日常生活でよさを認め合うようになったので、自己肯定感が向上し、日々の行動が前向きになったと思います。また、合わせて生徒が「学校が楽しい」と感じてくれるよう、様々なしかけもしています。その一つが「プール開き」です。校長としては、コロナ渦で制限がある今、プール開きくらいはお祭りのように楽しい時間にしたいと考えていました。それに共感した教職員がどんどん準備をしていき「夏だ、プールだ!ハッピータイム開催だ!!」と題し、盛大なプール開きが実施されたのです。生徒も、各々、浮き輪や水鉄砲を持ち寄り、プール開きを楽しんでいました。教員も生徒も、一緒になって楽しく計画し、予想以上のものになることは本校の自慢です。
玄関に飾られている「躍動賞」の賞状
プール開きのために教員が作成したポスター
3 「地域全体」へ広まる取り組み
山崎先生:
学校グランドデザインにある「目指す学校」は、在校生が、小学生が、保護者が、地域が、職員が『行きたい(行かせたい)学校NO.1』です。また、菊東学舎という中学校区を「一つの学び舎」として、小中連携や地域との協働で子どもを育てる「学びの庭構想」にも取り組んでいます。本校は幹事校のため、中心となって推進しています。菊東学舎の学校に通うと「子どもの学力も向上し、幸せにもなるから、菊川東中に行きたいね。」と地域の皆さんに行っていただける学校(学舎)になることが、今の夢です。
その一手立てとして、地域や保護者への情報発信を大切にしています。学校ホームページに「菊川東中ニュース」というコーナーをつくり、生徒の頑張りや学校の様子を365日毎日配信しています。菊川東中ニュースの配信は、情報発信の目的はもとより、「生徒の称揚」「教職員の頑張りのアピール」でもあるため、管理職が行っています。毎日の更新は大変そうに見えますが、写真さえ撮影できれば、記事の更新は簡単にできる仕組みを教育委員会が用意してくれたので、苦ではありません。以前は、本校への地域や保護者からの苦情が多くありました。しかし、生徒や教職員の頑張りを知っていただく機会が増えるにしたがい、「東中ならきっと意図をもった取り組みなのだろう」と思ってもらえるようになり、苦情は減りました。
また、2ヶ月に一度、アンケートを実施しているのですが、「自分にはよいところがある」と回答する生徒が増えています。令和2年度の4月は62%であったのに対し、令和4年度7月には84.8%の生徒が、自分にはよいところがあると回答しています。
生徒へのアンケート結果
4 「安心感」でソフトは使われる
山崎先生:
学習用ソフトも、自己肯定感を高める手段の1つだと考えています。
また、ソフトの活用については教員に「安心感」があると、活用が積極的になります。教員の安心感というのは、使う場面と操作方法がはっきりしていることと、ソフトメーカーが教員目線でカスタマイズしてくれることによって生まれてくるととも思います。例えば、株式会社ヤマハミュージックジャパンのボーカロイド教育版についてのやりとりがいい例だと思います。音楽を担当する教員は、ICTの活用に苦手意識を持っていました。ヤマハ様が、どのような場面で、どう操作すれば授業でソフトを使えるか提案してくれたので、担当の教員は「これなら自分でもICTを活用できる!」と笑顔になりました。教員が自信を持てると、生徒へのソフトを活用した指導が活発になります。トップダウンで使うことを強制しても、教職員は動きません。教職員からの要望が起点となり、サポートしてくれる体制があることで、教員は「安心感」を持って、ソフトを使えるようになると思います。
校長 山崎 公男
5 学校へ安心感と期待感を届ける取り組みがGIGAスクール
続いて、菊川市内へICTソフトを提供するにあたり、各メーカーを取りまとめ全体の方向性を示すコンサルティングの役割を担っているのが株式会社高文です。株式会社高文の事業開発本部・本部長である高橋芳徳氏(以下:高橋)に、GIGAスクールにおける学校への提案について、お話を伺いました。
インタビューに答えてくださった高橋氏
6 環境が整った今こそ問われるどのような教育を届けるか
高橋:
私が本部長を務める事業開発本部は、「ソリューション営業部」「技術部」「商品開発部」の3部門から成り、商品を開発し販売していくことはもちろん、導入後の技術的支援も含め、お客様に寄り添った提案が可能です。お客様の抱えている課題に対して解決策を示すことがソリューション営業であり、学校現場が抱える課題へも提案をしております。
GIGAスクール構想では、インフラ面を中心としてタブレット端末や通信環境の整備が行われていたと感じています。そんな今だからこそ、どんな授業を行うのか、GIGAスクールで整った環境を使ってどのような教育を届けることができるのか、本来の学校現場へ原点回帰することが、必要なのではないでしょうか。環境は整い始めたので、ここからが本当に大切な時期になると考えています。
7 広い範囲の“コト”の提案が学校の安心感へつながる
高橋:
