ピアニスト:浜野 与志男  - 浜野与志男 ピアノ・リサイタル

2025年8月11日 東京文化会館小ホールにて開催される浜野与志男さん。
『浜野与志男 ピアノ・リサイタル』に先駆けてインタビューいたしました。

Profile

Q:8/11に新進演奏家育成プロジェクトのリサイタルにありますが、浜野さんにとって東京文化会館の会場はどのような存在でしょうか。

小学生の頃からコンサートを聴きに来たことがあったほか、高校と大学の7年間は東京文化会館の建物を横目に歩き、上野公園を斜めに横切り通学していました。

ホールの天井は月面を思わせる色と質感だし、小ホールのホワイエへ続くスロープはクルマが行き違えるほどの幅があって立体駐車場のようだし、建物自体になんだか幼心をくすぐるものがありました。

音楽高校への進学を決めるまでは建築家になる夢もあったのですが、このような素晴らしい建物を訪れた経験もそのきっかけになっていたのではないかと思います。

東京文化会館小ホールでは長年にわたって素晴らしいキャリアを積まれているベテランのアーティストのリサイタルも多く、また日本演奏連盟のリサイタル・シリーズには尊敬する先輩方や友人たちもこれまで出演しており、大きな憧れでした。今回が私にとって東京文化会館小ホールでの初めてソロ・リサイタルになり、身が引き締まる思いです。

Q:今回演奏される作曲家や曲目について、聴きどころがありましたら教えてください。

恩師の教えに導かれて私自身が魅力を感じているスクリャービンの作品、またまさに同じくスクリャービンの音楽に憧憬をもちスクリャービンの音楽を志したオーストラリアの作曲家ロイ・アグニューのソナタを続けて演奏いたします。スクリャービンのスタイルが、遠く離れたオーストラリアの作曲家の作品にどのように受け継がれたか、注目いただけましたら幸いです。

また、しばしば対照的な音楽と見られるプロコフィエフとドビュッシーの作品をプログラム後半で取り上げます。響きの〈質感〉に着目して共通点を探ります。

プログラムの幕開けはベートーヴェンの「32の変奏曲」となりますが、これは37歳の頃に書かれた作品。生き急ぐような、勢いのある表現が求められ、ベートーヴェンの苦悩や葛藤が感じられます。この年齢ならではの表現ができるよう、力を尽くします。

Q:当日はヤマハコンサートピアノCFXで演奏されますが、どんなピアノでしょうか。

音に深みと〈品格〉があり、弦楽器との相性が良いため室内楽にも向いている楽器だと今年3月の演奏会で気づきました。低い音域が豊かで、和音を強く弾いたときに指先から伝わる振動は響きの拡がりを予感させてくれます。

弾いているうちに、遠くへ送り出した音を自分で追って、虫取り竿を持った子どものように駆け出したくなる…そのような気持ちにさせてくれる楽器です。

Q:公演へ来場される皆さんへメッセージをぜひお願いします。

18世紀から19世紀にかけて作曲された古典派・ロマン派の作品は私たちピアニストにとって中核的なレパートリーですが、今では20世紀の音楽も、作曲されてから一年、また一年と時間が経ち〈新しい音楽〉ではなくなりました。20世紀という(いくつもの)時代と向き合うにあたって、音楽をはじめ芸術の果たしうる役割はとても大きいと考えます。

8月11日のリサイタルでは20世紀の音楽がプログラムの中心となっています。クラシック音楽の地理的な広がりを実感させるアグニューの作品、また大戦の時代を目の当たりにしたプロコフィエフの作品を演奏いたします。ぜひ、お聴きいただけましたら幸いです!

2025年8月11日