楽譜について学ぶ
第4日 音階と調
1. 長音階
1) 長音階の仕組み
ハ(ド)の音を始まりの音として長音階を作ると、譜例のようになります。前半のハからヘまでと、後半のトからハまでは、全く同じ仕組みの音程でできています。これがハ長調です。そして、長調のことをドイツでdur(ドゥア)、英語でmajor(メイジャー)といいます。
2) 音階各音の名称
音階は順に第I音、第II音、第III音・・・と呼びます。また、それらには役割を担った名前があります。ここではその中でも、重要な4つの名称を示します。
3) 異名同音と長音階
今、ドからシまでの音を、半音(短2度)関係で音階を作りました。これを半音階とよびます。これらの12個の音が、それぞれ長音階の主音になり、12通りの長音階ができます。 a)とb)を比較してみると、a)は幹音以外はシャープで、b)は幹音以外はフラットでできています。全く同じ音高を、異なった記号で表わしています。
このa)やb)の関係を異名同音(いめいどうおん)といいます。
2. 次に、長音階の音程関係に、下から順に変更します。
これで全全半全全全半のニ長調、すなわち、ニ音を主音とする長音階が出来ました。
ハ(ド)の音を始まりの音として長音階を作ると、譜例のようになります。前半のハからヘまでと、後半のトからハまでは、全く同じ仕組みの音程でできています。これがハ長調です。そして、長調のことをドイツでdur(ドゥア)、英語でmajor(メイジャー)といいます。
2) 音階各音の名称
音階は順に第I音、第II音、第III音・・・と呼びます。また、それらには役割を担った名前があります。ここではその中でも、重要な4つの名称を示します。
第 I 音 | 主音……音階の出発点となる最も重要な音。 |
---|---|
第V音 | 属音……主音から上方に完全5度関係にある音で、主音を支配する音。 |
第IV音 | 下属音……属音が上方に完全5度に対し、主音から下方に完全5度関係にある音。主音と属音を補助する音。 |
第VII音 | 導音……この音は主音と短2度関係にあり、主音に進もうとする性質の音。 |
3) 異名同音と長音階
今、ドからシまでの音を、半音(短2度)関係で音階を作りました。これを半音階とよびます。これらの12個の音が、それぞれ長音階の主音になり、12通りの長音階ができます。 a)とb)を比較してみると、a)は幹音以外はシャープで、b)は幹音以外はフラットでできています。全く同じ音高を、異なった記号で表わしています。
このa)やb)の関係を異名同音(いめいどうおん)といいます。
【例題1】
ニ音(レ)を主音とする長音階を作りなさい。<解説>
1. 始めにニ音からオクターヴ上のニ音まで音階を作ります。2. 次に、長音階の音程関係に、下から順に変更します。
これで全全半全全全半のニ長調、すなわち、ニ音を主音とする長音階が出来ました。
コラム:長音階の仕組み
長音階の仕組みをしっかり覚えれば12個のどの音からでも長音階を作れます。下から順に全全半全全全半と覚えてしまえば、シャープやフラットがついても簡単に作れますね。
では長音階の仕組みがわかったところで、問題を解いてみましょう。
では長音階の仕組みがわかったところで、問題を解いてみましょう。
2. 短音階
1) 短音階の仕組み
短音階は長音階の3度下で成り立つ音階です。長音階のように4つの音どうしが同じ音程関係で成り立ってはいません。全音、半音の順は、全半全全半全全です。
2) 短音階の種類
a)自然(的)短音階
譜例2-1)で示した短音階です。これは短音階の原形で第VII音と第I音が全音のため導音の役割を果たしていません。
b) 和声(的)短音階
和声(的)短音階は、自然(的)短音階の第VII音が半音高くなり、導音の機能を持ちます。しかし、これにより、第VI音と第VII音が増2度という独特の音程をかかえこんでしまいます。
c) 旋律(的)短音階
この短音階では、第VI音と第VII音の2つの音が半音高くなります。この結果、和声(的)短音階の増2度はなくなります。また、上行形と下行形で変化するのが特徴です。
上行形の成り立ちは、第III音を除いて長音階と同じです。下行形は自然(的)短音階と同じです。
※ここから自然(的)短音階等の的を省略します。
(2)短音階は、長音階で出てきた嬰ヘ(ファのシャープ)がそのまま付きます。これで自然短音階の、全半全全半全全ができています。