学校現場へも“モノ”だけでなく“コト”を提供する必要があると考えています。学校現場へより多くの解決策を提示することが大切だと思っていますし、提供できる解決策をより多くできるようなメーカーやサービスと共に、学校現場への提案活動を行っています。
「どんなシーンでも活用できる~」というようなコピーをGIGAスクールにおいてはよく目にしますが、どこまでの範囲を指しているのかは、サービスによって異なりますし、蓋を明けてみたら「どんなシーンでも活用できない」という状況に陥っているサービスもあると思います。
我々は、学校全体を支援させていただくために、各メーカーと協力することをしています。ここでいう学校全体とは子どもたちの学習はもちろんのこと、先生方の校務支援や導入後のサポート、学校行事、特別支援まで含めた広い範囲を意味しています。学校現場の声に耳を傾け、学校運営全体を理解した上での提案だからこそ、学校や教育委員会様から安心してGIGAスクールの整備を任せていただけているのだと思います。
8 安心感の上に成り立つソフトへの期待感
高橋:
弊社の企業理念の中に「お客様に安心感、信頼感、期待感そして楽しさを提供できる、新しい専門商社を目指す」というフレーズがあります。GIGAスクールにおける学校現場も、同じ状況にあると考えることができます。タブレット端末やソフトに対して安心感があるからこそ、先生方にタブレットやソフトを使ってみようと思っていただけるでしょう。だからこそ、我々の提案で安心感をもってもらうことで、先生方にソフトを活用することに対して安心感を持っていただき、学校全体へ楽しさや期待感を届ける必要があるのです。
株式会社高文の理念(下記QRのHPより引用)
https://takabun.co.jp/company/message/
9 音楽科にけるICT活用「はじめの一歩」をボーカロイド教育版で
GIGAスクール構想によって整備されたタブレットを活用して、様々な教科で学習が進められていますが、音楽科においても他教科同様にICTを活用した学習活動が求められています。また全国各地で開催されている音楽研修会も、歌唱や器楽の内容に代わり、最近ではICTに関する研修内容も少なくはありません。研修を受講された先生方からお話をお伺いすると、パソコンやタブレットに苦手意識を持っていて、「何をどうやっていいのかわからない」といった意見を耳にします。教材を提示・配布する、鑑賞の学習で音楽を聴く、学習活動を端末のカメラや録音機能を使って記録したりと、様々な活用場面があげられますが、今回は創作(音楽づくり)の学習活動でボーカロイド教育版(以下ボカロと表記)を活用したICT活用の「はじめの一歩」として実践していきたいと思います。
10 音楽科の学びを達成するための道具
「はじめの一歩」がボカロを活用した創作学習と聞いて、ハードルが高すぎるのでは・・・ と感じるかもしれませんが、音楽をつくるためには、たくさんの課題があります。楽譜を読み書きできる知識やつくった作品を表現する技能などが求められることから創作(音楽づくり)学習に苦手意識を持つ児童生徒が多くいます。とはいえ作曲家のように音楽を作曲してみたいという興味関心は高いといえます。ボカロはこれらの音楽の基礎基本を支援し、創作の活動を支えることで学習活動をより効果的に発展させることが可能なアプリケーションといえます。作った作品がどのように演奏されるのかを再生機能をつかって何度も納得するまで確認することができます。創作の過程において、音楽的な見方・考え方を働かせ創作活動における学習効果を高めることができます。ボカロは音楽を作るために必要な音楽の要素を理解して活用するための道具として先生や児童生徒の活動を支えてくれます。
11 音楽科での学びを様々な場面で活用する
今回の実践を通して大切にしたいことは、学習の成果である楽曲を評価の対象だけにしないということです。例えば作曲した作品を様々な場面で活用できるようにすることも考えられます。ボカロで制作した楽曲は音声データ(.wav)や楽譜データ(.xml)での出力が可能ですので、楽譜に音声データを貼り付け作品発表や他教科での学習発表の際、スライドにBGMとして活用したり、校内放送に活用することもできるでしょう。自分を表現する手段の一つとして、他教科や学校生活の中で音楽の学びを活かした実践を行います。
12 先生や生徒の「やってみたい」を大切に
今回の実践では、先生の「やってみたい」を具現化し、学習活動をサポートすることを考えています。実際に授業展開しようと思っても、「操作が教えられなかったらどうしよう」「急にアプリが動かなくなったらどうしよう」と不安は尽きません。先生の考える学習内容や目標に合わせて活用の提案を行い、学習指導案検討や授業展開のシミュレーションまた、実際に授業の中で生徒へ操作の説明をしたりと、充実したICT活用の授業が安心して実践できるようサポートします。またこれらの実践を、これから「やってみよう」「やってみたいな」と考えている先生方のお役に立てるよう、今後継続して授業実践の様子や生徒の感想、作品を活用した場面など、発信していきます。