(3)この自然短音階の第VII音を半音上げることによって、和声短音階が出来ます。
(4)旋律短音階の上行形は、自然短音階の第VI音と第VII音の2つの音を半音上げることによってできます。下行形は自然短音階に戻しましょう。
<答え> 次の回にあります。
短音階は長音階の3度下で成り立つ音階です。長音階のように4つの音どうしが同じ音程関係で成り立ってはいません。全音、半音の順は、全半全全半全全です。
2) 短音階の種類
a)自然(的)短音階
譜例2-1)で示した短音階です。これは短音階の原形で第VII音と第I音が全音のため導音の役割を果たしていません。
b) 和声(的)短音階
和声(的)短音階は、自然(的)短音階の第VII音が半音高くなり、導音の機能を持ちます。しかし、これにより、第VI音と第VII音が増2度という独特の音程をかかえこんでしまいます。
c) 旋律(的)短音階
この短音階では、第VI音と第VII音の2つの音が半音高くなります。この結果、和声(的)短音階の増2度はなくなります。また、上行形と下行形で変化するのが特徴です。
上行形の成り立ちは、第III音を除いて長音階と同じです。下行形は自然(的)短音階と同じです。
【例題2】
ホ音(ミ)を主音とする自然短音階、和声短音階、旋律短音階を作りなさい。※ここから自然(的)短音階等の的を省略します。
<解説>
(1)まず始めにホ音(ミ)の3度上の長音階を考えてみましょう。長音階と短音階の主音の関係は短3度になります。(2)短音階は、長音階で出てきた嬰ヘ(ファのシャープ)がそのまま付きます。これで自然短音階の、全半全全半全全ができています。
(3)この自然短音階の第VII音を半音上げることによって、和声短音階が出来ます。
(4)旋律短音階の上行形は、自然短音階の第VI音と第VII音の2つの音を半音上げることによってできます。下行形は自然短音階に戻しましょう。
【問題6】
次の各音を主音とする自然短音階、和声短音階、旋律短音階を調号を用いて作りなさい。<答え> 次の回にあります。
3. 調
1) 調名
調には長調と短調があり、長音階の調を長調、短音階の調を短調といいます。
例えばハ(ド)の音を主音とする長調のことをハ長調、ト(ソ)の音を主音とする短調のことをト短調と呼びます。
2) 嬰種長音階の成り立ち
ハ長調の音階を2つに分けると、4個の全く同じ音程関係を持つ、と2つのグループ(テトラコードという)に分けることが出来ます。
上の譜例ではの音列を始めに持ってきて、新たに続く4個の音列を並べとしました。このとは同じ音程関係にはなっていません。
そこでをと同じ音程関係にするために、第VII音ヘ(ファ)の音にシャープを付けます。このファのシャープによって、ト(ソ)を主音とする長調が出来ました。これがト長調です。
第VII音にシャープが付き、新しい長調がどんどん出来上がってきました。これで全ての嬰種長音階が出そろいました。このシャープを音部記号の次に記したものを調号といいます。
3) 嬰種長音階の調号
これらは、シャープ系の長調とその調の主音を示しています。新しい調の主音が5度ずつ上がっていますね。そしてシャープも、順に5度上の音に付いていくのが分かりますね。
4) 変種長音階の成り立ち
これは、ハ長調の下行音階です。それをとの2つのグループに分けると、それぞれ半全全という同じ音程関係のグループが全音で結ばれていることが分かります。
今度はのグループを音階の始めに持って来て、新たに4個の音を続けてみました。です。すると、とを結んでいる第V音と第IV音の音程、第IV音と第III音の音程が、ハ長調の音程と逆になっていますね。
そこで第V音と第IV音を全音にするため、第IV音にフラットを付けました。これでとが同じ音程関係で結ばれましたね。これをヘ長調といいます。
順にフラットが1個ずつ第IV音に付き、新しいフラット系の長音階が出来てきました。これがフラット系の全ての長音階です。シャープと同様、調号を音部記号の次に記します。
5) 変種長音階の調号
これらは、フラット系の長調とその調の主音を示しています。新しい主音は5度ずつ下がり、フラットも5度下の音に順に付いていきます。
6) 短音階と調号
短音階は長音階の3度下で成り立っています。ですから嬰種長音階、変種長音階のどちらも、同じ調のもとで、3度下に音階を作ることによって、自然短音階ができるのです。 ここでは和声短音階を例に取り、調号を用いて、全ての短音階を示しましょう。
和声短音階なので、第VII音が半音高くなります。シャープ、ダブル・シャープ、ナチュラルに気をつけて下さい。
7) 異名同調
これで長調と短調合わせて30種の調が出て来ました。ドからシまで、12の音があるのですから、本来なら、12種の長調と12種の短調を合わせて24種のはずです。実は30種の調の中に6種だぶって数えている調があるのです。
これらの調を異名同調(いめいどうちょう)といいます。
調には長調と短調があり、長音階の調を長調、短音階の調を短調といいます。
例えばハ(ド)の音を主音とする長調のことをハ長調、ト(ソ)の音を主音とする短調のことをト短調と呼びます。
2) 嬰種長音階の成り立ち
ハ長調の音階を2つに分けると、4個の全く同じ音程関係を持つ、と2つのグループ(テトラコードという)に分けることが出来ます。
上の譜例ではの音列を始めに持ってきて、新たに続く4個の音列を並べとしました。このとは同じ音程関係にはなっていません。
そこでをと同じ音程関係にするために、第VII音ヘ(ファ)の音にシャープを付けます。このファのシャープによって、ト(ソ)を主音とする長調が出来ました。これがト長調です。
第VII音にシャープが付き、新しい長調がどんどん出来上がってきました。これで全ての嬰種長音階が出そろいました。このシャープを音部記号の次に記したものを調号といいます。
3) 嬰種長音階の調号
これらは、シャープ系の長調とその調の主音を示しています。新しい調の主音が5度ずつ上がっていますね。そしてシャープも、順に5度上の音に付いていくのが分かりますね。
4) 変種長音階の成り立ち
これは、ハ長調の下行音階です。それをとの2つのグループに分けると、それぞれ半全全という同じ音程関係のグループが全音で結ばれていることが分かります。
今度はのグループを音階の始めに持って来て、新たに4個の音を続けてみました。です。すると、とを結んでいる第V音と第IV音の音程、第IV音と第III音の音程が、ハ長調の音程と逆になっていますね。
そこで第V音と第IV音を全音にするため、第IV音にフラットを付けました。これでとが同じ音程関係で結ばれましたね。これをヘ長調といいます。
順にフラットが1個ずつ第IV音に付き、新しいフラット系の長音階が出来てきました。これがフラット系の全ての長音階です。シャープと同様、調号を音部記号の次に記します。
5) 変種長音階の調号
これらは、フラット系の長調とその調の主音を示しています。新しい主音は5度ずつ下がり、フラットも5度下の音に順に付いていきます。
6) 短音階と調号
短音階は長音階の3度下で成り立っています。ですから嬰種長音階、変種長音階のどちらも、同じ調のもとで、3度下に音階を作ることによって、自然短音階ができるのです。 ここでは和声短音階を例に取り、調号を用いて、全ての短音階を示しましょう。
和声短音階なので、第VII音が半音高くなります。シャープ、ダブル・シャープ、ナチュラルに気をつけて下さい。
7) 異名同調
これで長調と短調合わせて30種の調が出て来ました。ドからシまで、12の音があるのですから、本来なら、12種の長調と12種の短調を合わせて24種のはずです。実は30種の調の中に6種だぶって数えている調があるのです。
長調 dur | ロ長調と変ハ長調 嬰ヘ長調と変ト長調 嬰ハ長調と変ニ長調 |
短調 moll | 嬰ト短調と変イ短調 嬰ニ短調と変ホ短調 嬰イ短調と変ロ短調 |
これらの調を異名同調(いめいどうちょう)といいます。
コラム:調の歴史について
18世紀までは、調号(シャープやフラット)が沢山つく曲はさほど多くありませんでした。しかしながら19世紀以降、ショパンやリスト、ドビュッシー、ラマニノフなどの作曲家が、沢山の調号を用いて作曲するようになりました。未知の分野に思いを馳せるロマン派や新しい響きを求めた印象派の作曲家によって、さまざまな調の曲が開拓されていったのです。
前回(第3回)の【問題】の答え
【問題2】
長2度 長3度 短7度 完全4度完全1度 完全5度 長6度 減5度
完全8度 長6度 増4度 長7度
【問題3】
短2度 短6度 減8度 増4度減5度 長3度 減3度 増6度
減7度 増1度 増4度 減7度
【問題4】
完全4度 短7度 減3度 増6度長2度 重増5度 増1度 重減7度